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演説とSNSで支持伸ばした「参政党」とは。どんな党? なぜ勢力拡大?主張には危うさも… 参院選で議席獲得

参政党は2020年4月に生まれた新興政党だ。全国49の支部に9万弱の党員を擁する。ネット上の戦略にも長けており、YouTube、InstagramやTikTokを通じて、積極的な情報発信を続けていたことも特徴だ。

7月10日に投開票された参議院議員選挙で、新興政党の「参政党」が比例区で議席を得ると朝日新聞と産経新聞などが報じている。

参政党とは、どのような政党なのか。なぜ、ここまで勢力を拡大したのか。選挙戦での主張から見えてくるものとは。

参政党は2020年4月に生まれた新興政党だ。全国49の支部に6万人の党員を擁するとし、選挙期間中に10万人に増やすことを目標としていた。7月10日時点では9万弱だという。

今回の参院選には比例区5人、全選挙区に1人ずつの50人を擁立。選挙資金もクラウドファンディングや党費で5億2000万円を集めたという。イメージカラーのオレンジ色で固めた各地の組織による草の根選挙で支持を広げた。

ネット上の戦略にも長けており、サポーターらが若年層の多いYouTube、InstagramやTikTokを通じて、積極的な情報発信を続けていたことも特徴だ。

情勢調査では1議席獲得が報じられるようになり、その勢いから「台風の目」などとも言われるようになった。街頭演説で大勢の人を集める様子も伝えられている。

事務局長は元吹田市議の神谷宗幣氏。2012年の衆院選で自民党(大阪13区)から出馬した経験があり、その際は落選した。今回の参院選には自らも立候補し、メディア対応や街頭演説で前面に立った。

参政党の理念は「日本の国益を守り、世界に大調和を生む」というもの。

綱領は「先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」「日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する」「日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる」の3点だ。

「教育・食と健康・国まもり」という3つの重点政策を掲げる。

「ナショナリズム」や「反グローバリズム」など、一見すると、右派の「ポピュリズム」的な要素のある新興政党と見えるが、その主張には「危うさ」もある。

「政府やマスメディアが伝えない情報を伝えて世の中の仕組みや課題に気付いてもらい声を上げてもらいたい」というメッセージにも見えるように、遊説では既存の政党やメディア批判を繰り返している。

さらに排外主義との結びつきや、陰謀論、疑似科学などとの親和性の高さも指摘されている。

「GHQに洗脳」「マスコミは誘導装置」

その片鱗は、神谷氏の街頭演説での発言からも見てとれる。

「日本人は戦後、GHQに洗脳されコントロールされた」

「政府の中枢に敵対勢力の息がかかった人間が入り込んでいる」

「マスコミは国民を誘導するための装置」

「ワクチンのデマを流していたのは、マスコミと政府」

「江戸時代のように強い軍事力を持って鎖国してもいい」

いずれも実際に述べている内容だ。「大和魂」などの日本人の精神性、戦前の歴史が「優れている」ことを全面に押し出す一方で、戦後日本のあり方は「GHQ」の洗脳だと否定する。

その結果として今の日本の落ち込みがあるとし、さらにこのままでは「外国人」に国を奪われるなどと危機感を打ち出す。

陰謀論と批判されれば、「これは歴史の事実」「テレビでは言わないこと」と言い返すレトリックを用いている。

ほかの候補者らにも近い傾向がある。政見放送で「既存の政党は利権団体や外国に財産などを売り渡している」「YouTubeではワクチンをめぐる言論統制が行われている」などと訴えている。

同党でワクチンやマスクを否定する候補者は少なくない。科学者としてのバックグラウンドを持ち、これまでネット上でワクチンに関する誤情報を拡散してきた候補者もいる。この候補者は演説で、気候変動そのものを否定する訴えを繰り広げた。

このほか、「波動治療」という科学的根拠のない代替療法を掲げる歯科医、アメリカの陰謀論者「Qアノン」が世界の陰の支配者とする「ディープステート」(DS)に触れている放送作家らの候補者もいる。

しかし、こうした演説や主張は現場では多くの一体感を生み出し、SNSでは支持者からも「負けるな真の日本人!目覚めろ真の日本人!」などという声が多く寄せられていた。

「1議席は確実に取れるだろうと」

参院選投開票日の7月10日、インターネット番組「ABEMAニュース」の選挙特番に神谷氏が出演した。

1議席の獲得が有力視されていることに対し、「1議席は確実に取れるだろうと分析していました。全国の選挙区に出しているので、積み上げていけば100万票は固いだろう」と話した。

番組では、若者が参政党を投票先として選んでいることを紹介。その理由について、神谷氏は「TikTokで拡散してくれた人がいる。若い世代に声が届いた原因かなと思っています」と話した。

また、9万人の党員サポーターは「4月から一気に増えた。昨年12月は1万人くらいだった」と語った。共感を得ている実感については、こう答えた。

「テレビで言わないようなタブーを言ってきた。コロナの話はYouTubeでもBAN(禁止)されるので、街頭でたくさん言ってきた。街頭演説では終盤、1000人を超えるような人が来た」

「ユーチューバーが任意で編集して流してくれた。テレビで触れない内容をもっと知りたい、それを国会で審議してほしいとたくさん期待を寄せていただいた」と語った。

また「僕らは選挙期間中だけでなく、それ以前から何年も活動を続け、戦略を練ってきた」という。番組の司会者からは新型コロナに対するスタンスについても聞かれた。

神谷氏は「政府のコロナ政策がおかしい。コロナが何かも証明できていないし、PCR検査自体がおかしい」「オミクロンに関しては平常時に戻すのが一番いい。マスクを外してもいいし、当然ワクチンもいらない」と主張。

ワクチンの接種に関しては、「大人は任意でいいと思うが、打ちたくない人の人権も守らないといけない。重篤化する例がほとんどない子どもは打つ必要はないと思っている」などと、持論を展開した。