立憲民主党の福山哲郎・前幹事長が「仕事をしない無能な野党に国民もうんざり」などと語っているように加工した、NHKニュースの虚偽画像が拡散している。
テロップが書き換えられており、4年前から広がっていたとみられる。NHKも放送した内容ではないと否定しており、注意が必要だ。BuzzFeed Newsは、ファクトチェックを実施した。
拡散しているのは、5月7日のツイート。「正論すぎて何も言えない」という文言とともに広がっている画像（上）で、6800以上いいねされている。
この画像は前述の通り、加工されたものだ。そもそもこれは、2018年4月12日の立憲民主党・福山幹事長（当時）が会見で、森友・加計学園問題に触れた際のニュース映像のスクリーンショットだ。
YouTube上に残る当時の会見を見ると、福山氏は安倍政権が「虚偽答弁」を重ねていたとしながら、「そのこと自身、国民もうんざりしていると思いますし、私もうんざりしています」と述べていることが確認できた。
NHKはこれを同日のストレートニュースで報じたが、拡散している画像では、テロップの「仕事をしない無能な野党に」の部分が加筆されていることがわかる。
また、左上の「問題」の横の部分が塗りつぶされているなど、加工のあとが散見される。
NHK広報室もBuzzFeed Newsの取材に対し、「ご質問の字幕スーパーを含む画像は、2018年4月12日のニュース7で放送した内容そのものではありません」と、加工されたものであるとの見解を示した。
放送翌日から拡散したが…
この画像は、NHKニュースの放送翌日からネット上に拡散していたことが確認できた。ただし、当初は左上の見出し部分「森友・加計問題」が残されていることもわかる。
画像は野党批判の文脈でたびたび拡散を繰り返しており、その過程で何者かが部分を塗りつぶしたということになる。
ニュース番組の一場面でテロップを加工したり、切り取ったりする疑義言説はたびたび広がりを見せ、問題視されている。ロシアによるウクライナ侵略でも、海外メディアの加工画像が広がったことがあった。
NHK広報室にはテロップの構成やフォントの違いなど、加工された画像の「見分け方」についても質問をしたが、「取材・制作の過程についてのお答えは差し控えますが、NHKのニュースでは、使用するフォントを含め、一定の方針に沿って字幕を表示しています」とだけ回答があった。
ただし、NHK関係者によると、3段のテロップをこうしたニュースの映像で使うことは、基本的にないという。加工かどうか「見分けるポイント」のひとつになると言えるだろう。拡散には注意が必要だ。
BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」（FIJ）のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング（以下の通り）を実施しています。
ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。
また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。
- 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
- ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
- ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
- 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
- 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
- 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
- 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
- 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
- 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。