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「ウクライナの爆発事故で子猫を救出した犬」の写真が拡散→根拠不明。ロシアの侵略めぐり「軍需工場の火災」と広がったが…

ロシアによるウクライナ侵略のタイミングで拡散した画像。ドネツクの「軍需工場の爆発」「爆撃中」「親ロシア派による放火」などによる火災から子猫を救った犬であるとする情報も2015年ごろから出回っているが、根拠ははっきりしていない。

「ウクライナ東部の軍需工場で起きた爆発事故に巻き込まれた住宅火災で、子猫を救った犬」とする画像がTwitter上で拡散している。

しかし、これは根拠不明の情報だ。この画像は2014年からネット上に存在するが、ソースははっきりしていない。

拡散しているツイートの情報源とみられるネットニュースでは「2015年の火災の様子」とされ、ほかにも複数のパターンが存在している。いずれも年代や場所などに矛盾が生じており、注意が必要だ。

画像が拡散したのは、以下のようなツイート。フォロワー51万人以上のアカウント「最多情報局」が5月17日に発信したものだ。

「ウクライナ東部の軍事企業で起きた爆発事故によって発生した火災が間近に迫った住民宅。すぐに避難しなければならない状況で 、家族は飼い犬に逃げるよう促したが、まだ家の中にいる子猫を救うため、炎の中に飛び込んでいった飼い犬。なんとか子猫を救出することが出来た様子が撮影される…」

投稿のタイミングからロシアのウクライナ侵略に関連するものとして受け取っている人もおり、ツイートは拡散。6万7000以上のいいねを集めている。

しかし、この画像は以前から存在しており、そもそもウクライナのものかもはっきりしていない。

BuzzFeed Newsが調査した範囲で確認できた最も古い投稿は2014年9月4日。アメリカの画像共有サイト「Imgur」に投稿されたものだ。

「彼らは敵だって誰が言ったの?一匹の犬がこの小さな赤ちゃんを住宅火災から救った」とキャプションが記されているが、そのほかの詳細は一切わからない。

なお、この画像は掲示板「reditt」にも転載されているが、いずれもウクライナに言及する書き込みはひとつもなかった。

さまざまな物語が…

2015年になると、画像は当時紛争が激化していたウクライナ東部の「軍需工場の爆発」「爆撃中」「親ロシア派による放火」などによる火災から子猫を救った犬である、とする情報も出回るようになった。

一方で、ただの「住宅火災」であるとするものや、「イタリア・シチリア島」の出来事とするもの、「逃げ出した犬が子猫と一緒に家に帰ってきた」「クリスマスの2日間に消えた犬がプレゼントを持ち帰ってきた」というバージョンも広がっていた。どれも、明確なソースを示しているものはない。

日本では、「カラパイア」というまとめサイトが2021年3月、「ウクライナ東部・ドネツクの防衛企業が反政府勢力に攻撃を受け起きた爆発事故による火災」に関する画像として紹介。

火災は2015年とされ、住宅が巻き込まれ、死傷者が多数出たとし、「悲惨な事故の中、唯一の救いは1匹の子猫が救われた」などと紹介されていた。今回のツイートも、この情報をソースにしているとみられる。

なお、「カラパイア」の記事では海外のニュースサイトをソースにしているが、このサイトでは火災の詳細について触れてはいない。さらに、この海外サイトで紹介されている火災の写真は、2017年にウクライナ北東部・ハルキウで起きた弾薬倉庫の爆発事故のものだった。

双方の記事ではそもそもの事故の発生状況や場所、画像の年代などにおいて多数の矛盾が生じている。いずれにせよ、根拠がはっきりしない情報であることから、拡散には注意が必要だ。


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