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「太陽光パネル火災、消防士は感電死を避けるため燃え尽きるまで消火できない」は誤り。東京都の設置義務化めぐり拡散

太陽光発電パネルをめぐっては、感電などを理由に「水では消火できない」という誤情報がこれまでもたびたび、拡散している。総務省消防庁は対策として絶縁性の高い手袋の活用や、水を通じた感電を防ぐため放水時は距離やノズルの調整をするーーなどを挙げた通知を出しており、消火活動は通常通り実施されているという。

太陽光発電システムのパネルをめぐる火災が起きた際、「消防士は感電死を避ける為、燃え尽きるまで消火活動はできないらしい」とする言説が拡散している。

しかし、これは誤った情報だ。実際には感電などへの対策をとった上で通常通りの消火が実施されており、総務省消防庁としても、消火活動を妨げるリスクになるとは捉えていないという。

BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

太陽光パネルをめぐっては、感電などを理由に、「水では消火できない」という誤情報がこれまでもたびたび、拡散している。

今回拡散したのは、5月29日のツイート。東京都が新築戸建への太陽光パネル設置を義務付ける条例制定を検討していることに関連したもので、6000以上のいいね、3000以上のリツイートを集めている。

「太陽光パネル火災では消防士は感電死を避ける為、燃え尽きるまで消火活動はできないらしい」「火災時は近隣地域は全焼する江戸時代みたいリスクを負うことになってもいいの?」

ツイートでは、パネル火災に関する記事のリンクも紹介されているが、記事中には「燃え尽きるまで消火活動はできない」などという情報は一切記されていない。

この「感電死を避けるため、消火活動は燃え尽きるまでできない」とする情報は、前述のとおり誤りだ。

BuzzFeed Newsの取材に応じた総務省消防庁予防課の担当者は、太陽光パネルが設置されていたとしても、燃え尽きるまで待つことはなく、放水による「通常通りの消火活動を実施している」と明言した。

ただし、感電などのリスクがあることは事実で、同庁から各都道府県に対して2013年3月に出された「太陽光発電システムを設置した一般住宅の火災における消防活動上の留意点等について」通知に沿った対策がとられているという。

「消火活動のリスクにはなっていない」

通知では、太陽光パネル(太陽発電モジュール)がある場合、火災時に外部からの電気を遮断しても発電が続いており、また夜間でも炎の光などにより発電が続くこともあることから、消火活動に際して感電のリスクがあるとしている。

実際、消火活動後の調査中に消防士が感電する事故(落下などの被害はなし)が2例あったといい、「感電により心臓の停止などの致命的な症状を被らなくとも、感電のショックで屋根から落下するなどの二次的な危険性がある」と注意喚起。

対策として絶縁性の高い手袋の活用や、水を通じた感電を防ぐため放水時は距離やノズルの調整をするーーなどを挙げた。パネルの落下や再発火の危険性もあるとして、これについても同様に対策がまとめられている。

また、同庁消防研究センターでは14年3月に太陽光パネルの火災に関する報告書をまとめており、ここではノズルを絞って棒状に放水する場合少なくとも6mの距離を取ることなどを留意点に挙げている。

なお、今回拡散したツイートの投稿者はその後、消防側にも対策のルールがあることに改めて触れているが、新築全戸への太陽光パネル設置について「通常の消火作業より大きく手間が増え(…)防災上の大きなリスクになる」としている。

こうした点について総務省消防庁予防課の担当者は、「留意点もあり、資機材の準備をしなければならないが、太陽光パネルがあるから消火活動ができない、困難であるということはなく、消火活動のリスクになっていることもない」と指摘した。

また、以前に比べて太陽光パネルの普及が進んでいることもあり、現場レベルでも「対処法を頭に入れたうえで活動ができているのではないか」との見解を示した。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

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