ネット発の陰謀論「Qアノン」支持者が米議会で初当選。彼女は何者なのか? トランプ氏の反応は?

    トランプ大統領が、小児性愛組織から世界を救おうとしているという話を基礎にしたネット掲示板初の陰謀論「Qアノン」。今回の連邦議会選挙では、複数の支持者が立候補をしていたが、その一人が実際に議席を獲得することは、根拠のない陰謀論に対する信奉者の確信を強めさせることになりそうだ。

    アメリカ大統領選挙に合わせて行われている連邦議会選挙で、インターネット発の陰謀論「Qアノン」を支持する共和党の候補が、下院で当選を確実にした。「Qアノン」の支持者が議席を得るのは初めてだという。

    下院で議席を得る見通しなのは、ジョージア州第14選挙区のマージョリー・グリーン氏(共和党)。今回の連邦議会選挙では、複数のQアノン支持者が立候補をしていたが、その一人が実際に議席を獲得することは、根拠のない陰謀論に対する信奉者の確信を強めさせることになりそうだ。


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    「Qアノン」とは、「Q」と名乗る人物によってネット掲示板「4chan」(当時)に投稿された陰謀論の信奉者を指す。

    トランプ大統領が、世界規模の小児性愛組織から世界を救おうと密かに活動しているという話が基礎にある。それによると、トランプ大統領はマスコミや政財界、ハリウッドなどの大物による闇の組織「ディープステート」と戦っている、のだという。

    荒唐無稽な内容だが、さまざまなSNSプラットフォームを通じて広く拡散。「Q」の描かれたTシャツを着て、トランプ大統領の集会へ参加するようになった。

    こうした陰謀論の根っこには、2016年の大統領選がある。当時、民主党がワシントンD.C.のピザ店から広がった大規模な児童売春に関わっているとの陰謀論が拡散。ノースカロライナ州に住む28歳の男が実際にピザ店で銃撃事件を起こした。「Qアノン」はこの「ピザゲート事件」から派生した、とされているのだ。

    新型コロナウイルスの感染拡大後、「Qアノン」は、高齢者や若者にも広がりを見せている。世界中でも勢力を増やしており、日本のSNS上でも実際に信奉者が複数確認できるほか、「Qアノンの活動に呼応し、日本を救う」とする「日本支部」のサイトも存在する。

    支持者による過激な言動は、実際に現実社会にも影響を及ぼしている。信奉者が武装してダムを占拠したり、民主党議員に殺害予告を送ったりした事件も起きている。そのため、米連邦捜査局(FBI)は国内におけるテロの脅威としている。

    なお、トランプ大統領はQアノンについて8月の記者会見で「彼らが私をとても気に入っているということ以外は、運動についてあまり知らない」としながら、自らの支持へ感謝を述べ、「国を愛する人々」であると述べている。

    また、10月15日にテレビ中継された選挙集会では「私は何も知らない」としつつ、「彼らは小児性愛に熱心に反対している」として、その点には同意すると表明している。また、「Qアノン」の関連コンテンツを多くリツイートもしている。

    今回当選確実となったグリーン氏は明確に「Qアノン」の支持を表明している。

    2017年に投稿したビデオでは「Qは愛国者です」と述べており、その主張が「完全に善」であり、「トランプ側」の存在であるとも主張している。

    グリーン氏は今年6月、自動小銃「AR-15」を片手に、「アンティファテロリスト」を名指しして脅すような動画をアップし、注目された。

    さらに今年9月には、民主党議員に対して「この国を滅ぼそうとするアメリカの左派を憎む」として、やはり銃を持った自分の写真をコラージュして投稿した。

    「私たちは、強力な保守的なキリスト教徒を求めている。この国を引き裂こうとする、これらの社会主義者に対して、攻撃を続けるために」とも記したが、ポリシーに違反したとしてFacebookによって削除された。

    なお、この投稿について、グリーン氏は米国版BuzzFeed Newsが他の議員に対する脅しではないか、と聞いた取材に対し、以下のように答えている。

    「彼女たちは、妄想的でばかげていることを言っている人たちです。フェイクニュースは常に、次の陰謀論を探している。この質問はばかげています。ベッドに戻りなさい」

    イスラム教徒、ユダヤ人、黒人に対して、人種差別的な発言をしてきたことでも知られているグリーン氏は、8月の予備選挙で勝利をした際、トランプ大統領に「将来の共和党のスター」と絶賛されている。