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「東京五輪の感染拡大リスクは?」「誰の責任で開くの?」菅首相の回答は…

「リスクの認識」や「対策の効果に関するデータ」を問う声もあがったが、首相の口は重かった。一方で、まだ公式決定は発表されていない観客を入れての五輪開催を念頭においた発言も飛び出した。

政府は6月17日、北海道、東京都、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、福岡に出されている緊急事態宣言を解除すると発表した。

北海道、東京都、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡については「まん延防止等重点措置」に移行、期限は埼玉、千葉、神奈川とともに7月11日までとなる。沖縄県の宣言は同日まで延長された。

菅義偉首相が開いた会見では、7月23日に開会式を控えた東京オリンピック・パラリンピックに関する質問も相次いだ。

「リスクの認識」や「対策の効果に関するデータ」を問う声もあがったが、首相の口は重かった。一方で、まだ公式決定は発表されていない観客を入れての五輪開催を念頭においた発言も飛び出した。

まず会見の冒頭、菅首相は東京五輪について、以下のように述べた。

「東京オリンピック・パラリンピックについては、G7としての開催への支持が表明され、首脳宣言にも明記されました。世界のおよそ40億人がテレビなどを通じて大会を観戦すると言われています。東日本大震災から復興をとげた姿を世界に発信し、子どもたちに夢や感動を伝える機会になります」

「人類が新型コロナという大きな困難に直面する今だからこそ、世界が団結し、人々の努力と英知で、この難局を乗り越えていくことを日本から世界に発信したいと考えています」

「そのためには、東京大会は安全安心に開催すること、そして大会期間中、日本国内の感染拡大を抑え、大会終了後の感染拡大防止にも繋げていくことが不可欠であると考えています。皆様には、家でのテレビ観戦などを通じ、アスリートを応援していただきたいと思います」

記者からは「開催に伴い、感染リスクがどれほど増大するのか」についての質問もあがった。記者からの質問はこうだ。

「国内全体で人の移動が増えるリスクや、観客を入れた場合のリスクをどう考えられますか」

「安全安心の根拠を示さずに開催を強調されても開催に不安を感じる分、国民は納得できません。国民の命に責任を持つ政府として、安全安心との言葉を繰り返すのではなく、総理としてのリスクの認識、評価をお示しください

直行直帰することが大事?

しかし、菅首相はこれまで通り「対策」の説明に終始し、明確に「リスクの認識」を答えることはなかった。回答(要旨)はこうだ。

「まず安全安心体制を実現するために、感染対策をしっかり講じて、リスクを可能な限り小さくするべく取り組んでいく。そのために専門家の意見も伺いながら具体的対策を進めているところです」

「東京大会のために海外からくる選手や大会関係者については、国内の感染を拡大させることがないように、人数を極力限定をし、半分以下にしてます。検査、ワクチン接種を徹底し、行動を厳しく制限し、一般国民と交わることがないようにしっかり遮断をしたいと思います」

「一方で国内の人の動きでは急に人流が増えることがないよう、今後まん延防止措置が解除された後も、スポーツイベントなどの入場制限について人流を抑えることとし、東京大会の人数上限というのは、こうしたルールに基づくことを基本として決定をされるように思います」

「さらに東京大会においては、多くの方がご自宅から観戦になると思いますが、会場に来られる観客は常時マスクをして、大声の応援は禁止されることになると承知してます。会場に直行、直帰をすることも大事だと思います。こうしたことを含めて、組織委員会がガイドラインをつくると承知してます」

「さらに、例えばJリーグでは、新型コロナ対応のガイドラインで観客に対し、できる限り直行直帰、時差来場を呼びかける。こうしたものを十分に参考しながら感染リスクを防いでいきたいと思います」

「また、今、ワクチン接種が進んでおります。大会中は高齢者を中心とした重症者が減少をしてくると思います。その中で、医療の負荷というものも大幅に軽減されると考えてます」

「プロ野球とかJリーグは…」

この対策について、別の記者からは「それをやることでどれだけ感染を減らすことができるか、できれば定量的なデータなどがあれば示していただきたい」という質問があがった。

しかし首相の答えはこれまでの繰り返しなどにとどまり、「対策により感染を減らす定量的なデータ」はまったく示されなかった。口ごもる場面もあり、意図が読み取れない言葉もあった。

「まず日本に来る外国人の選手・関係者については、PCR検査もしっかりやって、ワクチンもうっている。そうした中で、例えば、メディアの方についても完全に隔離して行動できるような体制をとっておりますので、そこはしっかり行っていくということです。それと、人流でありますけれども、先ほど申し上げましたように、例えば、まん延防止措置が解除された後も一定の厳しい人数に抑える」

「そういう中で、いわゆる5団体、東京都と組織委員会と国とIOC、IPCで、いま、国内で行われていることと同様の決定をする会合が開かれることになっています。いまの国内と、状況は同じだと思ってます」

「それと同時に、プロ野球とか、Jリーグは、ずっと人数を入れながら今日まで来てます。そしてクラスターはほとんど発生しないわけですから、そうしたことも参考しながら、しっかりやっていく」

「それと同時に、ワクチン接種も予定通り順調に進んでおります。先ほど申し上げましたけど、昨日は東京で65歳以上の方(*感染者)は、501人のうち33人。極めて低い状況にもなってきてます。こうしたことも、しっかりですね、ワクチン接種、拍車をかけていきたい。このように思って、感染リスクを低減しながら進めていきたいと思います」

五輪開催「私が責任」

また、海外メディアの記者からは、ワクチンや隔離、行動制限では100%の安全性を確保できないのではないかとの指摘もあった。

この記者は「感染拡大のリスクや死者が出るリスクがあっても開催することは大丈夫だと思っていますか?その理由は何ですか。ノーと言えないからなのか、プライドなのか、経済的理由なのか」と首相に問うた。

菅首相は「ノーも、プライドも、経済でもありません」と語気を強め、こう述べた。

「日本においてはしっかり、外国から来られた方に感染対策を講じることができるからであります。選手をはじめ関係者の皆様は、ワクチンをうってこられます。そうした人たちも日本に入る前に2回、PCR検査をし、入国時に検査、それから3日間、また選手は毎日検査をします。それだけ厳しい対応するということが一つです」

「それと同時に、メディアの方です。メディアの方は、一つの貸し切りのホテルに入っていただく。そこで組織委員会で、そのメディアの人たちを対応する職員によって……。さらに移動については、車両で移動する。その車両の運転手についてもワクチンを接種して、心配のないような形、あるいはアクリル板で運転手と客席を離す。そういう対応をしっかりやります」

「これについて守れない人は国外退去をしてもらいます。そうしたことをしっかりやりますから、海外から来られた方のリスクは非常に少ないと、このように思います」

一方、「日本の国内でオリンピックが開かれるということは、内閣総理大臣の責任において開催されるのか。そうではない場合、誰の責任で開かれるのか」という質問もあった。首相はこう答えた。

「オリンピックですけども、東京都、組織委員会、そして国、IOC、IPC。この5者で、全体を見て相談しながら進めているわけでありますけども、最終決定はIOCにありますけれども、日本国民の安全安心、命と健康を守るのはこれは内閣総理大臣として私の仕事ですから、そこは私が責任持って、行う。そういうことであります」