南米・ブラジルなどで続くアマゾンの森林火災。その焼失面積は四国の大きさを超えた。
そんな中、ネット上では海外や国内の芸能人、フランスのマクロン大統領らが相次いで、この事態の深刻さを自らのSNSで伝えている。
しかし、そうした投稿には注意が必要だーー。なぜなら、それが全て真実であるとは限らないからだ。

「地球の肺」と呼ばれているアマゾンの火災の原因は、人類による熱帯雨林の開発にある。
その勢いは過去最悪のペースで拡大しており、火災の件数は、昨年の同時期と比較すると84%増えているという。このまま続けば将来的な気候変動に深刻なダメージをもたらすおそれがある。
こうした状況を受け、海外セレブたちがこの状況を憂う発信を、自身のTwitterやInstagramで繰り返していた。
その中で、過去の火災の写真や、他国の写真が大量に使い回されていたのだ。
たとえば、俳優のレオナルド・ディカプリオさん(フォロワー3440万人)もその一人だ。8月22日、誤った写真をInstagramに投稿していた。
環境保護活動家で起業家のニック・ローズさん(フォロワー5万7000人)が以下の文言とともにアップした写真をリグラムしたのだ。
「世界の肺が16日にわたって燃えていると考えると恐ろしい。それなのに、メディアは何が起きているのかを報道しない!なぜ?」
写真は16年以上前のもの

AFP通信によると、もともとの写真は写真家のLoren McIntyre氏がアマゾンで撮影したもの。氏は2003年に亡くなっていることから、少なくとも16年以上前の写真だと言える。
ディカプリオさんが引用したローズさんの投稿がそもそも間違えていたことになるが、同じ写真を投稿したのはこの二人だけではない。
実はこの「間違い」は、日本にも波及しているのだ。タレントのローラさん(フォロワー560万人)は8月22日、自身のInstagramに以下のように投稿した。
「昨日はとてもショックをうけました。今ブラジルでは、大規模な山火事が3週間続いています。なのにこの件はほとんどのメディアが取り上げていません」
また、ブルゾンちえみさん(フォロワー56万人)も同日、同じ写真をTwitterに「直接的に、今すぐ私たちに影響はないかもしれないが、
間接的に、必ず、地球全体に、影響を及ぼす災害だ」と投稿していた。
拡散は世界中に広がっていたようだ。歌手のカミラ・カベロさん(フォロワー3860万人)もディカプリオさんの投稿を8月22日にリグラム。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領(フォロワー140万人)も8月23日、同じ写真を自らのInstagramに掲載。G7での議題にあげるよう訴えかけていた。
ここに列挙した投稿に集まった「いいね!」の総数は680万を超える。
森林火災と関係のないものも

このほかにも、複数の過去の写真や、別の火災の写真が拡散している。
たとえばテニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチさん(写真左、フォロワー867万人)や、ウィル・スミスさんの息子のジェイデン・スミスさん(同右、フォロワー1320万人)が投稿した写真は、30年前のものだ。
AFP通信によると、これは1989年6月のアマゾン森林火災の際、写真家のRex Featuresさんが撮影したものだという。
また、ローラさんが引用している別の写真も、世界中で誤用され続けているものだ。
子どもを抱いている猿の写真は、2017年にインドでAvinash Lodhi氏によって撮影されたもの。これに関しては、森林火災との関係はないものだ。
当時の英紙テレグラフによる氏へのインタビューによると、つまずいて倒れた赤ん坊を心配し叫んでいる瞬間を捉えたものだという。
その真偽、見分けるには

こうした誤用は、ほかにも後を立たない。セレブたちがシェアした画像を一般の人たちがさらに引用し、拡散しているケースもあるが、単体で大きく拡散している一般人のツイートやFacebook投稿もあるようだ。
たとえば、日本のTwitterでも「炎から逃げる動物たち」や「炭化したヤギの遺体」などの写真が今回の火災のものとして拡散している。
前者はブラジルで2011年に起きた森林火災のものと、後者はチリ・パタゴニアで2019年3月に起きた森林火災のものとみられる。
「#PrayForAmazonia」「#ActForTheAmazon」などというハッシュタグを用いて、今回の森林火災や環境問題について訴えかけることは、未来のためにも大切なことだ。
しかし、それらの情報が「事実」なのかどうか、一旦立ち止まって考えてみることも、やはり大切なことだろう。
写真はコピーがたやすく、本来の情報にたどり着くことが難しいという性質を持つ。真偽がすぐに判明しないケースも多いため、撮影日などのキャプションなどが付いているものをできるだけ参照することが、「間違えない」ための対策になる。
そのほか、Google画像検索を使って写真そのものがネット上に過去のものなのかを調べる方法もある。