トルコ・シリアで起きた大地震をめぐり、「地震が発生する24時間前にトルコから大使を引き揚げた」とする10カ国のリストがSNS上で出回っている。
これらの国が「人工地震」を起こしたという陰謀論の裏付けとして広がっているが、誤った情報だ。
そのような公式発表はなく、「地震前に引き揚げた」と名を上げられた複数国の大使が現地で救援・支援活動に当たっている様子が、報道やSNSから明らかになっている。
拡散しているのは、以下のような内容の2月13日のツイートだ。2500以上リツイートされ、7500以上のいいねを集めており、38以上のインプレッションを獲得している。
地震が発生する24時間前にトルコから主要な大使を引き揚げた国のリスト。
1. アメリカ 2. カナダ 3. イギリス 4. ドイツ 5. ベルギー 6. イタリア 7. オランダ 8. フランス 9. デンマーク 10. オーストラリア
我々は何も出来ない体で、どう生きるべきか。
この情報のソースとしてリプライ欄で示されていたのは、セルビアの大学教授とみられる人物の2月10日のツイートだ。
この人物は、現地語で同じリストとともに「これらの国が地震を引き起こした」(Google翻訳による)などと投稿。6万以上のインプレッションを獲得している。
同様の投稿はほかの国でも広がっている。カナダのユーザーも2月13日に「ここに疑わしいことは何もない」とする文言とともに、国名のリストを投稿。50万以上のインプレッションを獲得している。
現地からSNS発信の大使も…
前述の通り、これは誤った情報だ。
前提として、各国代表である大使を帰国させる召還は外交問題に発展する行為だ。いずれの国の大使館はそうした情報は発信していないし、そういった報道もない。
SNS上でも、少なくともアメリカ、イギリス、ベルギー、フランスの大使が、地震後にそれぞれトルコ国内で支援活動に従事する様子を公表していることが確認できる。
また、カナダ、デンマークの大使は自らのSNSで大使館の様子などの写真をアップしていた。さらに、アメリカ大使については、地震当日に米CNNの取材に首都・アンカラの大使館からスカイプで応じていることも確認できた。
なお、トルコと欧米諸国の関係は、地震の発生前に緊張が高まっていた。スウェーデンとフィンランドのNATO加盟をめぐる議論に加え、スウェーデンなどのトルコ大使館前で極右活動家によるコーラン焼却事件が起きていたからだ。
ロイター通信などによると、一部の国が安全上の理由から一時、領事館機能を停止。一方のトルコ側はアメリカ、イギリス、ドイツ、ベルギー、イタリア、オランダ、フランス、スイス、スウェーデンの大使を召還し、抗議の意思を示していたという。
なお、この事実は、今回検証対象となった誤情報の「ソース」に用いられているケースも散見される。そもそも大使を召還させたのはトルコ側だが、断片的な情報が地震と重なり、誤情報に発展した可能性もある。
「人工地震」専門家は否定
また、今回の情報は、これらの国が「人工地震」を起こしたとする文脈で拡散していることにも留意が必要だ。
NHKや日本ファクトチェックセンターの検証でも、専門家は地震波の形や、今回の地震の規模を根拠に、こうした見方を否定している。
災害時には、誤情報や陰謀論が拡散しやすい。なかには「善意のデマ」もあり、拡散には注意が必要だ。
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