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「隠蔽の意図はなかった」立憲のネットメディアへの支援で“調査結果” 福山氏の「幹事長判断」も処分はせず

約1500万円の資金は、新・旧立憲民主党の政治資金収支報告書に「動画制作費」「企画広報費」として記されている。いずれも大手広告代理店に対する支払いとされている。

SNSやYoutubeなどインターネット上で動画配信などの活動を続けている「Choose Life Project」(CLP)が一時、立憲民主党から「支援」として資金提供を受けていた問題。

立憲の西村智奈美幹事長が1月12日、記者会見を開き調査結果を発表した。「公党として適切ではなかった」としつつ、具体的な資金の流れなどについては民間の取引であることなどを理由にコメントしなかった

CLPと福山哲郎・前幹事長の発表によると、CLPは2020年3月からクラウドファンディングで運営資金をまかなえるようになるまでの間、立憲民主党から「番組制作費」の名目で広告代理店や制作会社を通じて約1500万円を受け取り、多い時には毎月20本以上の映像を制作したという。

福山・前幹事長は「フェイクニュースに対抗するメディアの理念に共感したため、広告代理店と制作会社を通じて番組制作を支援した」などと説明。立憲側からの番組内容への関与や介入については、立憲・CLPの双方が否定している。

一方、立憲の西村智奈美幹事長は定例会見で調査結果を発表した。当時の決裁資料を確認したほか、福山・前幹事長と党事務局に聞き取り調査をしたという。

経緯についてはCLPと福山氏のコメントと「同内容である」とし、いずれも、広告代理店からの請求を受けて4回にわたり支払われたものだったと明らかにした。7月にCLPが法人化し、クラウドファンディングが開始されたことから、協議のうえ支援を終了したという。

この支出は旧立憲民主党で決定された、福山前幹事長による「幹事長判断」だったとしつつ、処分については否定。そのうえで、以下の3点から「違法ではないものの公党として適切ではなかった」と述べた。

  • 特定のメディアに資金を提供したにもかかわらず、そのことを公表せず、出どころを隠していたのではないかという疑念を持たれる
  • 特定のメディアに党が資金を提供することが、適切であるかどうか、議論がある
  • 立憲とCLP両者において、公党からの支援が適切であるかどうか、支援開始時あるいはCLPが「公共メディア」をつくるという理念をまとめた際に組織として議論・検討した形跡がない


隠蔽の意図はなかった

西村幹事長は「CLPに関わったジャーナリストをはじめとする多くの方々、国民の皆様に疑念を与える結果となったことは、反省すべき点と存じております」とコメント。「限られた予算を特定のメディアに支援するというのは、現執行部としては共感し難い」とも述べた。

資金の流れについては、「他の広報案件と同様に代理店や制作会社を通じて提供することとしたもので、隠蔽の意図などはなかったと説明を受けているが、結果として資金の流れの妥当性を検討できなくなっていたという問題はあった」と説明。支援を決めた際、「公にしない」という取り決めはなかったという。

なお、新体制になってからは類似の事案は存在しておらず、それ以前についても「確認作業を進めているが、類似支出があったという調査結果は出ていない」とした。

今後は支出の妥当性のチェック体制や党内ガバナンス機能の強化を図り、「資金の使途だけではなく、メディアとの適切な距離感を保ち、疑念を抱かれることのないように努めて、類似事案が発生しないようにする」と話した。第三者委員会の設置は否定している。

Dappi問題への見解は

ネットと政治を巡っては、不正確な情報発信や誹謗中傷などが批判されていたTwitterアカウント「Dappi」が問題となっている。

立憲民主党の参院議員2人は、「Dappi」の発信元回線を契約していたネット企業を提訴。また、2021年秋の参院本会議の代表質問では、立憲の森ゆうこ副代表が岸田文雄首相に直接、見解を問いただしていた。

西村幹事長は会見でこの点を問われ、Dappiについて「議員に対する違法な誹謗中傷発言をしていたツイッターアカウント」と指摘。「(CLPは)違法な誹謗中傷はなく、世論操作とも無関係で事案としては異なるもの」と答えた。

一方で、「メディアと政党あるいは政治団体の関係性が、どういったものが適切であるのかということについては、もう少し議論をする必要があるのではないかと思っております」とも述べた。

また、ネット上では、学生団体「SEALDs」の元メンバーが関わる広告・制作会社に対する立憲の支出と、今回のCLPの一件を結びつけた指摘なども拡散されたが、この企業については「CLPとは関係なく、党が行う広報活動や企画などの発注先のひとつ」と説明。

「今後につきましては、新体制に対することで、費用の支出も含めて、適切な広報のあり方を推進していきたいと考えております」と語った。