多数の民間人が殺害された町。ゼレンスキー氏の「表情がすべてを物語っている」と写真に注目。

ウクライナ検察庁は410人の遺体が確認されたと発表したほか、市内にある教会の敷地に遺体が埋葬されたとも伝えられている。ロシア側は「でっち上げ」「ウクライナ側の犯行」「遺体が動いた」などと主張している。

ロシア軍が撤退したウクライナの首都・キーウ近郊のブチャで、多数の市民の遺体が見つかった事件。

AFP=時事

現地入りした多くのメディアがその凄惨な実情を伝えるなか、「虐殺」であるとして、国際的な非難が高まっている。

4月4日にはゼレンスキー大統領がブチャを視察。その様子を撮影した写真に注目が集まっている。

（閲覧注意：この記事には、戦争の実態を伝えるため、犠牲者の写真が含まれます）

いったい、何が起きたのか？

Maxar / DigitalGlobe / Getty Images

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ（HRW）は4月3日、ロシア占領地域で戦争犯罪が起きている、と報告書を発表。

目撃者の証言をもとに、ブチャなど各地で、ロシア軍兵士による市民の「処刑」やレイプ、子どもの殺害などが相次いだとした。

また、ブチャに現地入りした欧米メディアも、通りに遺体が散乱している様子などを撮影している。

ウクライナ検察庁は410人の遺体が確認されたと発表したほか、市内にある教会の敷地に多数の遺体が埋葬されたとも伝えられている。

この「共同墓地」については、米マクサーテクノロジーズが衛星写真を公開した（上）。

ロシア側は「でっち上げ」と主張

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Sopa Images / SOPA Images/LightRocket via Getty Images

こうした事態に対し、ゼレンスキー大統領は「ロシアの戦争犯罪を止めるためにあらゆる手を打つ時だ。関与した全ての人間は特定され、処罰を受ける」とする声明を発表。

一方のロシア側は「でっち上げ」「死体が動いた」「ウクライナ側の犯行」などと主張しているが、日本政府をはじめ、国際社会の非難は高まっている。

なお、米紙ニューヨークタイムズも衛星写真を検証。衛星画像を日ごとに比較し、ロシア軍の占領下で遺体が日に日に増えていく様子を明らかにし、ロシア側の主張を否定した。

また、写真などにうつる遺体が「死後硬直していない」ことからウクライナ側の自作自演を主張するロシア国防省の発信については、BuzzFeed Newsの取材に応じた法医学者が疑問符を投げかけている。

ゼレンスキー大統領「動物よりひどく…」

AFP=時事

ゼレンスキー大統領は4日にブチャを訪問。記者の取材に応じた際の写真は、「表情がすべてを物語っている」としてTwitterで拡散した。

BBCによると、ゼレンスキー大統領は報道陣に対して「人々を動物よりひどく扱った」「本当のジェノサイド（虐殺）だ」などと語ったという。

また、ブチャ訪問後にはFacebookで「できる限り早く日常を取り戻すために最善を尽くす」と呼びかけ、4月5日には改めて以下の声明を発表している。

「誰が仲間の市民を殺害したのか。誰が命令を下したのか。誰が、殺人を見てみぬふりをしているのか。ロシアのすべての人々が、すべての真実を学ぶときが来る」

「私たちはこれらすべてを確立し、世界に知らしめる。いまは2022年だ。ナチスが訴追された第二次世界大戦のときよりも、多くのツールがある」

国連安全保障理事会は同日（ニューヨーク時間）に、会合を開いてウクライナでの市民殺害問題を協議する。

ウクライナのゼレンスキー大統領、グテーレス国連事務総長も演説する予定だ。一方でロシアは同国軍の関与を否定する証拠を提出する構えだ。