水着のインナーに男児の「あそこ」が挟まり… メッシュ生地に要注意、病院搬送のケースも【2022年上半期回顧】

    国民生活センターも注意を呼びかけている「陰茎部の皮膚が挟まり、海水パンツが脱げなくなってしまった」などの事故。激しい痛みを伴い、病院での治療が必要なことも。なぜこうした事故が起きるのか。そして、もしもの時の対処法は?【2022年上半期回顧】

    2022年上半期にBuzzFeed Japan Medicalで反響の大きかった記事をご紹介しています。(初出:6月14日)


    男児用の水着のインナー部分に使われている「メッシュ生地」に、陰茎部の皮膚が挟まって、けがをするおそれがあるーー。

    水着を使うシーズンがやってくるのを前に、医師らによる注意喚起がSNSで広がりを見せています。20年以上前から繰り返されているというこの事故。国民生活センターも5月末にリーフレットを出したばかりです。

    いったい、防ぐためにどのような点に気をつければ良いのでしょうか?そしてもし、事故が起きたときは……?

    「水着のインナー素材、メッシュではないですか?メッシュの穴に大事なところの皮膚が挟まる事故が起きています。お子さんの水着、着用前に今一度ご確認ください」

    水着シーズンが本格化するのを前に、こう注意喚起のツイートをしたのは、自らも育児中の医師だという相川晴さん。

    投稿は広がり、保護者の呼びかけを通じてメーカー側も反応。ファッション通販「ニッセン」の公式Twitterは6月14日に以下のように投稿しました。

    「お声を受け、直ちに商品仕様をすべて確認してまいりました。ニッセンで販売中の男児用スクール水着の裏地(あて布)には、メッシュを使用しておりません。ご安心ください」

    そもそもメッシュ生地で、どのような事故が起きているのでしょうか。国民生活センターが昨年発表した資料によると、2010〜21年5月までに、12件の事故が起きているといいます。具体的には、以下のような事例です。


    • 水着を着用してアスレチックで遊んだ。数時間後、水着が脱げず、よく見ると陰茎部の皮膚が水着に挟まっていた。挟まった部分が水疱のようになり取れないため受診した。(5歳男児)
    • 海水パンツを脱がそうとしたら痛みを訴え、陰茎部の皮膚の先が挟まって陰茎から出血していた。(3歳男児)

    このほかにも「陰茎部の皮膚が挟まり、海水パンツが脱げなくなってしまった」(6歳男児)「脱がそうとした際、メッシュ生地に挟まりけがをした」(3歳男児)といった事例もありました。

    なぜメッシュに「あそこ」が?


    どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。

    富山大学附属病院小児科の種市尋宙氏が国民生活センターに寄せたコメントによると、メッシュ生地の穴から陰茎部の皮膚がはみ出して圧迫され、膨らんでしまうことが原因(上図)。

    その結果、激しい痛みを伴うとともに、メッシュを外せなくなってしまうのだといいます。種市氏はそのうえで、こうも述べています。

    「水着の裏地のメッシュに陰茎部の皮膚が挟まる事故は20年以上も前、1998年頃から症例報告があります。中には、鎮静させてから処置した事例や成人に起きた事例もあります」

    もしものときはどうする?


    では、「もしものとき」はどうすればいいのか。種市氏は以下のように「無理にはずそうとせず、まわりを安全な範囲で切り取り受診を」と呼びかけています。

    「挟まってしまった場合は、無理にはずそうとしたり、患部付近のメッシュを刃物などで切り離そうとしないでください。子どもが痛がって動き、誤って皮膚などを傷つけてしまうおそれがあります」

    「濡れている水着は重さもあり、振動などによって痛みが生じてしまうので、患部のまわりのメッシュを安全な範囲で切り取り、挟まっているところを残したまま、小児科、救急科、泌尿器科などの医療機関を受診しましょう」

    なお、「腫脹(しゅちょう)程度の創傷であれば、後遺障害はないと思います」ともしています。

    穴の大きさ、大丈夫?

    水着インナーのメッシュ生地をめぐっては、過去にも消費者庁や日本小児科学会も注意喚起を出し、業界団体も「メッシュ形状素材を用いない」とする自主基準を設け、一部の販売店なども啓発に力を入れています。

    しかし、現在もメッシュが使われているものや、ガイドラインに準拠しない海外製品があることから、2020年にも事故が起きるなど、発生が続いています。

    国民生活センターでは、メッシュ生地を使った水着を子どもに着用させないようにするようにするか、「少なくとも⽳が空いていることがすぐに分かるメッシュ⽣地のものは避けましょう」(上写真)としています。

    同様の事故は今後も繰り返されるおそれがあることから、同センターでは今年5月末にリーフレットを出すなど、継続して注意を呼びかけているといいます。