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K-1ジム総本部「新型コロナはお湯で…」誤情報に批判、善意の拡散に注意

批判の多くはさいたまスーパーアリーナで開催された「K-1」の大規模イベント「K'FESTA.3」に紐づけたものだったが、ジムの運営と大会運営は異なることに注意が必要だ。

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、格闘技ジムの「K-1ジム総本部」のホームページにもお湯を飲めば予防できる」などという誤った情報が掲載されていたことが、ネット上で批判を集めている。

この情報は広く「チェーンメール」のように拡散していたもので、ジム側も善意で掲載していたといい、批判を受けすでに削除されている。

なお、批判の多くはさいたまスーパーアリーナで開催された「K-1」の大規模イベントに紐づけたものだったが、ジムの運営と大会運営は異なることに注意が必要だ。

ジムのサイトに誤情報が掲載されていたのは、2月22日。アーカイブされた情報を確認する限り、「コロナウイルス対策の内容についてアドバイスをご提供頂きました」として、以下のような内容を含む情報が掲載されていた。

「武漢ウイルスは耐熱性がなく、26-27度の温度で死にます。そのため、お湯をたくさん飲む。親戚にお湯を飲ませれば予防できる」

これは「武漢研究所に派遣されるクァク·グヨンの米国友人の文」とされ、そのほかにも新型コロナウイルスに関する情報がまとめられている。文章には「ご参考にされ、大切な方にも是非共有されて下さい」とも記されていた。

そもそもこの情報は、2月末にLINEなどを介して「チェーンメール」のように全国で広がっていた誤情報だ。

感染症のスペシャリストで、2009年の新型インフルエンザ発生時には国の対策を検討する委員会の副委員長も務めた川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんは、当時のBuzzFeed Newsの取材に対して、誤りをこう指摘している。

「ウイルスは一般に熱には弱いので、煮沸などで十分ウイルスを不活化できることはあります。26-27度では活性は低下しますが、失活はしません。これでOKというエビデンスは全くなく、民間信仰と言ってよいと思います」

「36-37度はウイルスにとってはいいコンディションです。56度で失活します。お湯を飲んでも、呼吸器で増えるウイルスは飲んだお湯は鼻の中には届かずあまり意味はないと思います。確実にするには、56度で30分。お湯をのどにとどめておかなくてはいけませんね」

「お客様のために…」

いったいなぜ、こうした情報がジムのサイトに掲載されてしまったのか。

BuzzFeed Newsの取材に対し、「K-1」の広報担当者は「ジムの担当者に確認したところ、SNS経由で当該情報に接し、当初コロナウィルスに関して知識が浅かったこともあり、そのまま掲載してしまったとのことです」と回答した。

そのうえで今回の批判を受け、「お客様のために一刻も早く情報提供をしなくてはと考えたとのことですが、軽率な面があったことは否定できず、ご迷惑をお掛けしてしまったことを反省しております」とコメントした。

情報は批判を受けすでに削除されており、今後は「各ジムの担当者に対して、インターネットリテラシーに関する啓蒙、教育に取り組んで参ります」としている。

「大会とジムの運営主体は異なる」

「K-1」をめぐっては、3月22日にさいたまスーパーアリーナで大規模イベント「K'FESTA.3」が開かれた。政府や埼玉県が自粛を求めるなかでの決行となった。

大会サイトには感染予防として「水を定期的に飲む」「加湿器と次亜塩素酸水を使った空間除菌」などという医学的にエビデンスのない対策も掲載されており、大きな議論を呼んだ。

こうしたなかで、このジムの情報も拡散、批判の対象となったが、広報担当者は大会とジムの運営主体が異なっていることを以下のように強調した。

「業務委託やフランチャイズなど、各ジムごとに運営形態は異なるものの、大会運営とジムの運営については主体が別となっております。ホームページの運用についても基本的には各ジムに委ねており、本件書き込みについても当社として正式に発表したものではございません」

なお、このチェーンメールは当時多くの人たちにシェアされていた。BuzzFeed Newsの複数の記者だけではなく、先出の岡部さん自身の友人や家族の友人にも流れてきており、相談も受けていたという。

ジムが情報を掲載したのも、ちょうどこの時期に当たる。批判するだけではなく、こうした情報の多くがパニックに乗じた「善意」で広がること、決して他人事ではないことを、改めて確認することが大切だ。