香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)さん(23)が8月10日夜、国家安全維持法違反(国安法)の疑いで香港警察に逮捕された。
同じ日には、民主派として知られる「蘋果日報」(リンゴ日報)の創業者らも逮捕されており、香港における自由な政治活動や言論への締め付けが強まっている。
民主活動家の仲間は「日本の皆様のサポートが必要です」と日本語で呼びかけ、Twitter上でも「#FreeAgnes」(アグネスを解放しろ)というハッシュタグが拡散するなど、抗議や危惧の声が広がっている。
周さんは2014年の香港民主化デモ「雨傘運動」で、違法集会に参加した罪などで起訴されている黄之鋒さん(23)とともに民主派団体「香港衆志」(デモシスト)の中心的な活動を担った。
民主派の象徴的人物の一人として知られ、日本語が堪能なこともあり、日本メディアで香港の窮状を訴え続けてきた。国安法の成立後、周さんはデモシストからの脱退を宣言、同団体も解散している。
周さんの逮捕容疑の詳細は明らかになっていないが、同じ日には中国に批判的な論調とされる「リンゴ日報」の創業者や息子ら10人が一斉に逮捕されている。
「彼女は無罪だが…」
周さんとともに活動してきたデモシストの元党首で民主活動家の羅冠聰さん(国安法成立後、ロンドンに滞在)は自らのTwitterに、日本語でこう書き込んだ。
《アグネスは一緒に闘ってきた友人の一人です。独裁政権である中国共産党(CCP)は国安法違反「国家分裂」の容疑で23歳の女性を逮捕。彼女は無罪だが、無期刑を受ける可能性がある。日本の皆様のサポートが必要です》
このツイートは8月11日午前現在で、3万6000リツイートされるなど、大きく拡散している。
なお、Twitterでは「#FreeAgnes」(アグネスを解放しろ)というハッシュタグが現れており、羅さんはこれに触れて「Let’s trend it!」(トレンド入りさせよう)と呼びかけた。
ハッシュタグについては、日本の著名人も多くツイートしている。「#周庭氏の逮捕に抗議します」というタグも、あわせて広がっている。
「日本のみなさん、わかってほしい」
国安法は6月30日に北京・共産党政権の国会にあたる全国人民代表大会の常務委員会で成立し、7月1日から施行された。
同法は(1)国家の分裂(2)政権の転覆(3)テロ活動(4)外国勢力との結託、を取り締まり対象とし、最高刑は終身刑だ。
安全保障に関わる裁判の裁判官は香港行政長官が指名できる、としている。さらに「重大事件」の場合は、北京政府が訴追手続きを引き継ぐ。つまり、香港ではなく北京政府の仕組みの中で裁判を行うことを可能としている。
また、中国は香港内に新たな治安機関を設置することができるが、この機関の職員は、香港の法律には縛られない。
同法成立直前の6月28日には、Twitterでこう訴えていた。
「日本の皆さん、自由を持っている皆さんがどれくらい幸せなのかをわかってほしい。本当にわかってほしい...😭」