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中村哲さんの追悼式典「日本政府関係者の姿はなかった」は誤り アフガニスタンの空港で

アシュラフ・ガニ大統領自らが、兵士とともに国旗に包まれた棺を担ぎ、哀悼の意を表明した記念式典をめぐり、誤った情報が拡散している。

アフガニスタンで復興支援中に銃撃され死亡した「ペシャワール会」代表の中村哲医師の遺体が帰国した。

首都カブールの空港で開かれた追悼式典をめぐって、「日本政府は最後まで無視」「政府関係者の姿はなかった」というツイートが拡散しているが、これは誤りだ。

長年にわたって、医療や灌漑整備などの支援を続けてきた中村医師。その死に際しては、アフガニスタン政府から「アフガンの最も偉大な友人」と讃えられた。

首都カブールの空港では12月7日に追悼式典が開かれ、妻の尚子さんと長女・秋子さんらが参列。

アシュラフ・ガニ大統領自らが、兵士とともに国旗に包まれた棺を担ぎ、哀悼の意を表明した。

この式典をめぐり拡散しているのが、以下のような同日のツイートだ。

日本政府が航空機をチャーターして、中村さんを迎えにに行けばよかったのに、日本政府は最後まで無視しましたね。アフガニスタンの空港には、政府関係者の姿はなかった…》

ツイートは12月9日午前の段階で、6700件以上リツイートされ、1万1000件以上「いいね」されるほどに拡散。

「日本政府の中村さんに対するこの態度を覚えておきます」「ほんとうに酷いですよね」などのコメントが寄せられている。

記念式典に「政府関係者の姿がなかった」という言説は、誤りだ。

外務省法人テロ対策室の担当者は、BuzzFeed Newsの取材に対し、そうした情報は「間違いです」と語った。

担当者によると、式典には鈴鹿光次・駐アフガニスタン特命全権大使ら大使館関係者が参列。

さらに、遺族支援や遺体の帰国支援のため、日本から遺族に同行していた外務省の「海外緊急展開チーム」(ERT)の1人も、やはり参列していたという。

遺体の帰国に関して、現地政府とのやりとりなどを担ったのも、こうしたERTや大使館員だ。なお、現地大使館に何人の日本人スタッフがいるかについては、「安全面」から回答はなかった。

そこに日本の閣僚などの姿はなかったとしても、「政府関係者がいなかった」という情報は誤りになるため、注意が必要だ。

なお、拡散しているツイートで指摘されている、中村さんの遺体の帰国にチャーター機が使用されていなかったという点は、外務省担当者によると事実だ。とはいえ、情報の根幹部分は「式典に政府関係者がいなかった」という点であることから、レーティングは「誤り」とした。

中村医師の遺体は、12月8日に成田空港に到着した。

その際には、鈴木馨祐外務副大臣(写真)や在日アフガニスタン大使館関係者らが出迎えをし、黙祷を捧げた。

遺体は9日午前に、福岡空港に到着。11日に、自宅のある福岡県大牟田市内で告別式が執り行われる予定だという。



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チャータ便に関する表記を修正、加筆しました。