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ワクチン接種、妊娠中はどうする?子どもはどうなる?「流産」「不妊」の誤情報に注意、学会の見解は

新型コロナウイルスのワクチンは、健康な子どもへの接種は必要なのか?妊娠中は安全なのか?そして、妊娠を予定している場合は……? 「不妊」や「流産」に関する誤情報も流れるなか、学会が発表した情報をまとめました。

国内でも本格的な接種が進んでいる、新型コロナウイルスのワクチン。高齢者だけではなく、12歳以上の子どもを含む若年層への接種もはじまっている。

こうしたなか、日本産科婦人科学会と日本小児科学会がそれぞれ、ワクチン接種に関する考え方を相次いで発表した。

子どもや妊娠中、妊娠を希望する場合の接種に関する情報をまとめた。

子どもはどうする?

日本では5月31日に、12 歳以上の子どもに対するワクチン接種が承認された。これを受け、日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会は6月16日に見解を発表。

「重篤な基礎疾患のある子どもへの接種」については、「重症化が危惧されますので、ワクチン接種がそれを防ぐことが期待されます」と接種を推奨。

「本人の健康状況をよく把握している主治医と養育者との間で、接種後の体調管理等を事前に相談することが望ましい」とも述べた。

一方、「健康な子どもへの接種」についても、「多くは軽症ですが、まれながら重症化することがありますし、同居する高齢者の方がいる場合には感染を広げる可能性もあります」として、「意義がある」と強調した。

副反応については、「国内では小児に対するワクチン接種後の副反応に関する情報はありません」とながら、医療従事者2万人への重点調査結果から、(1)接種部位の疼痛等の出現頻度が高い(2)若年者の方が高齢者より接種後に発熱、全身倦怠感、頭痛等の全身反応を認める割合が高いーーことに言及。

子どもに対しては、「慎重に実施されること」「メリットとデメリットを本人と養育者が十分に理解していること」「細かな対応を行うこと」を前提にした個別接種ができれば望ましいとしている。

また、「接種を希望しない子どもと養育者に対しては、特別扱いされないような十分な配慮が必要」とも注意喚起した。

妊娠している場合は?

一方、日本産科婦人科学会、産婦人科医会、産婦人科感染症学会は6月17日に見解を発表。「希望する妊婦さんはワクチンを接種することができます」とした。

ワクチンについては、「妊娠初期を含め妊婦さんとおなかの赤ちゃん双方を守るとされています。また、お母さんや赤ちゃんに何らかの重篤な合併症が発生したとする報告もありません」と強調。

「妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、特に後期の感染ではわずかですが重症化しやすい」「ワクチンを接種することのメリットが、デメリットを上回ると考えられています」として、以下のケースに該当する場合は「ぜひ接種をご検討ください」と求めた。

・特に感染の多い地域や感染のリスクの高い医療従事者等

・糖尿病、高血圧、気管支喘息などの基礎疾患を合併している

副反応については一般人と差がないとしたうえで、「発熱した場合には早めに解熱剤を服用するように」「アセトアミノフェンは内服していただいて問題ありませんので頭痛がある場合も内服してください」とした。

そのうえで、接種については事前に妊婦健診先のかかりつけ医に相談するようにも求めている。

なお、「ワクチンをうつと流産しやすくなる」などとする誤情報もネットでは一部拡散しているが、海外の追跡調査からは、接種後の流産率は一般より高くなく、接種が流産を起こすことはないということも明らかになっている。

アメリカではすでに妊娠中の人が10万人近くワクチンを接種している。接種後の追跡調査に基づいた報告(医学誌 New England Journal of Medicine、2021年4月21日発表)によると、ワクチンが妊娠に悪影響を及ぼすという結果は出されなかった。

妊娠を希望する場合は? 妊娠初期は…?

流産と同様、「ワクチンをうつと不妊症になる」という誤情報も一部で広がっているが、ファイザー・ビオンテック社やモデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンの大規模臨床試験でも、「妊娠に影響しないことを示すデータ」が出ている

また、ワクチンと妊娠の関係については、日本産婦人科感染症学会と産科婦⼈科学会が「ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅へ」という文書(5月12日更新)を出している。

文書では、「世界的な流行拡大と妊婦の一部で重症化することから積極的に接種をすべきという考え方が大勢を占めています」と各国の例を紹介。以下のように不妊についても言及している。

「COVID-19 mRNA ワクチンの生殖に関する研究はまだ完了していませんが、現時点で胎児や胎盤に毒性があるとかワクチン接種を受けた人が不妊になるといった報告はありません」

そのうえで、「中・長期的な副反応や胎児および出生児への安全性に関しては今後の情報収集が必要である」としつつ、「現時点では世界的に接種のメリットがリスクを上回る」「妊婦をワクチン接種対象から除外しない。特に人口当たりの感染者が多い地域では積極的な接種を考慮する」などとも指摘。

偶発的な異常と接種の関連性に関する混乱が起きることを防ぐために、「器官形成期(妊娠12週まで)は避ける」とし、「妊娠を希望される女性は、可能であれば妊娠する前に接種を受けるように」「患者さん一人一人の背景が違いますので、まずは産婦人科の主治医と十分にご相談ください」と呼びかけた。

UPDATE

厚労省は「妊娠12週までは接種を避けていただく」とする文章をウェブサイトのQ&Aから削除しました。現在は「妊娠中のいつの時期でも接種可能」と記載しています。