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菅首相の目の前で… 尾身会長が次の政権に求めた「3つ」のこと

尾身会長は会見で、菅政権について「現政権には本当にいろんな対策を打っていただいた」と総括。次の政権に「現政権が築いていただいた基礎をさらに発展させていただければ」と、「3つのお願い」を明かした。

政府は9月9日、東京や大阪など19都道府県について、「緊急事態宣言」を30日まで延長することを決定した。

これを受け、菅義偉首相は9月9日、会見を開いた。次期総裁選への不出馬を表明してから最初の会見ということもあり、「退任」に関する質問も相次いだ。

会見に同席した政府分科会の尾身茂会長は日本の新型コロナ対策が、「新しいフェーズ」に入っていると強調。次期政権に対する「お願い」も忘れなかった。

尾身会長は会見で、菅政権について「現政権には本当にいろんな対策を打っていただいた」と総括。

以下のように述べながら、次の政権に「現政権が築いていただいた基礎をさらに発展させていただければ」と、「3つのお願い」を明かした。

「ワクチンの接種率が非常に順調に進んでるということと、それから新しい抗体カクテル療法が出てきたということで、私は今、新しいフェーズに入っていると思います」

(1)ワクチン接種の推進と3回目の「ブースター接種」

「若い年代層への推進ということはもとより、これから地域の感染が少しずつ減っていくなかで、リバウンドを防ぐため、感染が残るスポットに集中的にワクチンをやっていただきたい」

「このワクチンは非常に優れているが、少しずつ免疫力が落ちるということもだいたいわかってきてますので、ブースター接種についても、次政権については今から検討いただきたい」

(2)高齢者と基礎疾患のある人への早期検査と早期治療

「今はもう医療の逼迫を防ぐということが最終課題。そういう意味では高齢者や基礎疾患のある人に対する早期検査と早期治療というのをぜひお願いしたい」

「これまでは軽症者に対する治療もなかったので、具合は悪くてもすぐに検査をするというインセンティブはなかった。今回、特に軽症者にも有効な抗体カクテル療法が出てきたので、新しい政権には、この早期検査・早期治療ができるための仕組みをぜひ早期に作っていただければ」

(3)「ワクチン検査パッケージ」の議論

「ワクチン・検査パッケージというものに対しては、国民が多くの方々が関心を示していると思いますので、我々が申し上げたワクチン・検査パッケージの運用については、できるだけ早く国民的な議論を進めていただければ」

*政府分科会はワクチン接種済みであることが検査の陰性証明などを提示すれば行動制限を緩和する仕組み「ワクチン・検査パッケージ」を県境を越える旅行やイベント、対面授業や会食などで活用していくことを提言している。

縦割り行政をめぐる課題も

また、菅首相が会見で、厚労省や自治体などの「縦割り」を緊急時の課題としてあげたことに関連し、記者から「課題と、あるべき組織のあり方」についての質問もあがった。

尾身会長は「私自身が専門家として感じたこと」としながら、以下のような見解を示した。

「ワクチン接種というものについては、総理のリーダーシップでかなり進みましたよね。ところが感染対策の1丁目一番地である疫学情報の自治体間、あるいは自治体と国との共有や、保健所の機能の強化あるいは検査のキャパシティの強化などについては、様々な問題があった」

「政府はこの問題を十分認識していたのだけれども、それを解決するための責任の所在というのが少し私は曖昧であったんだというふうに思います。たとえば疫学情報の共有というのも、単に医学的なことじゃないだけじゃなくて、地方分権の問題、国と地方のあり方、あるいは個人情報の問題など、これは単に一つの問題だけを解決するというようなことは難しい」

また、「広い観点での深い分析が必要」としながら、緊急時の専門家のあり方についても「ロスター」(専門家登録システム)と呼ばれる仕組みが必要であるとの見解を示した。

「日本ではある特定の研究テーマについて、研究費を出して、時間をかけて分析するというシステムは非常に優れたものがありますが、こういう危機の状況で新たな直面する課題について短期間で多様な専門家が集まるような仕組みが少し不十分だったと思います」

「政府内にコアの専門家というのは当然必要ですが、これから求められるのは、ロスターと言われる、非常時にあらかじめ任命をしていた専門家集団がすぐに集まって、政府あるいは総理に助言するという仕組み。行政がこの経験をして学んだことで、作るべきではないか」


(サムネイル:時事通信、8月25日撮影)