稲田防衛相が辞任を否定 会見で繰り返した文言とは

    「人事権者は総理だ。国民生活を守るために全力を尽くしたい」

    稲田朋美防衛大臣は6月30日、記者会見で「誤解を招きかねない発言を撤回し、お詫びを申し上げる」と繰り返し述べた。

    「誤解を招きかねない」というのは、27日に東京都板橋区であった都議選の自民党候補の集会で応援演説したときの発言。

    「ぜひ当選、お願いしたい。
    防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としても、お願いしたいと思っているところだ」

    この発言が、自衛隊を政治利用したと受け取られかねず、物議を醸している。

    この日の会見で稲田氏は、こう述べた。

    「誤解を招きかねない演説であり、撤回・お詫びを申し上げたところだが、この場で改めて、防衛省、自衛隊、防衛大臣の部分は撤回し、お詫び申し上げる」

    報道陣からは「国民はバカだから誤解を招くというのか」と厳しい質問が飛んだ。しかし、稲田氏は同じ釈明を繰り返すだけだった。

    「そんなことはありません。政治的に地位を利用した意図はなく、ご指摘のように誤解を招きかねないことから、発言を撤回し謝罪を申し上げているところです」

    「あくまでも自民党としてお願いするため」

    憲法第15条は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定し、公職選挙法では「公務員が地位を利用して選挙運動をしてはならない」とある。防衛相も例外とはならない。

    また、自衛隊員は自衛隊法で、選挙権の行使を除く政治的行為を制限されている。

    稲田氏の発言が、公職選挙法で禁止される地位を利用して選挙運動をしたことになるのではないか。そう記者団に問われると、稲田氏はこう説明した。

    「防衛大臣としてお願いする意図はなく、あくまでも自民党としてお願いするためだった」

    また、問題の発言について、防衛大臣という「国家機関」が選挙に介入することが「国民主権の否定になる」との憲法学者からの指摘もある。

    大臣辞任は否定、「人事権者は総理だ」

    都議選への影響を聞かれると、稲田氏は「影響が出ないよう、しっかりと謝罪をしているところであります」と語った。

    しかし、自民党は都議選で苦戦を強いられそうだ。6月29日には、自民党の下村博文都連会長が、週刊文春による「闇献金200万円」疑惑の報道を受け、会見を開いている

    稲田氏については、与党内からも大臣としての資質を問う声が相次いでいるが、会見で辞任を否定した。

    「今回のことも含めて、政治家の言葉は重いわけだから、緊張感を持って防衛大臣としての職務に邁進してまいりたい」

    「人事権者は総理だ。国民生活を守るために全力を尽くしたい」

    安倍晋三首相は、9月までに党人事と合わせて内閣改造の検討をしており、稲田氏の交代を求める声が高まっている。