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「意味のない国葬」「税金泥棒」と海外要人の“参加状況”めぐる不正確な情報が拡散。故人の名前から「ジョンソン大統領」まで

ネット掲示板「5ちゃんねる」に同じような表が書き込まれており、それが原型となって情報が拡散したとみられる。松野博一官房長官は9月6日の会見で、海外からは190以上の代表団が参列、うち首脳級は50程度見込まれると述べている。

安倍晋三元首相の国葬をめぐり、G7などの現職の海外要人の「参加状況」と称する表が広がっている。

すでに故人となっている人の名が含まれていたり、役職名が間違っていたりするなど、不正確な情報だ。拡散には注意が必要だ。

広がっているのは、8月29日午後の以下のようなツイート。約3500リツイートされ、6000以上のいいねを集めるなど拡散している。

「意味のない国葬だよ」と添付されている画像では、G7や国連常任理事国の現役首脳たちの「参加状況」をまとめている。しかし、不正確な情報が複数、含まれている。


(1)イギリスはジョンソン大統領となっているが、イギリスが議院内閣制で大統領はいない。また、首相のジョンソン氏は拡散時の段階ですでに辞意を表明していた。

(2)ドイツはシュミット首相となっているが、同氏は旧西ドイツの首相を1974〜82年まで務め、2015年に死去した。今の首相はショルツ氏だ。

(3)中国は習近平首相となっているが、習近平氏の肩書きは国家主席。首相は李克強氏だ。


同じ画像は8月29日夜にも別のユーザーにより「税金泥棒。だから、賛成者が負担しなよ。国葬反対!」などとツイートされており、3800リツイート、6800いいねされるなど拡散。その後も、たびたび複数のユーザーが投稿している。

また、同様のミスが含まれている情報もそのほかにも拡散しており、ツイートだけのものでも3000近くのいいねを集めているものがある。

ソースははっきりしないが、8月28日にネット掲示板「5ちゃんねる」に同じような表が書き込まれており、それが原型となって情報が拡散したとみられる。

参加状況に関する報道をまとめると…

報道機関の記事データベース「G-search」などを使って調査したところ、同表でまとめられている各国の参加状況は以下の通り。


アメリカ:ハリス副大統領、オバマ元大統領が参加予定

イギリス:報道なし

フランス:マクロン大統領が内政の予定で撤回。「できるだけ高位」の人物を検討中

カナダ:トルドー首相が参加

ドイツ:ウルフ元大統領が参加予定、メルケル元首相は見送り

イタリア:報道なし

ロシア:プーチン大統領の参加予定はなし

中国:報道なし


G7の現職トップはトルドー首相のみと伝えられているが、拡散している表を比較すると、ソースがはっきりしない情報であることは明らかだ。

なお、松野博一官房長官は9月6日の会見で、海外からは190以上の代表団が参列、うち首脳級は50程度見込まれると述べている。

主要各社の世論調査で国葬には反対の世論が多数派となっている。とはいえ、議論は正確な情報に基づくべきであり、真偽の疑わしい情報の拡散には注意が必要だ。

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