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「日本と韓国の避難所格差」として紹介された画像は誤り、台風19号で拡散

日本が避難所の衛生面や生活環境についての国際指針である「スフィア基準」を満たしていない、という指摘をするために使われた画像は、実際は東日本大震災後の釜石市の様子だ。

東日本の広い範囲で甚大な被害をもたらした台風19号をめぐり、「日本と韓国の避難所格差」と称する画像が拡散した。

結論からすると、これは誤りだ。「韓国の避難所」として紹介されているのは、東日本大震災後の岩手県釜石市の避難所の様子だ。

この画像は「〈避難所の格差〉画像は韓国の避難所」などという言葉とともに、台風19号が直撃する最中の10月12日夜に拡散。2500以上リツイートされ、3000近く「いいね」されている。

投稿者は「戦前と変わらない日本の避難所の様子」などとして、日本が避難所の衛生面や生活環境についての国際指針である「スフィア基準」を満たしていない、という指摘をしている。

ただ、冒頭に指摘をした通り、この写真は韓国の避難所ではない。2011年4月6日に共同通信によって撮影された岩手県釜石市の様子だ。

当時の共同通信の報道によると、遅くともこの日の午後には、この仕切りが釜石小学校の体育館に設置されていたとみられる。

下の写真は、AFP通信が同年4月12日に撮影した釜石市の避難所。アングルが少し違うが、壁などの掲示物が一致していることがわかる。

基準を満たしていないとの指摘もあるが…

事実として、日本では避難所の多くに仕切りがなかったり、1人あたりのスペースが狭かったり、空調設備やトイレの整備が行き届いていなかったりするため、「スフィア基準」を満たしていない、という指摘はかねてから上がっている。

ただ、近年では釜石市のような仕切りを設置する自治体も徐々に増えている。台風19号で被害を受けた長野県上田市では、発災翌日から仕切りが設けられていたことに注目が集まった。

もちろん、その対策は十分だとは言えない。安倍晋三首相も今回の台風後に参議院予算委で野党からこの点を指摘されており、「政府として段ボールベッドを送るなどのプッシュ型支援をして改善に努力している」と答弁している。

災害が相次ぐなか、より快適な避難所が増えるように働きかけることは大切だが、誤った画像には注意が必要だ。


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