新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、アルコール消毒液不足で、注目を集めた「次亜塩素酸水」。
経済産業省による要請で、新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価を実施している「製品評価技術基盤機構(NITE)」は6月26日、限られた条件の下では次亜塩素酸水が有効だとする最終報告を発表した。
条件としては、一定濃度以上であり、少量ではなく、モノの表面を十分な量で「ヒタヒタに濡らせば」有効だという。
次亜塩素酸水は、次亜塩素酸ナトリウムや消毒用アルコールと比べて高額で売られているが、アルコールのように「少量をかけるだけでは効かない」という。
また、人がいる空間での空間噴霧については注意を呼びかけ、「人が吸入しないように注意してください」「対策には消毒剤の空間噴霧ではなく、換気が有効」との指針を示した。

次亜塩素酸水は、店頭での市販や自治体の無料配布などにより、次第に身近なものとなってきた。加湿器や超音波噴霧器によって噴霧する光景が、居酒屋や学校などで見られるようになった。
名前が似ている「次亜塩素酸ナトリウム」と混同されがちだが、異なる性質を持つ物質だ。
NITEが検証を行ったのは、アルコール消毒液などの代わりに身の回りの物品にかけたり拭いたりして消毒する手段としての評価だった。
手指の消毒に使ったり、空中に噴霧したりした場合の有効性、安全性はNITEによる評価の対象外となっている。
使用方法と安全上の注意点

今回、次亜塩素酸水は「有効塩素濃度35ppm以上」であれば、新型コロナウイルスに有効だと発表された。
拭き掃除には、「有効塩素濃度80ppm以上」のものを使うように示し、次の使用方法が適切だとした。
・皮脂汚れなど目に見える汚れをしっかり取り除いて、使うこと
・十分な量の次亜塩素酸水で物品の表面をヒタヒタに濡らすこと(アルコールのように少量をかけるだけでは効かない)
・20秒以上時間を置いてから、綺麗な布やペーパーで拭き取ること
そして、安全のため、「濃度が高いものを使う場合、直接手をふれず、 ゴム手袋などを着用してください」と注意喚起したうえで、こうも結論づけた。
・人が吸入しないように注意。人がいる場所で空間噴霧すると吸入する恐れがある。
・空気中の浮遊ウイルスの対策には、消毒剤の空間噴霧ではなく、換気が有効。
・塩素に過敏な人は、物品の消毒であっても使用を控えるべき。
「有効塩素濃度35ppm以上」で良いのは、次亜塩素酸水をどばどばと20秒以上、かけ流して使用する場合だ。

「安全性への懸念から推奨していない」
一方、手指の消毒にあたっては、「石けんやハンドソープを使った丁寧な手洗いを行うことで、十分にウイルスを除去できる。さらに消毒剤等を使用する必要はない」とこれまでと変わらない主張をした。
経産省、厚生労働省、消費者庁合同のブリーフィングにおいて、政府の検討会の委員長を務める松本哲哉・国際医療福祉大学教授は、次亜塩素酸水を優先して使う必要はないとの見解を述べた。
「(石鹸や洗剤などに含まれる)界面活性剤が、検討会で有効だと示されているので、それを用いて汚れを取り除けば、それ自体で十分な効果を期待できる。なので、次亜塩素酸水を使ってもいいと思いますが、無理に使う必要はないし、優先的に使う必要はない」
「有人空間に噴霧するのは、安全性への懸念から推奨していない」
噴霧が推奨されないのは、先述の通り、今回の検証はあくまで物品の消毒方法としての有効性であり、手指の消毒に使ったり、空中に噴霧したりした場合の有効性、安全性は評価の対象外だったからだ。
安全性や有効性が確認されていないものを、空間噴霧によって人が吸入してはいけないというのだ。

次亜塩素酸水は、化学的に不安定な水溶液でもある。直射日光を浴びせず、どんなにしっかりと保管していても、時間の経過とともにその効果が失われてしまう。不純物が入っても同様だ。
繰り返すが、物品の消毒にあたっては、一定濃度以上の次亜塩素酸水が条件となる。そのため、消費者はこれまで、感染防止対策のために有効ではない次亜塩素酸水を使用していた可能性がある。
NITEは「次亜塩素酸濃度をmg/L又はppmを単位として明記していない商品が多い」「遮光性のないボトルに入れられている商品もある」と発表していた。
