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DHC、会長の差別発言で一部自治体に謝罪、イオンには「不適切」と撤回表明。公式見解を求める声も

DHCサイト上に掲載されていた在日コリアンに対する差別的なメッセージは5月31日までに削除された。この問題をめぐっては、包括連携協定を解除する自治体が複数出たほか、日本テレビがCM枠の販売を取りやめていた。

化粧品販売大手DHCの吉田嘉明会長が、サイト上に在日コリアンに対する差別的なメッセージを繰り返し載せていた問題。

提携する自治体や取引先などからの批判の声があがる中、DHC側はサイトから会長の文書を削除したが、この件をめぐり、一部自治体に謝罪していたことがBuzzFeed Newsの取材でわかった。

また、取引先の流通大手イオンに対しても、「不適切な内容を含む文章が掲載されていたことについての非を認め」たという。

一方、同社は文書の内容や削除に関して、消費者やメディアに対して公式な説明をしていない。社としての見解を求める声もあがっている。

吉田会長に批判が集まるきっかけとなったのは、DHC公式オンライショップのサイトにある「ヤケクソくじについて」というコーナー。2020年11月から、ここに吉田会長名義の文書が3回、アップされた。

ライバル企業であるサントリーについて、「チョントリーと揶揄されている」などと記していたほか、「日本の中枢を担っている人たちの大半が今やコリアン系で占められている」などと、在日コリアンに対して差別的な表現が多数見られており、批判を集めていた。

サントリーに関する文書は5月21日までに削除され、ほかの2つの文書についても5月31日までに削除された。「2021年5月末をもってヤケクソくじの配布を終了致しました。くじのリニューアルを予定しておりますのでご期待下さい」だけと記されており、文書削除についての説明は記されていない。

この問題をめぐっては、包括連携協定を解除する自治体が複数出たほか、日本テレビがCM枠の販売を取りやめていた。

また、取引先である32社のうち、JR西日本が「事態を憂慮」と伝えるなど7社が何らかの対応をとったことが、NPO法人「多民族共生人権教育センター」(大阪市)などの調査で明らかになった。

なかでも、同社に説明を求めるとともに、「容認するとすれば、相容れないこと」と伝えていた流通大手イオンは6月2日、DHC側に以下のような「確認」が取れたとして、取引を継続する方針を発表した。

・本年5月31日に削除するまでの間、同社ホームページに人権に関わる不適切な内容を含む文章が掲載されていたことについての非を認め、当該発言を撤回すること

・同社が今後同様の行為を繰り返さないこと

イオンはこの「確認」を経て、「差別を一切行いません」などとする同社の人権基本方針に対し、DHCが「ご賛同、ご理解いただいたものと判断」したとしている。

一部自治体に「謝罪」も

自治体の間には、同社との包括連携協定を解消する動きも出ている。

「ヘイト発言はあってはならないこと」(高知県南国市)「発言は容認できるものではない」(熊本県合志市)のほか、高知県宿毛市も同様に解消手続きを進めている。

茨城県下妻市は、今年度の健康関連事業を中止。同社の見解によっては、協定解消を検討すると伝える方針だ。

菊池博市長は定例会見で「市の人権尊重に関する取り組みに沿うものではなく、大変遺憾」としながら、削除についても、以下のように苦言を呈した(茨城新聞、6月2日)。

「問題となっていた文章は削除されたが、企業としての公式な見解は表明されていない」

「今後、企業としての公式見解が出され、その内容が包括連携協定のパートナーとして容認できるものでない限り、協定継続は大変難しい」

また、「一連の文書について、DHC側からの説明が十分ではなかった」ことなどを理由に、同社商品をふるさと納税の返礼品から取り消したさいたま市も、削除を受けた対応は検討していないという。

今回の削除について、担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「文書はくじが終了になったことを受け、なくなったものと認識しています。DHC側からも説明はありませんでした」と話す。

一方、神奈川県松田町の本山博幸町長は神奈川新聞の取材に対し、「削除しない場合は協定の解除も考えた」としながら、「会長も反省していると説明を受けている」として、協定を継続する方針を示した。

BuzzFeed Newsの取材に対し、松田町の担当者は「5月中旬に対応を求めていたところ6月1日に、会長の文書の件で問い合わせがあるなど負担を欠けたことに対し、申し訳ございませんと謝罪する旨のメールが届きました」と明らかにした。

メールでは差別や発言内容については直接触れていなかったというが、「一定の反省があったものと町としては受け止めている」としている。

本社前では抗議も

東京都港区のDHC本社前には6月3日夜、市民ら100人以上が集まり、「差別をするDHCの商品は買いません」「Boycott DHC」などとプラカードを掲げ、サイレントで抗議の意思を示した。

主催をしたのは、同社の子会社である「DHCテレビ」が制作していた番組「ニュース女子」をめぐる問題に抗議を続けてきた団体だ。本社前で抗議を開くのは初めてだという。

文書が削除された一方、会社としては批判や抗議などに一切の回答がなされていないことから、会社としての公式見解を出すよう求めている。

呼びかけ人のひとりの川名真理さんは「一連の問題を本当に差別であると認識しているのか、なぜ止められなかったのか、今度どう改めるのか、きちんと表明してもらいたい」と語った。

「DHCだけの問題ではなく、その発言を許してしまう社会の問題でもある。一部の自治体や社会的責任のある企業から真っ当な声がようやく出てきたが、ほかのところも勇気を出して声をあげてもらいたい」

ひとりで抗議に参加していた都内の男子大学生(21)は、「差別は当事者を傷つけるだけではなく、人権の問題でもある。DHCは社の体質を少しでも改善してほしいし、いままで発言が許されてきた社会を変える機会になれば」と話した。