「香港独立にノー」の旗だけで逮捕 皮肉も通じない新法の逮捕第1号に衝撃

    「香港独立」の前に「ノー」と書き加えた旗を持っていた男性が逮捕された。7月1日に施行された香港国家安全維持法の逮捕第1号。香港の民主化運動は、重大な局面に立っている。

    香港での反体制(反中国共産党政府)的な言動を取り締まるため、北京政府が導入した「香港国家安全維持法」が、7月1日に施行された。香港警察当局はこの日、同法違反容疑による逮捕の第1号を発表した。

    香港警察のツイートによると、「香港独立」と書かれた旗を銅鑼湾(コーズウェイ・ベイ)地区で持っていた男性を7月1日、逮捕した。男性は「FREE HONG KONG」と書かれたTシャツを着て旗の横に立っており、民主化活動家とみられる。

    #BREAKING: A man was arrested for holding a #HKIndependence flag in #CausewayBay, Hong Kong, violating the #NationalSecurityLaw. This is the first arrest made since the law has come into force.

    Twitter: @hkpoliceforce / Via Twitter: @hkpoliceforce

    香港警察当局のツイート

    このツイートには、「具体的にそれが一体何の容疑なんだ」「旗が世界第2位の経済大国の安全を脅かすなんて想像もつかない」といった怒りを込めたリプライが、世界中からついている。

    @hkpoliceforce Can't imagine a 120cmX80cm flag could threaten the security of the second largest economy on the world. Too fragile that CCP's heart is make of glass.

    Via Twitter: @Kawaiiiii19

    「120センチX80センチの旗が世界第2位の経済大国の安全を脅かすなど想像もつかない。中国共産党のハートはガラス製で壊れやすいらしい」

    @hkpoliceforce Can't wait for your next tweet: we arrested a 16 year old girl for shouting "freedom"

    Via Twitter: @pybaubry

    「16歳の女の子が『自由を』と叫んだから逮捕したっていう次のツイートを待ちきれないね」

    最高刑は終身刑ー新法の問題点

    香港国家安全維持法は6月30日に北京・共産党政権の国会にあたる全国人民代表大会の常務委員会で成立し、7月1日から施行された。

    7月1日は香港の返還記念日で、北京政府はこの日の民主化デモ激化を予想して、作業を間に合わせたとみられる。

    新法は1)国家の分裂、2)政権の転覆、3)テロ活動、4)外国勢力との結託、を取り締まり対象とし、最高刑は終身刑だ。

    安全保障に関わる裁判の裁判官は香港行政長官が指名できる、としている。さらに「重大事件」の場合は、北京政府が訴追手続きを引き継ぐ。つまり、香港ではなく北京政府の仕組みの中で裁判を行うことを可能としている。

    また、中国は香港内に新たな治安機関を設置することができるが、この機関の職員は、香港の法律には縛られない。

    実は「独立にノー」と書いてあるのだが...

    香港警察がツイートした初の逮捕例は、香港の独立、つまり「国家の分裂を訴えた」疑いで逮捕されたとみられる。

    しかし、警察当局が発表した旗の写真を拡大すると、もう一つの事実が見えてくる。

    漢字の「香港」の前に「不要」、英語でも「No To」と読める白い文字が、小さく書き加えられている。ちゃんと読むと「香港独立反対」という意味になるようになっているのだ。

    つまり、この男性が、こう書き加えた旗を持っていたこと自体が、新法による取り締まり強化に抗議する「皮肉」や「風刺」だった可能性が高いのだ。

    皮肉という言論のあり方を認めず、有無を言わせず「国家分裂」容疑で取り締まる。それが、北京政府の締め付けが強まる今の香港の姿ということだ。

    民主の女神「日本の皆さん、自由を持つ幸せをわかってほしい」

    香港の民主化運動のシンボルの1人で、「民主の女神」と呼ばれる周庭さんは6月28日、以下のようにツイートしている。

    今日の香港での報道によると、香港版国家安全法は火曜日(30日)に可決される可能性が高い、そして「国家分裂罪」と「政権転覆罪」の最高刑罰は無期懲役という。日本の皆さん、自由を持っている皆さんがどれくらい幸せなのかをわかってほしい。本当にわかってほしい...😭

    Via Twitter: @chowtingagnes

    そして法が成立した6月30日、民主化団体デモシストは解散を発表し、周庭さんも脱退する意向をツイートした。法の施行後は、メンバーであるだけで逮捕の対象となりかねないためだ。

    香港の民主化運動は、新法の導入により極めて重大な局面に立たされることとなった。
    周庭さんはツイートを「生きてさえいれば、希望があります」と締めくくった。

    私、周庭は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します。これは重く、しかし、もう避けることができない決定です。 絶望の中にあっても、いつもお互いのことを想い、私たちはもっと強く生きなければなりません。 生きてさえいれば、希望があります。 周庭 2020年6月30日

    Via Twitter: @chowtingagnes

    香港警察当局は、逮捕発表に続けて、「香港国家安全維持法に違反する可能性のあるスローガンやシュプレヒコールには、新たに紫の旗を揚げて警告する」とツイートした。

    By raising the new purple warning flag, #HKPolice warned #HKProtestors chanting #HKIndependence slogans that they may have breached #NationalSecurityLaw in #CausewayBay, Hong Kong.

    警察当局が続けて発表した逮捕例は、「香港独立」という手書きのプラカードを持った女性だった。プラカードには英国と米国の旗も付いていたため、「国家分裂」に加えて「外国勢力との結託」を疑われる可能性も出てくる。

    #NationalSecurityLaw in effect. #HKPolice further arrested a female for showing a material with #HKIndependence slogan in #CausewayBay, Hong Kong. #HKPolice will take resolute enforcement action in accordance with #NSL.