同性婚の法制化を求め、全国13組の同性カップルが2月14日、国を相手取って一斉提訴した。
この動きをきっかけに、ネット上には「今の社会のままで問題ないのでは?」など、さまざまな質問があがっている。

弁護団は報道関係者向けに「よくある質問」として回答を用意。
それらは、原告らがどうして提訴する必要があるとするのかがわかり、疑問を少しでも解消する一助となる。
1.「パートナーシップ制度」でいいのではないか

「結婚ができなくても、パートナーシップ制度を導入する自治体が増えている。それで十分ではないか」。よくある疑問の一つだ。
パートナーシップ制度は、自治体が同性カップルの関係性を承認するもの。
それによって、カップルの絆が深まったり、対外的にカップルとして受け入れられやすくなったりする効果が期待できる。
ただし、弁護団は「結婚によって生じる法的権利や義務は一切得られない」と違いを説明し、結婚とは「まったく別のもの」と指摘する。

たとえば、結婚しなければ、所得税や住民税の配偶者控除、相続税の優遇措置を得られない。
また、日本人と外国人の異性カップルなら、外国人パートナーは「日本人の配偶者等」という在留資格を取得でき、長期間にわたって日本に滞在できる。
一方で、同性同士なら、外国人パートナーが強制的に本国に帰国させられてしまうことだってある。
さらに、同性のパートナーが意識不明の状態で救急搬送された場合には、 面会や病状説明を拒否されることもある。手術など医療行為が必要な緊急時にも、病院が同意を認めないのが一般的だ。
自治体によるパートナーシップ制度で、解決することもある。ただし、弁護団は、全ての「困りごとを根本的に解決するためには、性別を問わず結婚ができるようになることが必要」との考えだ。

であるならば、「国が結婚と同じ効果を持つパートナーシップ制度を導入すれば良い」との意見にも、弁護団は反論する。
「制度が違うということ自体が、同性カップルを差別するものであるという問題があります」
これら以外にも、結婚で得られる様々なメリットがある。だからこそ、同性婚の法制化を切実な願いとして訴える人たちは多い。
2.結婚は子どもを産み育てるための制度ではないのか

法律上、子どもを作らなければ、結婚できないというルールはない、と弁護団は解説する。
本来、結婚制度とは、当事者2人が幸せに暮らす権利を守るための制度。それゆえ、弁護団は「子どもを作れない同性カップルの結婚を否定する理由にはならない」との見解を示す。
3.日本は同性愛に寛容だから、今のままで問題ないのでは?

日本は伝統的に同性愛に寛容であるか。
弁護団は、その言説が正しいかは別にして、「同性愛に寛容な社会であるからといって、同性婚を認める必要がないとはならない」と言う。
そもそも、同性婚を認めるべきかは、文化の問題ではなく、「人権の問題」。
結婚の自由は基本的な権利であり、誰であっても平等に認めなければならない、と指摘し、こう結論づける。
「伝統や文化を理由にこれを否定することはできません」
4.なぜいま訴訟を提起するのか

世界では同性カップルの法的保護を実現する国々があり、国内でもパートナーシップ制度を導入する自治体が増えている。
そうして、当事者たちを取り巻く状況は少しずつ改善しており、弁護団は「ようやくいま、同性婚を求める段階にたどり着いた」と述べる。
一方で、日本では、同性愛は差別と偏見の対象となり、いまでもその被害があることは否定できない、と強調する。
そして、「同性婚を望む人たちの利益は日々失われ続けている」と提訴の意義を掲げる。

弁護団は提訴前、BuzzFeed Newsの取材に、こう思いを語っていた。
「同性婚をしたい人の気持ちを尊重し、一歩を踏み出さなければいけない。そうしなければ何も変わりません」
「今でも遅いくらいです。差別や偏見はいまだ残り、もう待てません。いま裁判を起こさない理由はありません」
今回の提訴で、原告らは同性婚が法的に認められないのは、憲法が定める「婚姻の自由」と「法の下の平等」に反すると主張。
この提訴をきっかけに、同性婚の法制化につなげたいと意気込む。

弁護団は、他にも「日本政府は"同性婚は憲法上禁止されている"との見解ではないのか」「同性婚を認めると少子化が進むのではないか」などの質問への回答を持つ。
訴訟のために設立した団体のHPで掲載している。