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77歳の元芸者で、シングルマザーの半生と教え。

「芸者になってから、好きな人ができました」。どんな半生を過ごしてきたのか。歳を重ねることをどう思うのか。

歳を重ねることは、ネガティブなことばかりではない。人生において実りあることでもある。そう教えてくれる人たちがいる。

視覚障害者や聴覚障害者の世界を体験するイベントを開いている「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」が主催する「ダイアログ・ウィズ・タイム」。

そのイベントは、70歳以上の高齢者によるアテンドに導かれ、体験者が老いや命について考え、新たな可能性を感じるというものだ。

70代になって、そのアテンドの仕事に挑戦した、せっちゃん(77)。どんな半生を過ごしてきたのか。歳を重ねることをどう思うのか。話を聞いた。

せっちゃんは、花街で三味線の音色を聞きながら育った。夕方になると、美しく着飾った女性たちが道を行き来して、華やかなところだなと印象を持ったという。

小学校6年生になると、自然と芸者に憧れ、自分もなりたいと思っていた。中学を卒業し、日本舞踊、鼓、常磐津などの稽古に励んだ。芸者の見習いである「半玉」になるためだ。

半玉として店で座敷に上がったのは18歳。昼は稽古、夜は仕事の日々を送った。

好きな人との出会いと決心

20歳を過ぎ、半玉を卒業して芸者の道に進むと、人生の転機を迎えた。

「芸者になってから、好きな人ができました」

せっちゃんは少し時間を置いて言う。

「好きな人の子どもができました。そして、私は1人でも自分で子どもを育てられると強い決心を持ち、子どもを産みました。そして、未婚の母になりました」

「でも」と続ける。

「そのときが、私にとってのすごい青春だったと思います。とても楽しかったし、気持ちの面で充実していました」

歳を感じることもある。でも...

その後、和食料理店の接客業を65歳まで続けた。その仕事も辞め、「これからは」と思った時に娘が重い病気を患い、言葉に表せない辛さを味わった。

また、最愛の母を含めて、これまでたくさんの人との永遠の別れをしてきた。

幸せなことも含め、さまざまな経験を積んで今、77歳として生きる。

「私の左目は白内障なんですよ。少し見辛いし、すぐに目が疲れるし、体も疲れがたまりやすくなりました。そうやって歳を感じることもあります」

そう話すせっちゃんはかつて、他人に対して自身の年齢を若く伝えたこともあったという。しかし「今、何歳になりたいですか?」との問いに「今の歳で良いです」とすぐに返す。

シングルマザーとして育てた娘のことを考えれば、娘を産む前に時間を戻してもう一度じっくり考える機会がほしいとも思う。

しかし、娘からの「お母さん、産んでくれてありがとう」の言葉に、その悩みは薄れる。そして、若返りをする他の理由は「何もないです」と笑う。

70歳になって茶道を始めたほか、今は自宅で着付け教室を開くなど、娘と一緒に着物の魅力を伝える活動をしている。毎日違う着物を身にまとうほど、昔から変わらず好きなのだ。

「娘がいるから、今の私がいると思います。今、私は幸せなんですよ」

「そういうのはもうやめようと思って」

歳を重ねること。

それは、人生を歩んだ分だけ、知恵を持つことだと思っている。

「辛いこともあって、初めて楽しいこともある。人生なんだからいろいろありますよ」

「以前は、未来のことばかり考えていました。先の心配はたしかにありますけれど、そういうのはもうやめようと思って。今はその日その日を大事にし始めています」

今年、「ダイアログ・ウィズ・タイム」のアテンドとして、自らの経験を生かせる新たな仕事を得て、生きがいを感じた。来年もまたアテンドをやりたいと考えている。

「何にでも興味を持って、少しでも挑戦をしたいって思える自分がいるんです。そういう考えで歳を重ねていくと、たとえ70代でも、なんて素敵なんだろうって最近思えるの」

「今、楽しいですよ。ボーとしてる時も楽しいし、心のゆとりができたのかしらね。今日1日ありがとう、と思って、毎日ベッドの中で休みます」

77歳のせっちゃんが、今を一番楽しむ方法を教えてくれました。 ▶️元舞妓さんでシングルマザー。77歳のせっちゃんが教えてくれること

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昨日も、きょうも、これからも。ずっと付き合う「からだ」のことだから、みんなで悩みを分け合えたら、毎日がもっと楽しくなるかもしれない。

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10月1日から10月11日の国際ガールズ・デー(International Day of the Girl Child)まで、こちらのページで特集を実施します。