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安倍首相「平均的な共働き夫婦の奥さんの月収」画像は誤り 発言が改変、検索で大量ヒット

安倍晋三首相が「日本の平均的な共働き夫婦の月収 ご主人の月給が50万円 奥さんのパート収入が月25万円 ご夫婦で月75万円の収入があるわけですが」と発言したとする情報が、Twitterの投稿が拡散した。しかし、これは誤りだ。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府が家計向けの経済対策を打ち出している。

そんな中、安倍晋三首相が「日本の平均的な共働き夫婦の月収 ご主人の月給が50万円 奥さんのパート収入が月25万円 ご夫婦で月75万円の収入があるわけですが」と発言したとする画像を添えたTwitterの投稿が拡散した。

たびたびネット上で拡散しているこの情報は誤りだ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

ツイートは3月30日にされ、少なくとも5千以上リツイートされて拡散した。アカウントは4月10日現在、Twitter社により「凍結」状態となっている。

投稿では「自己申告に基づき生活に困っている世帯などに1世帯あたり10万円を超える額を支給する方向・・・」「自分の言ったことくらい覚えとけ」との文言とともに、上掲の画像が添付されていた。

大量に出回る画像と文言

この同じ画像や同様の文言は、過去にもネット上でたびたび拡散している。

2019年頃から画像が出回り始め、今回、政府が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「現金給付」をめぐる批判が集まった際、再び画像が使われた形となった。

現在、Twitterに残るものでは、7万以上リツイートされている投稿もある。画像をGoogleで検索すると、大量にヒットすることも確認できる。

2016年の発言を改変?

先述の通り、安倍首相が「日本の平均的な共働き夫婦の月収 ご主人の月給が50万円 奥さんのパート収入が月25万円 ご夫婦で月75万円の収入があるわけですが」と発言したとするのは「誤り」だ。

安倍首相は、そのような発言をしていない。

2016年1月8日の衆議院予算委員会で、安倍首相が語った発言が改変されているとみられる。

国会会議録によると、安倍首相は、無所属の山井和則衆院議員から「実質賃金が下がっている」との指摘を受け、“例え話“として次のような答弁をした。

「ご指摘の実質賃金の減少についてでありますが、景気が回復し雇用が増加する過程において、パートで働く人が増えていくと、1人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけでありまして、私と妻、妻は働いていなかったけれども、景気はそろそろ本格的によくなっていくから働こうかと思ったら、働き始めたら、我が家の収入は例えば私が50万円で妻が25万円であったとしたら75万円に増えるわけでございますが、2人が働くことによって、2で割りますから、平均は、全体は下がっていくということになるわけでございます」

「だから、これはおかしいのであって、50万円と25万円があれば足していく。75万円であれば安倍家の収入を正確に把握するわけでありますが、2人で働いているからといって、これを2で割って安倍家の1人平均は幾らだという考え方自体は、正確に経済の実態を表していることにはならないということを、まず説明しておかなければいけないと思います」

つまり、月収を夫が50万円、妻のパート収入が月25万円というのは「安倍家の例え話」であり、日本の平均的な共働き夫婦を指していないことがわかる。

ただし、「パートで働く妻の月収が25万円」とも受け取れるこの発言については、当時も安倍首相の「金銭感覚」を問う批判が上がった。

1月12日の衆議院予算委員会には、立憲民主党の西村智奈美議員が「25万円ももらえるパートがどこにあるのか、あったら教えてほしい」と追及。

安倍首相は以下のように答え、そのような意図はないと否定している。

「私、パートとは言っていません。言っていません。ちゃんと見ていただきたいと思います」

「私と妻との関係においては、私が50万で、妻がパートで25万とは申し上げていませんよ」

実質賃金の減少についての説明において、そもそも「私が50万円で妻が25万円であったとしたら」との金額が、例え話としてふさわしいかの評価は割れている。

一方で、平均的な共働き夫婦の月収への言及ではないことは、明確だ。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

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  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。