Updated on 2020年7月6日. Posted on 2020年7月3日

    コロナ禍でも出社した経理部の女性 不安に駆られ、社内でも「不公平」感じた日々

    「本音はもちろん、テレワークがいいですよ。でも、出社を選ぼうと思っています。出社しないとできない仕事ですから」。経理部で働く女性は、改革を願っている。

    「本音はもちろん、テレワークがいいですよ。でも、出社しないとできない仕事ですから」

    愛知県の専門商社で働く20代の女性は言う。所属部署は、経理部だ。

    たとえ社内が変わったとしても、やりとりする他社が変わらないと、いつまでも出社しなければいけないことになる。

    業務の効率化を図るためにも、社会全体で紙や印鑑を使う慣習を捨て、電子化してほしい。彼女はそう願っている。

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    新型コロナウイルスが猛威をふるった2020年、テレワークを導入する企業が増えた。彼女の会社も同様だった。

    ただ、他の部署は早々とテレワークを許可されたにもかかわらず、経理部はその対応を後回しにされた。どうしても「紙」や「印鑑」を必要とする業務だったからだ。

    取引先である銀行とのやりとりでは、小切手の受け渡しがあった。また、紙で請求書や伝票を用意。他部署の同僚に直接、印鑑を押してもらう書類もあった。

    社内ですべてが完結できれば、業務の全てを電子化もできる。しかし、他部署や他社とのやりとりの都合上、政府による緊急事態宣言下でも出社する日々を送った。

    「不公平だなと思っていた」

    会社は経理部門にも目を向け、書類を自宅に持ち帰ることを許可。テレワークが認められたという。

    しかし、書類を紛失することなく、しっかりと管理ができるなら、という条件付きだった。

    ただ、それでも彼女がテレワークを経験した日は少なかった。女性は、BuzzFeed Newsに話す。

    「私は、銀行と関わることが多いので出社しないといけなかったんです。同じ経理部内でも、社内で完結できる人はテレワークができていました」

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    新型コロナウイルスに感染しないか。そんな不安に駆られながら出社した。仕事の都合で出社しなければならなかった彼女は、友人たちから「要注意人物」というレッテルも貼られ、嫌な気分になりもした。

    「仕方ないと思いますが、社内で差が生まれ、不公平だなと思っていました。紙や印鑑とか、時代的にも古いですし、業務を進める上でどうしても進捗が遅くなります」

    「コロナのことを抜きにしても、電子化したらやりやすいですし、管理する上でもミスが減り、効率的になって生産性が上がると思っています。社会全体で古い慣習が変わり、無駄なものをどんどんなくしてほしいですね」

    緊急事態宣言が解かれた今、会社からは出社するか、テレワークを選ぶかの2択を用意されている。

    「本音はもちろん、テレワークがいいですよ。でも、出社を選ぼうと思っています。出社しないとできない仕事ですから。ただ、私の場合は、銀行が変わってくれれば、テレワークをもう少しできるようになると思っています。会社も変わると信じています」

    経理の約7割がテレワークを実施できず

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    彼女の話は氷山の一角にすぎない。

    毎月の請求、集金、催促などの自動化を実現するクラウドサービスを提供する「ROBOT PAYMENT」が6月、インターネット上で経理担当者1000人にアンケート調査を実施した。

    外出自粛期間中、テレワークを実施できなかった人は約7割にのぼり、できた日数は、週平均1.4日だった。

    そして、20・30代の経理担当者の3割以上が、転職や退職を検討したとの結果が出た。

    テレワークの最大の阻害要因は、先述の彼女と同じで「紙の請求書業務」で、「請求書業務」を電子化するべきだと回答した人はほぼ9割にのぼったという。

    このアンケート調査の結果や、SNS上で散見された経理担当者の声を受け、同社は、経理業務の電子化を推進するプロジェクトを立ち上げた。

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    プロジェクト名は「日本の経理をもっと自由に」。HPには、こう記される。

    日本人の働き方は大きく変わりました。しかしそれは、「経理の人たちを除いて」です。ハンコを押すために。紙文化であるがゆえに。システムが古いために。請求書を取りに行くために。出社を余儀なくされる人がたくさんいます。

    紙がデジタルになるだけで、ハンコがなくなるだけで、経理の人々はもっと自由になることができる。

    このペーパーレスやハンコレスをめぐっては、政府が6月19日、テレワークを推進するにあたり、内閣府、法務省、経済産業省の連名で「押印についてのQ&A」を発表した。

    その中で、契約書について「書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない」「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、 契約の効力に影響は生じない」と明文化した。

    さらに、見積書や請求書などの国税関係書類の電子化保存を認めた「電子帳簿保存法」の改正が、10月に予定される。

    まずは請求書の電子化を普及

    プロジェクトでは、この法改正を前に、第一弾として請求書の電子化を普及させたいという。

    しかし、彼女の話の通り、請求書の電子化は、自社だけの取組だけでなく、 取引先の企業も実施しなければいけない。

    そのため、プロジェクトでは、賛同企業を集め、国内の半数以上の企業に請求書の電子化サービスを導入してもらうように目指したいという。

    すでにみずほ銀行やサイボウズ、ランサーズなど50社が加わった。

    BuzzFeed

    7月2日の記者会見で、ROBOT PAYMENTの清久健也社長は「経理を始めとした間接的な部門のIT化や働き方改革は、優先度が低いのが現状」と指摘した。

    「紙文化やハンコ文化など、経理の働き方の課題があったが、コロナによってその実態が可視化されました。このタイミングを逃せば、今後、経理の働き方を大きく変えることは難しい。今こそ進言すべきだと考えました」

    「経理はルーティンワークが多く、本来、IT化がしやすい分野です。経理を解放することで、より企業経営に直結したコアな業務に注力できるはず。IT化して業務改善を図れば、経理が持っているポテンシャルをビジネスに生かすことができると考えています」

    今後は、引き続き賛同企業の募集のほか、1万筆の個人署名も募り、経産省に提出する考えだ。

    バズフィード・ジャパン ニュース記者

    Contact Kensuke Seya at kensuke.seya@buzzfeed.com.

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