【九州豪雨】西鉄バスが浸水しても止まらなかった理由

    被害の大きかった福岡県朝倉市。なぜバスは、浸水しながらも進んで行ったのか。

    記録的な豪雨で大きな被害が出ている福岡・大分両県。土砂災害や河川の氾濫が相次ぎ、集落や避難場所の孤立も続いている。その被害の全容は、発災から3日を迎えた7月7日になってもわかっていない。

    バス車内に浸水、叫び声も…

    そんななか、大雨で冠水した道路を突き進むバスの様子がツイッター上などに複数アップされ、話題を呼んでいる。

    いずれも被害の大きかった福岡県朝倉市内を走行する「西鉄バス」の車内などを、7月5日午後5時半ごろ〜午後7時前に撮影されたものとみられる。

    たとえば、この動画からは、前方と後部のドアの隙間から大量の水が入り込み、女性の乗客が叫び声をあげている。こうした危険な状況の中でも、バスはストップすることなく進んでいる様子がわかる。

    Twitterには「景色がもはや船だ」「この状況でも突き進むのが凄い」などの感想が寄せられていた。

    なぜバスは止まらなかったのか

    しかしなぜ、バスは停車しなかったのか。そして、何事もなく走ることができたのか。

    BuzzFeed Newsの取材に応じた西日本鉄道株式会社広報室の担当者は、今回の措置がイレギュラー対応であったとしたうえで、こう説明する。

    「バスが動けなくなってしまう可能性があり、浸水していないところまでいち早く向かうのが、安全確保のためには最善と判断したうえでの措置。お客様の安全を第一に考えた結果でした」

    「また、バスのエンジンなどは車体後部の高いところについているほか、排気量も大きい。そのため、こうした状況で止まる可能性は一般車よりも低いんです」

    事前に判断するケースも

    今回の朝倉市でのケースは、いずれも現場で運転手が判断した結果だったという。

    ただ、朝倉市では5日、1時間雨量が129.5ミリ、24時間雨量も516ミリと過去最高を記録。24時間雨量に至っては、平年の7月の月間雨量を超えた。

    結果として、福岡県には7月5日午後8時前から6日午後2時すぎまで、大雨の特別警報が発令されるほどの大雨となった。

    事前に運行を止めるという判断はなかったのか。

    「道路が冠水しているところなど、総合的に判断して危険性がある区間についてはあらかじめ運行を見合わせます。道路の状況は、運転手から報告を受ける場合もありますが、朝でしたら運行管理者が実際に見て回ることもあります」

    今回の動画のケースはいずれも、急な冠水があったために起きた事態だったという。

    福岡県内ではいまも、道路の冠水や寸断が各地で相次いでいる。西鉄バスでも高速・一般バスともに一部で運転を見合わせている。現時点で道路の復旧が未定のため、運行の再開時期が判断できない区間もあるという。


    BuzzFeed Newsでは、豪雨関連の記事【孤立集落を救うため。全国に1台だけの「レッドサラマンダー」九州豪雨で初出動、被災地に到着】も掲載しています。