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「このままじゃ公教育は破綻する」ブラック勤務の実態、非正規教員の叫び

休む暇は、ほとんどなかった。

公立小中学校における正規教員の不足を補うため、低待遇で同じ働きを強いられている非正規教員。雇用の不安定さや横行する長時間労働など、課題は多い。

一体、現場では何が起きているのか。元非正規教員が、その実情を吐露した。

「このままだとこの国の公教育は、破綻してしまうのではないでしょうか」

そうBuzzFeed Newsの取材に語るのは、福岡県内の小学校で非正規教員として働いていた30代の男性だ。

「雇用が不安定で労働状況も厳しく、精神的にもずっと、しんどかった。日々を振り返れないほど忙しいんです。次から次に仕事を消化せざるを得なかった」

非正規教員とは、非常勤講師や常勤講師として働く教員のことだ。教員免許は持っているものの、都道府県や市の教員採用試験に受かっていない。

クラスの担任を受け持つなど、正規の教員と仕事の内容は同じなのに、給与などの待遇は低い。雇用期間は最長1年で、短期雇用が繰り返され、安定しているとも言えない。

9年間にわたり小学校での非正規教員を続けてきたこの男性の場合も、それは同じだ。

「基本的に1年単位で仕事をするんです。それに合わせて物事を見るので、長期的なビジョンを持つことはできませんでしたね。毎年、働く学校が変わっている時期もありました」

契約が終わったとしても、次年度に働く場所の保証はない。「無職」の期間が生まれてしまうことも、めずらしくはなかった。

「毎年3月になると、登録用紙に必要事項を書いて、県教委に送って連絡を待つんです。学校側からすぐ連絡が来る時もあれば、5~6月にならないとこないこともありました」

「文字通り無職になってしまうんですよね。不安も大きかったです。仕事のない期間は、採用試験の勉強などに充てていました」

過労死ラインを超えているのに…

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大学を卒業し、教員採用試験に受からなかったため、非正規として働き始めた。当初の仕事は、ほとんどが非常勤講師だった。

コマごとの授業を受け持つパートタイムの仕事だ。月収は13万~15万円ほど。

「生活するのは、つらかったですね」

ある程度経験を踏み、常勤教師の依頼も受けるようになった。担任を請け負えば、年収は300万円ほどになる。

それでも「お金と労働は見合っていない」と感じていたという。

「これは非正規、正規関係のない話だと思いますが、実際働いている時間と給料がまったく、釣り合っていないんです」

そもそも、教員は基本的に残業代がつかない。代わりに支払われているのは、給料の4%を上乗せした「教職調整額」だけだ。

男性の場合、担任を受け持っていたころは毎朝、8時前に学校に行く。授業の準備をし、「昼間は子どものことにかかりっきり」だ。

グラウンドの整備や次の日の準備などを経て、夜7~8時に帰れれば早い方だ。保護者の対応などが重なって夜9〜10時になることは、当たり前だった。

「そもそも、休む暇が一切ないんです。昼休みだって基本的には休めない。給食指導がありますから。なんとか食べ終わっても、次の授業の準備をしたり、運動場で子どもと一緒に遊んだりするから、休めません」

平均してみれば、毎日12時間以上働いていることになる。時間外労働時間が、過労死ラインとされている80時間を超える計算だ。

「土日なんかに市が開く催し物などにも、ほぼ強制的に参加させられたりして……。夏休みや冬休みの長期休業期間には、校外学習やキャンプの引率、研修や出張が詰め込まれます。それ以外にも、自分自身の試験勉強も必要で。体力的には厳しかったですね」

男性のような過重労働は、決して珍しいことではない。

文部科学省が2016年度に実施した「教員勤務実態調査」によると、時間外労働時間が80時間以上の教員は小学校で33.5%、中学校で57.7%だった。

無給状態で働くことも

なかでも学期末の忙しさは、尋常ではないものがあった。なぜなら、成績をつけないといけないからだ。

「特に文章で評価する『所見』はすごく時間がかかりましたね。保護者から説明を求められたら答えられるようにしないといけませんし、いい加減にはできない。」

「1クラスが35人を超えると、その作業はすごく大変で。1人1人の特徴を考えて、文章で書かないといけないのは辛かったです」

修了式直前は、毎日夜遅くまで残業していた。

「土日も出ないと、とてもじゃないと間に合いませんでした。中学で部活を持っている非正規の人たちは、もっともっと、大変だと思います」

年度末にはさらに、次年度の学級編成や、出席日数や評価を通信簿と別に記録する「児童要録」の作成が重なった。

「常勤講師だった間は、4月2日から翌年3月26日までという契約でした。それでも仕事は終わりません。契約期間を超えて、働かないといけないんです。つまり無給状態です。こうしたやり方は、常態化していました」

来年度から、道徳教育が評価基準に入ることにも、危惧を覚えるという。

「道徳も、文章評価ですよ。ニュースで聞いたときに、学期末はさらに大変になるんだろうなあと思いました。現場はこれ以上疲弊してしまう。地方とか、1クラスあたり40人近い生徒がいる場合、倒れる先生も出てくるかもしれない」

教員不足と労働環境の悪化

男性が指摘するような教員の労働環境悪化の背景には、そもそも人が足りていない、という現状がある。

毎日新聞によると、2017年度当初で全国で少なくとも357人が不足しているという。男性はいう。

「このような働き方って、魅力的に見えないですよね。教員になろうとうする人って、いなくなるんじゃないんでしょうか……。よほどじゃないと、選ぶ人はいないと思います」

実際、小学校教員の採用試験倍率はここ10年で4.6倍から3.6倍に、中学校は9.8倍から7.1倍に下がっている。

人が足りず、労働環境は悪化し、志望者が減り、さらに人が足りなくなる、という負のスパイラルが、そこにはある。

しわ寄せは非正規教員に

正規教員の不足を支えるのは、誰か。それはやはり、男性のような非正規教員たちだ。

読売新聞によると、非正規教員の割合は全公立小中学校教員の7%、約4万人にのぼる。不安定な条件下、雇用の調整弁のように扱われている非正規教員たちは、少なくないのだ。

3年前、男性は教師を辞めた。次年度の契約がうまく見つからなくなったからだ。

正規教員を目指し、試験には何度もトライしてきたが叶わなかった。30代になると、試験にもいよいよ通りづらくなるという理由もあった。

「子どもが好きで、やりがいもあったので続けていきたいと思っていたんです。でも、やっぱり自分には向いていないのかなって……。適性がないのかなって、思ってしまって」

取材の最後、男性はこう語った。

「勤めていたときは、こういう働き方が当たり前とだ思っていました。ずっとやっていくしかないのかな、と。いま振り返ってみると、本当にひどい状況だったんですよね」


過労死、長時間労働、ハラスメント、仕事と生活の両立や男女格差……。

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