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中国発の格安ブランドSHEIN「商品タグに“HELP ME”のメッセージ」労働環境めぐり、不正確な情報が拡散

「SHEIN」は中国発のアパレルブランド。格安ファストファッションとして世界中に展開。日本でも今月、原宿にショールームが開かれるなど話題を呼んでいるが、「労働環境が劣悪」と批判する報道が出ている。

中国発の格安アパレルブランド「SHEIN」の商品について、タグに「NEED YOUR HELP」「HELP ME」と労働者からメッセージが記されている、などとする情報が拡散している。

「SHEIN」の商品をめぐっては、「工場で労働者が劣悪な労働環境におかれている」と問題視する報道があるため、「助けを求めている」とする文脈で広がっているが、いずれも不正確な情報だ。

洗濯の際の注意書きを切り取ったものだったり、そもそも商品名だったりするものもあるため、注意が必要だ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

「SHEIN」は中国発のアパレルブランド。格安ファストファッションとして世界中に展開。日本でも今月、原宿にショールームが開かれるなど話題を呼んでいる。

デジタル領域でZ世代を中心とする若年層の人気を獲得しており、売り上げは200億米ドルとの推計もある。

一方で、「SHEIN」の製品に関する批判は多い。劣悪な環境で低賃金労働者が商品をつくっているといった批判や、強制労働等人権侵害の疑いが出ている新疆ウイグル自治区産の「新疆綿」を使っている可能性への懸念、模倣品や著作権、意匠権に関する指摘などだ。

こうした中、世界的な衣料労働問題のNGO「CLEAN CLOTHES CAMPAIGN」は昨年、製品の製造に関わる人たちが長時間かつ不安定な労働環境におかれているとする調査報告を発表した。

さらにイギリスのテレビ局「Channel 4」などは今年10月、「1日18時間労働、休日は月に1度」「基本給がなく1着あたり6円」「1つのミスで日給3分の2の罰金」という劣悪な労働実態があるとする潜入取材の結果を報じた(日本ではBusiness Insider Japanがその内容を紹介する記事を公開)。

労働環境にスポットが大きく当たるなか、SHEIN JAPANはTwitterで「サプライヤーの労働時間に関して重大な懸念を持って注視しており、現在調査を進めています」などと発信している。

拡散した情報は…

TikTokやTwitterなどのSNS上ではこうした文脈に基づき、「SHEINの洋服のタグに労働者のメッセージが隠されている」として、複数のが画像がたびたび拡散している。海外で先に広がっており、すでにファクトチェックされている。

多く広がっているのは、それぞれ(1)「NEED YOUR HELP」(あなたの助けが必要)(2)「HELP ME」(助けて)(3)「I HAVE DENTAL PAIN」(歯が痛い)と記されている、とするものだ。

しかし、これらはいずれも切り抜きであったり、商品名であったり、根拠がはっきりしない情報で、労働問題と結びつけることは「不正確」だと言える。


(1)「NEED YOUR HELP」のタグは、「SHEIN」の服のものとして拡散しているが、これは一部分の切り抜きだ。

同様のタグをアップしている販売サイトもあるが、全文を見ると、英語で洗濯時の注意書きが記されている部分であることがわかる。こなれていない表現ではあるが、労働者からのメッセージとする根拠は見当たらない。

「Do not dry clean. Due the water saving technology, need your help washing with the soft detergent at the first time to make the goods softer.」

(ドライクリーニング不可。水質保全のため、商品を柔らかくするにはまずソフト洗剤で洗うようご協力をお願いいたします

(2)「HELP ME」のタグは、「SHEIN」関連ブランドのひとつ「Romwe」のものだが、そもそもこれは、ギフト向けの「Help Me Bookmarks」という商品名の一部だ。

タグが「労働者からのメッセージ」との誤解を招いたことを理由に、2018年に「Romwe Logo Bookmark」に改名されている。

(3)「I HAVE DENTAL PAIN」のタグは出典がはっきりしないが、遅くとも2016年の段階からネット上に存在することが確認できた。英語だけではなく、ロシア語のバージョンもある。

当初は「元気が出る服の変なラベル」などというミーム(ネタ)として拡散しており、「SHEIN」や、労働問題との関係があるか、根拠ははっきりしない。


このほかにも、「HELP MEと書かれた段ボールが同封されていた」など、同様の不正確な情報は多く拡散している。

前述の通り、「SHEIN」に対しては、劣悪な労働環境があるのではないかといった報道が出ていることは事実だが、拡散している情報のソースなどには注意が必要だ。

訂正

当初の記事で「ROMWE」について、「別の中国ブランド」としていましたが、正しくは「SHEIN」のブランドのひとつでした。お詫びして、関連部分を訂正いたします。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

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