ドラッグで相次ぐ著名人の逮捕、NHKがあの番組を再放送へ「薬物の恐ろしさ伝える」

    11月27日(水)の午後10時50分から再放送される「ねほりんぱほりん」は、2016年10月に放送された回。「元薬物中毒者」として、13歳で始めたマリファナをきっかけに、そして20歳から覚醒剤の濫用をはじめ、重度な依存症となったという女性が半生を語る。

    さまざまな事情で顔出しNGのゲストが、人形姿でトークを繰り広げるNHKの人気番組「ねほりんぱほりん」で、「元薬物中毒者」を紹介した回を再放送する。

    いったい、どのような狙いがあるのか。NHKに聞いた。

    11月27日(水)の午後10時50分から再放送されるのは、2016年10月に放送された回。

    13歳で始めたマリファナをきっかけに、そして20歳から覚醒剤の濫用をはじめ、重度な依存症となったという女性が、依存していたときのことや覚せい剤が切れたときの症状、逮捕、社会復帰までの半生を語るほか、薬物依存に陥った他の人の話も紹介される。

    「NHKオンデマンド」の番組サイトには、以下のような告知が書かれている。

    中学の友人に「アメリカのたばこ」と言われて吸ったマリファナに始まる薬物中毒。薬を打ちながらの壮絶な子育て、逮捕の瞬間に思ったこと、不安でたまらず泣いた社会復帰、そして、過去を受け入れ支えてくれる彼への思い…1人の女性が語る波瀾万丈の人生。

    今月に入ってから、女優の沢尻エリカ容疑者や元タレントの田代まさし容疑者、プロスノーボード選手の国母和宏容疑者、金融トレーダーのKAZMAXこと吉澤和真容疑者ら著名人が相次いで違法薬物で逮捕され、薬物依存症に注目が集まっていたなかで、番組公式Twitterが再放送を告知し、話題を呼んでいた。

    いったい、どのような狙いがあったのか。BuzzFeed NewsがNHK広報部に「どのような状況に鑑みたことなのか」「専門家らがつくった薬物報道ガイドライン(*後述)を参考にしたのか」などと質問したところ、以下のような回答があった。

    「薬物依存症が社会的な問題となる中で、薬物の恐ろしさをお伝えすることが大切だと考え、番組として総合的に判断し再放送することにしました」

    田代まさし容疑者出演の番組は…?

    NHKをめぐっては、今年7月に放送されたNHKの番組「バリバラ」内の企画「教えて★マーシー先生」番組で田代容疑者が薬物依存症に苦しんだ実体験を語った内容を、サイトやYouTube上で非公開にしていた。

    田代容疑者が薬物依存の実態を語ったり、専門家が当事者が回復できるための仕組みや、適切な治療の必要性を訴えたりするものだった。批判が集まり、11月15日までに、要約されたサマリーに注釈を加える形で再掲載した

    公開されたページには、番組の内容を文章でまとめたサマリーとともに、番組側のコメントが掲載されている。

    2019年11月6日、田代まさし容疑者が薬物を所持していたとして逮捕されました。田代氏は、番組出演時に「薬物に頼らない一日一日を積み重ねている」と語っていただけに、逮捕の知らせはバリバラ関係者にとっても大きなショックでした。そして、薬物依存症が回復する道のりの険しさ、患者を孤立させず社会復帰につなげていくにはどうすればいいのか、をより深く考える機会となりました。バリバラはこの問題を今後も考え続けていきたいと思います。

    以下、放送当時の表現に一部修正を加えた上で、サマリーを再掲いたします。

    後を絶たない「自粛」

    芸能人が薬物の所持・使用などの容疑で逮捕された際に、強くバッシングする報道が相次ぎ、過去の作品や出演予定番組の放送を自粛するケースが後を絶たない。

    一方、当事者や専門家が中心となって策定した「薬物報道ガイドライン」では、「犯罪者として糾弾し、反省を迫り、プライバシーをさらす報道によって、助けを求めるチャンスを奪う。治療・回復の場につながるのを遅らせてしまう」と問題提起。

    そのうえで「依存症の危険性、および回復という道を伝えるため、回復した当事者の発言を紹介すること」「薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと」といった点を呼びかけている。

    そうした動きが広がるなかで、一度非公開になった「バリバラ」が再び公開されたり、薬物依存に陥った人々の声を伝えた「ねほりんぱほりん」が再放送されることには大きな意味があると言えるだろう。

    実際、同番組の告知ツイートには「NHKの英断」「こういうことがあるたびに放送してほしい」などの声が寄せられている。

    BuzzFeed Newsでは、以下に、依存症の治療・回復にあたる関係団体と、バリバラにも出演した国立精神・神経医療研究センタ」の精神科医、松本俊彦さんら専門家が作った「薬物報道ガイドライン」を紹介する。

    【望ましいこと】

    • 薬物依存症の当事者、治療中の患者、支援者およびその家族や子供などが、報道から強い影響を受けることを意識すること
    • 依存症については、逮捕される犯罪という印象だけでなく、医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること
    • 相談窓口を紹介し、警察や病院以外の「出口」が複数あることを伝えること
    • 友人・知人・家族がまず専門機関に相談することが重要であることを強調すること
    • 「犯罪からの更生」という文脈だけでなく、「病気からの回復」という文脈で取り扱うこと
    • 薬物依存症に詳しい専門家の意見を取り上げること
    • 依存症の危険性、および回復という道を伝えるため、回復した当事者の発言を紹介すること
    • 依存症の背景には、貧困や虐待など、社会的な問題が根深く関わっていることを伝えること


    【避けるべきこと】

    • 「白い粉」や「注射器」といったイメージカットを用いないこと
    • 薬物への興味を煽る結果になるような報道を行わないこと
    • 「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと
    • 薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと
    • 逮捕された著名人が薬物依存に陥った理由を憶測し、転落や堕落の結果薬物を使用したという取り上げ方をしないこと
    • 「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと
    • ヘリを飛ばして車を追う、家族を追いまわす、回復途上にある当事者を隠し撮りするなどの過剰報道を行わないこと
    • 「薬物使用疑惑」をスクープとして取り扱わないこと
    • 家族の支えで回復するかのような、美談に仕立て上げないこと

    薬物に関する相談窓口はこちら

    「全国精神保健福祉センター」の一覧

    薬物依存症リハビリ施設「日本ダルク」

    NPO法人「全国薬物依存症者家族会連合会」


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