沖縄県の新知事に就任した玉城デニー氏。
米海兵隊・普天間基地の「辺野古移設」に反対する路線を、亡くなった翁長雄志知事から継承している。
その玉城氏をめぐり、選挙戦で「普天間基地の危険性の除去に一度も触れなかった」「危険性をひた隠しにしてきた」という言説が広がっている。
結論からいうと、これは誤りだ。BuzzFeed Newsは、ファクトチェックを実施した。
そもそも、普天間基地とは…?
滑走路などが市街地に迫っていることから「世界一危険な基地」とも呼ばれる普天間基地は、宜野湾市の住宅街の中心に位置し、市の4分の1を占めている。
1996年には、日米両政府の間で5〜7年以内に返還するとの合意が結ばれている。ただ、その移設先が米海兵隊基地キャンプ・シュワブ(名護市)がある辺野古地区とされている。県内移設に反対する県民が多く、議論が混迷を極めたままだ。
普天間基地の近隣では関連する事故も相次いでいる。
2004年8月に米軍ヘリが隣接する沖縄国際大学の構内に墜落したほか、2017年12月にも普天間第二小学校のグラウンドにヘリのドアが、保育園に部品が落下した。
事故のあった小学校には2018年9月に、シェルターが設置された。米軍機が学校に近づいたことに伴う子どもたちの避難は、グランド使用が再開された2月から7ヶ月で、700回を超えている。
竹田恒泰氏の発言が拡散
この普天間基地について、玉城氏が選挙戦を通じて「普天間基地の危険性の除去については一言も触れないまま、選挙を進めた」という指摘が上がっている。
発言を繰り返しているのは、明治天皇の玄孫である作家の竹田恒泰氏だ。
10月11日の「虎ノ門ニュース」(DHCテレビ)では以下のように発言している。
だから隠してるわけですよ。普天間の危険性の除去については一度も触れずに選挙を戦い、そのあとの記者会見でも一言も触れない。
また、「Business Journal」(10月9日)では、竹田氏の同様の分析を引用した記事が、【玉城デニー沖縄知事誕生、中国の国益に…玉城知事がひた隠す「普天間基地の危険性」】という見出しで記事が配信されている。
この言説は、いずれも様々な形でネット上に広がりつつある。
この指摘は誤り、その理由は
ただ、これは誤りだ。
そもそも「普天間基地の危険性除去」は、知事選で事実上の一騎打ちとなった与党支援の佐喜真淳候補と玉城氏、双方が掲げていたものだった。
たとえば玉城氏は、9月11日に開かれた佐喜真氏との公式討論会で、以下のように普天間基地に言及している。
普天間の閉鎖返還、これは来年の2月が5年以内の運用停止の期限ですから、まずそれを政府に求めます。
普天間第二小学校ではこのシェルターを作って子供たちを避難させている。その避難誘導員まで置いている。
さらに、9月13日の告示日には、普天間基地のある宜野湾市における第一声で、「普天間基地の、この異常な事態は1日も早く閉鎖返還を実現させる」とも述べていた。
選挙後の記者会見でも…
また、9月16日の沖縄タイムス朝刊に掲載された「政策比較」の記事でも、玉城氏の以下のような発言が掲載されている。
政府が県に約束した普天間飛行場の運用停止は来年2月で5年の期限を迎える。政府は一日も早い普天間の危険性の除去が原点だと言うなら、約束を守るべきだ。
辺野古移設が条件では、普天間飛行場の早期返還は実現できない。子どもたちが米軍機の墜落と事故におびえながら学校生活を送る現状はただちに解消しなければならない。
いずれの発言などを見ても、期間中に「危険性の除去に一度も触れず」「隠してきた」などということが、間違いであることは確かだ。
では、竹田氏の言う「選挙後の記者会見」はどうか。
10月4日に開かれた就任記者会見を見てみると、玉城氏は以下のようにコメントしている。その危険性への指摘や、「除去」についても言及していることがわかる。
普天間飛行場の一日も早い閉鎖と返還、辺野古新基地建設の阻止に全身全力で取り組んでいく。
普天間飛行場の5年以内の運用停止については、辺野古移設と関係なく早急に実現するべきということを強く求めていきたい。
ご指摘の通り、部品の落下、窓枠の落下など、相次ぐ普天間基地所属の米軍機の事故を受け、県議会が即時運用停止を求める決議を自民党を含め、全会一致で可決している。普天間飛行場の負担軽減推進会議などでも、米側との協議を強く行うよう、政府に求めていきたい。
ほかにも誤りが…
竹田氏は、9月3日放送分AbemaPrimeで「オール沖縄や基地に反対している人たちが使う、沖縄が米軍基地の70%を負担というのは数字のマジック」などと発言している。これもやはり、誤りと指摘されている。
そもそも、「70%」の負担は、「反対派」だけが使っているものではない。防衛省の発行する防衛白書にも「わが国における在日米軍施設・区域(専用施設)のうち、面積にして約70.6%が沖縄に集中」と明記されている。
竹田氏は「日米共同利用の米軍関連施設を全て含めれば、沖縄にあるのは22.5%程度でしかない」としている。
この数字は全く根拠がないものではない。ただ、共同利用施設の多くは、自衛隊の基地や演習場など、日本側が管理して主に自衛隊が使い、米軍も利用できる施設のことであり、米軍の利用実績は短いものでは年数日にとどまっている。
沖縄において現実的な基地負担は「専用施設」にかかるものであることは明らかだ。
早稲田の学生が運営する「Wasegg」が実施したファクトチェックでは、琉球新報の記事などを根拠に以下のように指摘している。
米軍専用施設の周辺住民の負担は、明らかに共同利用施設の周辺よりも大きいと言いえる。
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