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Max5799 / Getty Images

”オナニーで死ぬ”は本当なの? 医師は語る「可能性はゼロではない。でも…」

ネット上を駆け巡り、思春期を迎えた子どもたちにも広まった話。何が真実で、何が嘘なのか。

ある日、長時間にわたって自慰行為を数十回繰り返した若い男性が、死亡していた。発見したのは、母親だった。

彼は、性ホルモンの過剰分泌で死んだとされている。

「テクノブレイク」は、長時間のオナニーによって、性ホルモンの過剰分泌を引き起こす症状。時に死を招くという。

これは医学的な定義がされていない、ネット上で生まれた”造語”だ。しかし、話はネット上を駆け巡り、思春期を迎えた子どもたちにも広まった。

私は、十数年前の高校時代に友人から聞いた。「まじで死ぬらしいよ」と。

何が真実で、何が嘘なのか。BuzzFeed Newsは、新宿ライフクリニックの須田隆興院長に話を聞いた。

医師「疑問点が多い」

須田院長は「そうした状態が本当に存在するのか分かりません」とした上で、「疑問点が多い」と否定的な見解を持つ。

着目したのは、自慰行為の回数と死をもたらした「性ホルモンの過剰分泌」の2点。誰がどうやって計測したのか、というのだ。

「研究をするにしても、目的が不明で、医学者や研究機関が関わったとはとても思えません。被験者が集まるとも考えられない」

男性が死亡した話が正しいのであれば、射精の回数、行為の前後での性ホルモンの分泌量の変化を測った人がいることになる。何回射精をしたか、と突然死した人に話を聞けない。その人が残したメモがあったというのだろうか。

さらに、須田院長は、死因とされる性ホルモンの過剰分泌に触れ、こう断言する。

「性行為中の突然死は、医学的に認識されています。しかし、それが起こるとされる理由とは、全くかけ離れたものです」

須田院長の説明はこうだ。

医学的にセックス中の突然死は確認されており、「腹上死」と言われている。セックスは運動や興奮を伴い、血圧と脈拍を上昇させる。それによって、心筋梗塞などを引き起こし、突然死すると報告されている。

つまり、「性ホルモンの過剰分泌」で死亡したわけではない。

では、全国で1年間に何人が死亡しているのか。

須田院長によれば、全ての死亡者が行政・法医解剖はされておらず、死亡時の状況が特定されていないので、正確な死亡者数は知ることができないとする。

研究があまり進んでいない領域で、データは少ない。その上で、須田院長は1999年の文献のデータを紹介する。

さまざまな突然死によって司法・行政解剖された2万1000例のうち、0.19%にあたる39例が腹上死だったという。そのうち、95%が男性で、平均年齢は61.3歳だった。

しかし、誰もがセックスによって腹上死に至るわけではない。

30年間にわたり500例以上の腹上死を目の当たりにしたという元東京都監察医務院院長の上野正彦さんは2005年、データを公表している。

腹上死は、厳密に言えばセックス中の突然死に限らず、行為を終えた数時間後に死亡するケースが多いとした上で報告した。

その死因は、心血管系が56%で、脳血管系が43%、その他が1%だった。心血管系の死者のうち、80%が心筋梗塞や冠状動脈硬化で、15%が心肥大。一方で、脳血管系のうち、60%がくも膜下出血、35%が脳出血だったという。

しかし、誰もがセックスによって腹上死に至るわけではない。死亡するリスクが高いのは、心血管系と脳血管系の疾患を発症した経験がある人、そして、それらにかかりやすいとは知らずに日常生活を送っている人たちだというのだ。

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腹上死は、セックスによる運動や興奮が関わる。だから、須田院長はこう語る。

「道徳的にも、腹上死になるリスクを考えても、婚外性交渉は避けたほうがいいです」

不倫による腹上死に関しては、前に述べた文献にも報告があるという。確認された腹上死39例の75%が、配偶者がいるにもかかわらず別の人とセックスをして起きたというのだ。

「不倫による興奮度や不安感、後ろめたさが、 腹上死を招くリスクを高めると推察されます」

オナニーで、死ぬことはあるのか

セックス中に突然死するのであれば、オナニーでも「可能性はゼロではないと思われます」。これが須田院長の見解だ。

しかし、それは心血管系と脳血管系の疾患を発症しやすい人であり、セックス同様の運動や興奮があるという条件が整えばの話だ。

上野さんが検死した腹上死500例以上のうち、オナニー中の急死も8%含まれているとしている。

テクノブレイクの定義に疑問は残るが、「オナニーでは死亡しない」とするのは間違っている。

「性行為をしても大丈夫かどうかをしっかりと検証された方が望ましいです」

自分がセックスをすることで、心血管系と脳血管系の疾患を発症するリスクはあるのか、あるのならばセックスをしてもいいのか、人間ドッグなどの検査を受けることが予防につながる。これまで心血管系の疾患を発症していなくても、喫煙者や肥満、高血圧、糖尿病の人は、疾患を招くリスクが高いので、注意をしなくてはいけない。

セックスもオナニーも死亡するリスクはあるようだ。少しでも不安に感じたら、医師に相談するのが望ましい。「テクノブレイク」という造語による恐怖感で、行為ができなくなるほど恐ろしいものはないと思う。


BuzzFeedでは、4月17日から23日までの1週間を「性教育週間」(Sex Education Week)として、性にまつわる様々な記事を配信します。誰にとっても他人事ではないけれど、どこか話しづらい「性」。私たちの記事が対話のきっかけになることを願っています。

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バズフィード・ジャパン ニュース記者

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