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夏の甲子園大会中止会見で語られたこと。各地域での大会は一任、開催延期は検討対象外...。

主催者である朝日新聞社と日本高校野球連盟が会見で語ったのは。

新型コロナウイルスの影響を受け、8月に開催予定だった夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)と、各地で行われる49の地方大会の中止が決まった。

主催者である朝日新聞社と日本高校野球連盟が5月20日、発表した。

この日の会見で、主催者は「苦渋の決断」と言葉を重ね、開催の延期は「選択肢になかった」と語った。

開催中止の最大の理由は、選手や学校関係者、観客などの感染リスクを「完全な形で抑えるのが難しい」というものだった。

全国大会では、選手や関係者らが長時間かけて甲子園球場に移動して球場近くに宿泊。そして、大会後に地元に戻っていくため、感染拡大を招きかねない。

さらに、各都道府県では休校や部活動の停止を余儀なくされている学校もあり、十分な練習量を確保していない中での試合は、球児の怪我のリスクが高まる。夏休みを短縮して授業時間の確保を考える学校があり、学業に支障をきたす恐れもあるという。

また、例年、医療関係者が球場に常駐するが、新型コロナウイルスに対応する関係者がいる中で、依頼できないと判断した。

さまざまな案を模索したが、「安全を最優先」

日本高野連などは、各都道府県の高野連とも情報交換したうえで、選手を集めないかたちでの抽選会の実施、開会式の中止、無観客試合などにすることによる大会の運営を模索した。

しかし、新型コロナウイルスの収束が見えず、49の代表校がそろう見通しが立たない状況のなかで、開催を断念したという。

大会会長である朝日新聞社の渡辺雅隆社長は「晴れの大舞台を目指す球児の夢を絶ってしまうことは無念でなりません」と語った。

「学校関係者、高校野球ファンの期待に応えられなくて、心苦しく残念に思っています。選手の集大成の場をぎりぎりまで検討してきたが、感染拡大の第二派や第三派を警戒し、安全を最優先に考えたうえでの判断です」

球児の気持ちに配慮し、「断腸の思い」と繰り返したのは、大会副会長の八田英二高野連会長だった。

「現在、練習活動には地域差があり、満足に練習できるチーム、できないチームがわかれる。ベストコンディションで、フェアな条件で試合に臨めるとは言い難いと思いました。大会の中止は、痛恨の極みだと思います」

地方大会は一任、開催延期は検討対象外

今後、高校3年生の「最後の晴れ舞台」としての各地域で大会を開くかどうかは、各地の高野連に一任する。

ただし、全国選手権は中止となったため、仮にある地域で大会が行われて優勝校が決まっても、甲子園でプレーすることにはつながらない。

「選手権大会」という名称を使わない条件になるが、「こうしてほしい、こうしてほしくないという言うつもりはありません」(八田会長)

報道各社からの質問には「開催の延期は考えなかったのか」という質問が出た。

それに対し、八田会長は「楽観的になれなかった」と語り、開催の延期は当初から選択肢にはなかったと説明した。

「全国大会は、学校の夏休み中にしかできません。秋は、新チームが始動し、秋季大会が始まる時期でもある。そのため、検討の対象にはなかったです」

関西大学が5月19日に発表した、宮本勝浩名誉教授の試算によると、夏の甲子園大会が中止になったことで、約672億4415万円の経済的損失になるという。

宮本名誉教授は、「夏の甲子園大会の中止は、すべてのアマチュアスポーツ大会の中で、最高額の損失であると推定される。中止が正式に決定すれば、夏の甲子園を目指してきた高校球児にとっては耐え難いものであり、中止による損失額をはるかに上回る生涯の希望の損失となるであろう」とコメントしている。