「文化庁は文化を殺すな」トリエンナーレの補助金不交付、抗議署名に一晩で3万人

    あいちトリエンナーレで再開を目指すとされた「表現の不自由展」。その矢先に決まった文化庁の補助金不交付について、萩生田光一・文部科学大臣は会見で「展示の内容について全く関与していない」ことから検閲には当たらないとの見方を示したが、批判の声も高まっている。

    文化庁は9月26日、愛知県で開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」に交付される予定だった7800万円の補助金全額を交付しない方針を明らかにした。

    これをめぐり、アーティストや有識者たちからは「検閲と言われても仕方ない」「あってはならない」などの声が相次いであがった。

    署名サイト「Change.org」では撤回を求める署名がはじまり、開始から一晩で3万人近くの賛同者が集まっている。

    そもそも補助金の不交付は、事前の申請内容が不十分であったことや、申請内容通りの展示が困難になったことがその理由としてあげられているという。

    萩生田光一・文部科学大臣は会見で、批判や抗議の殺到で展示継続が難しくなる可能性を文化庁に報告していなかったことも問題視。「展示の内容について全く関与していない」ことなどから検閲には当たらない、との見方を示した。

    しかし、トリエンナーレをめぐっては、「表現の不自由展」の展示内容が一部で批判を集め、河村たかし・名古屋市長ら政治家たちも反応。さらに菅義偉官房長官は8月2日の会見で、文化庁の補助金について「精査したい」と言及した。

    また、今回の不交付決定は、不自由展をめぐる検証委の提言を受け、愛知県の大村秀章知事が「条件が整えた上で再開を目指したい」と表明した翌日のできごとだった。

    こうした状況からも、今回の文化庁の決定は「検閲と言われても仕方ない」などという指摘が、アーティストや識者たちから相次いで上がっている。自民党の山田太郎参議院議員も「このようなことはあってはならない」と指摘している。

    一方、大村知事は文化庁の決定に抗議を表明。国の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出るほか、国と裁判で争う意向を示した。

    「明白な検閲として非難されるべき」

    「文化庁は文化を殺すな」

    今回、そう銘打った署名をはじめたのは、全ての展示再開を目指すあいちトリエンナーレに参加するアーティストたちのプロジェクト「ReFreedom_Aichi」だ。

    今回の文化庁の判断を「いったん適正な審査を経て採択された事業に対し、事業実施中に交付を取り消すことは、国が該当事業のみを恣意的に調査したことを意味します」と批判。

    実施が困難になった「表現の不自由展」の支出は約420万円で、7800万円全額の不交付を「根拠づけるには全く不十分」としたうえで、文化庁の決定が「あまりに一方的」であると指摘。

    以下のような一連の流れが「検閲」であると言及した。

    展示中止を迫った中には市長などの公人も含み、そして過熱したのはテロ予告や恐喝を含む電凸などです。 作品の取り下げを公人が迫り、それによって公金のあり方が左右されるなど、この一連の流れは、明白な検閲として非難されるべきものです。

    「文化庁が脅迫に手を貸すというメッセージにもなりかねません」としたうえで、今回の決定が「すべての文化活動に、多大な悪影響を及ぼすでしょう」とも言及。

    「国際的には日本は文化的先進国から失墜し、国際社会から非難される立場にもなり兼ねません」として、その即時撤回を求めている。

    署名は9月26日夜にはじまり、27日午前10時現在で3万人近い人が賛同している。詳細は「Change.org」サイトより。