• factcheckjp badge
  • medicaljp badge
  • covnavi badge

コロナやワクチンめぐる「誤情報」河村たかし市長が発言を一部訂正「全くのデタラメ」とファクトチェック受けた弁明は…

「イベルメクチン」の効果や子どもへのワクチン接種などに関する河村市長の発言について、専門家はいずれも「明確な誤り」であると指摘している。BuzzFeed Newsのファクトチェックを受け、市長は一部発言を訂正した。

新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬をめぐり、名古屋市の河村たかし市長が記者会見で発言した内容に誤情報が含まれていた問題で、市長が発言を一部訂正した。

8月22日の記者会見で「そういうふうに僕が言ったようです」などと述べた。謝罪はなかった。

BuzzFeed Newsがファクトチェック記事を公開したことを受けた訂正。会見で市長は記事には言及しなかったが、名古屋市側が取材に認めた。

BuzzFeed Newsのファクトチェックで「誤り」としていたのは、6月1320日の記者会見で、ワクチンの4回目接種と、「イベルメクチン」、さらに5〜11歳への子どもへのワクチン接種について発言した内容。

いずれの発言についても、取材に応じた日米の専門家グループ「こびナビ」は「明確な誤り」「全くのデタラメ」と指摘していた。

まず、「基礎疾患がある人はワクチンの追加接種でかえって重症化する確率が高い」という発言について専門家は、そのようなデータは存在せず、ワクチンはむしろ重症化予防に有効であるとの認識を示している。

また、「イベルメクチンが新型コロナの治療薬として一番効いたと米国救急医学会がレポートを出した」とする言説については、そもそも米国救急医学会(ACEP)はイベルメクチンの効果については研究結果をもとに否定しており、河村市長の発言は事実と異なっている。

さらに、「mRNAワクチンは血管に遺伝子の要素を注射するので、子どもは注意して」とする言説はどうか。これについても、専門家は「mRNAワクチンは筋肉注射ですので、血管に注射をするものではありません。基本的な部分で事実認識に誤りがある」と苦言を呈していた。

名古屋市では5〜11歳へのワクチン接種券配布は、今年6月2日に5歳の誕生日を迎える児童については、案内はがきを送付したうえでの保護者による「申請制」となっている。

予防接種法上の「努力義務」でないことが理由とされていたが、厚生労働省の専門家分科会が8月8日に「努力義務」を課すことを了承した。これを受け、市としては、現状のやり方の継続を含め、対応を内部で検討しているという。

こうした政策にも影響を及ぼしかねない市長の誤りについて聞いたBuzzFeed Newsの取材に対し、名古屋市は「『ワクチンの有効性や安全性については様々な意見があることから、それらの意見を十分理解した上で、接種についてご自身が納得する選択をしてほしい』との思いを伝えられたものと考えております」とコメント。

また、「イベルメクチン」についても、「様々な意見があります」と強調。効果に有意差がないという論文がある一方で、「アメリカの救命救急専門医らで構成される団体「Front Line COVID-19 Critical Care Alliance」(FLCCC)が「イベルメクチンの使用を推奨しています」などとしていた。

市長が訂正した内容は

記事が公開された4日後の8月22日、河村市長は会見で、以下のように述べた。

映像を見ると、「これ読んでくれということがありますが」と、ペーパーを読み上げていることがわかる。

まあ、これ読んでくれということがまあありますが、これ、あとで質問出るかわかりませんけど、子どもさんの5歳から11歳までは、まあ接種の努力義務を適用しないとしておりましたが9月上旬から努力義務が適用される、予定ということに、まあ一応、一応じゃないか、なっております。

まあ、コロナワクチンの接種法は、血管注射じゃなく筋肉注射です。まあこの辺もちょっと(笑)、私はドクターから聞いたんですけど、え〜、という話でございます。

あ、そうですね。はい。え〜、イベルメクチンの有効性につきまして、言及した団体はFLCCCと。「Front Line COVID-19 Critical Care Alliance」ということでございまして、アメリカ救急医学会ではありません、ということで。そういうふうに僕が言ったようですけど、まあそういうことでございます。

ファクトチェックの対象となった3つの発言のうち、「基礎疾患」に関するもの以外の2つを訂正したといえる。

名古屋市新型コロナウイルス感染症対策室はBuzzFeed Newsの取材に対し、ファクトチェックを受けた訂正であることを認めた。

対策室からは「正しい情報発信」を心がけるよう市長に要望したという。3つすべての訂正とならなかった経緯については把握していないが、「いい間違えや認識間違いがはっきりしているものを訂正していただいた」としている。

なお、名古屋市の回答や市長の訂正会見で名前があがった「FLCCC」とは、コロナ禍で一部の医師らがつくった任意組織。公的団体でも、専門的な機関でもない。イベルメクチンの有効性を訴え、使用を推奨している団体で、疑義を唱える指摘も少なくない。

ファクトチェックなどでも問題が指摘されているほか、国際的な反ワクチン組織とのつながりや、メンバーの一部が陰謀論を喧伝するYouTube動画への出演していること、オンライン診療やイベルメクチンの処方で高額費用を請求していることなどが報じられている。

イベルメクチンをめぐってはFDAはイベルメクチンが新型コロナの治療薬として安全・有効であると確認されていないと強調。大量服用の危険について注意を呼びかけ、欧州・EMAも同様の勧告を出している。

また、8月18日にもイベルメクチンの効果を否定する論文が医学誌『The New England Journal of Medicine』に掲載されたばかりだ。BuzzFeed Newsがファクトチェック記事でも指摘したこうした点について、河村市長が触れることはなかった。

なお、子どものワクチン接種については市長自ら「あとで質問出るかわかりませんけど」と触れているが、記者からは発言の訂正についても含め、一切質問はあがっていなかった。


関連記事は特集ページから。「こびナビ」はこちら。

BuzzFeedは新型コロナウイルス感染症やワクチンに関する正確な情報を提供する日米の専門家によるプロジェクト「こびナビ」とも連携し、新型コロナ感染症とワクチンに関する誤った情報、不正確な情報についてファクトチェックしています。