4人組YouTuber「アバンティーズ」のメンバー・エイジさんは、休暇旅行先のサイパンの浅瀬で高波にさらわれ、2019年の元旦に亡くなった。22歳という早すぎる死だった。
「あいつのために立ち止まらない」。ファンに伝えたのは、最愛のメンバーを失った翌月のことだった。
だが、実際にはその言葉通りにはいかなかった。事故から2年が経ち、この間、残された3人は立ち止まっては悩み、もがいた。やはり続けられないとすら考えた時期もあった。
3人は、才能あふれるエイジさんの存在の大きさを噛みしめる月日を過ごした。
いま何を考えるのか。そらさん、ツリメさん、リクヲさんに、BuzzFeedはインタビューした。
アバンティーズの新刊「1/4の風景」(KADOKAWA)は関係者のインタビューから構成され、エイジさんの家族とメンバーとの会話も収められている。
過去、現在、未来に対するメンバーたちの思いが詰まった一冊だ。3人の「本音」を探った。
「1/4」を見て
ーー本では、目指す方向は同じだけど、目指し方がそれぞれ違うのだと伝わります。タイトルが「1/4 の風景」と決まった時、どう受け止められましたか?
ツリメ:メンバーの本音が知れるんじゃないかなと期待感を持ちました。
そら:僕は、生々しさもあるなって思って。最初は「おお」って思ったんですけど、最終稿を読んで、このタイトルでよかったと思いました。
ーー生々しさですか。
そら:やっぱり僕たちのことを知ってる人だと、結構センシティブに感じてしまうと思うんです。「4」の数字があると、エイちゃんのことを連想させると思うから。
ただ、今でも、動画作るうえで、エイちゃんの死を引きずってはいるので。それは、僕たちが触れるのを避けていたところですけど、あえて今回はしっかり触れた。だから、良かったです。
リクヲ:インタビューでは、思いの丈を全部ぶちまけました。この本では、他のメンバーもすごい詳しく話していて、タイトルを見たとき、はまっていると感じました。
同じグループではあるし、目指す先は同じでも、それぞれの見えているもの、目指し方、頑張り方は違います。「1/4 の風景」の一言で、本の内容を表せていると思いました。この本が、「僕たちの今の本音です」って思っています。
そら:全員、別々でインタビューを受けたので。読むのも楽しかったですし、お互いの考えがリンクしてる部分も多くて、すごいなとも感じました。新しい気づきがありましたね。
ーー家族のように近い関係だからこそ、本音を出しづらかったんですよね?
そら:そうですね。やっぱり、僕らが普通に3人で飯食ったら、絶対話さないようなことが本に詰まっていたので。知れて良かったです。
ーー今日のように、3人が同席してインタビューされていたら、まったく違った内容になっていましたかね?
そら:多分恥ずかしくて、本音をまったく言えなかったと思います。
自分を大切にする
ーー幼少期から一緒に過ごしてきたからこそ、メンバー全員が何かに向かって目指すことの大変さが伝わりました。4人の時も、互いの価値観や意見を受け入れるのが、難しいと感じたことはありますか?
そら:僕たちは、物心つく頃から一緒なので。空気感や怒るタイミング、何が嫌だと思うのか、とか全部わかっちゃってるので、むずいですよね。
リクヲ:今まで本音にあえて触れようとしてこなかった。
ーーそらさんは、本の中で「自分のことを一番大切にしないと、自分のために生きないと、と思った。自分を大切にしてあげないと人に優しくできないですし。人に何かを与えられない」と言っていますね。
そら:はい、全員が24歳になって、ようやく大人として、それぞれやりたいことに気づき始めたんです。グループのために生きてきたのが、自分のために生き始めたのかなと。
ツリメ:本を作るにあたって、怖さがありました。ファンの人からどんな反応があるのかな、と。それこそ本音を外に伝えてこなかったので。
今まで、アバンティーズとしての意見を言ってきたものの、個人の意見を打ち明けることはあんまりしてこなかったから。それを避けていたのは、エイジの戦略というか意思もあったと思うんですが。
リクヲ:ただ、僕たちは、進み方は違うかもしれないけど、同じところを目指しているのはわかる。それさえ感じてもらえれば、とは思っています。
そら:本として残るのはすごいいいなと思いました。僕たちの生きた証が、ずっと残るので。もちろん動画で残ってるんですけど、それも消えないとは言い切れないので。
ーーいつか消えるかもしれないと考えられてるんですか?
そら:去年、ほぼ3カ月くらい何もしない時期もあったので。その時、普通に危機感がありましたし、今もずっと感じています。
本来の形にちょっとずつ戻ってきてはいるんですけど。
ーーこの本が完成してから、本音が言いづらい関係性に変化はありましたか?
リクヲ:僕たちは、お互いに気を遣って、こんがらがっちゃうんです。ただ、前よりは正直に言いやすい空気感にはなりましたね。
そら:本を作りながら変わってきましたかね。関係を見つめ直して、今は安定した時期だと感じます。
去年の10月は、もはやほぼ活動休止、99%みたいな感じだったので。今年10年目って奇跡ですね、普通にこうやってるのが。
ーー本音でぶつかるのは、グループにとって大事だと感じましたか?
全員:どうなんですかね。
そら:本音でぶつかったから、活動休止しそうにもなったしな。良いのか悪いのかわからない。たまにがいいんじゃないですかね(笑)
ーー幼少期から本音が言いづらかったのですか?
そら:そうだな。ずっとこれできちゃいましたからね。
リクヲ:あまり深い話を面と向かってしてこなかったかもしれない。
そら:お金の話をするのが嫌なんですよ。中学の時からの友達なので。仕事っぽくなるのも、全員嫌だと思っちゃっう。だから、大人としては最悪ですよね(笑)
ーー本が完成するまでに、成長しましたか?
そら:割と何でも話すようになったし、大人としてやるべきことをやらねばって変わりました。少し悲しい気持ちもありますけど、変わらないのは無理なんで。
変わらないでいたかったんですよ、前までの僕たちは。ずっと現状維持できればいいなって思ってたんですけど、エイちゃんも亡くなって、年齢も24歳になって、先のことを考えないといけないと気づきました。少し大人になれたのかな。
動画を残し続けること
ーーエイジさんが亡くなった翌月に公開した追悼動画「アバンティーズのすべて」には、「ふと思い出して何回も見に来ちゃう」「えいちゃん大好きだよ」とコメントされるファンの方が今でもいます。エイジさんが携わった幼少期からの動画、映っている動画をYouTube上に残し続けることの価値をどう考えられていますか?
リクヲ:YouTubeは僕たちの思い出を残している感じで。今でも振り返ってみて、めちゃくちゃ楽しかったなと思える。視聴者も同じじゃないかな。僕たちの思い出を誰でも見れる場所に置いてあるってのは、面白いし、すごいことですよね。
そら:YouTubeをやっててよかったなって思いました。90年代とかだったら、多分、僕らYouTubeじゃなくて、バンドとかやってたと思うので。
YouTubeが残り続ければ、エイちゃんが映る動画を一生振り返れるんです。だから頼む、YouTube。
ツリメ:10年後、20年後、YouTubeが残っていたときに、4人で撮った動画はより価値のあるものになると思います。一層、輝いて見えるんじゃないかな。資料になるし、遺産になりますよね。
今回の本も将来、古本屋に並ぶこともあるかもしれないと思うんですよね。でも、その本を誰か他の人が手にとって、「こういう人たちがいて、こんな受け止め方をしたんだな」と考えてもらえると思う。そうやって誰かの頭の中に入ってくれたら嬉しいです。
<エイジさんの死とどう向き合ってきたのか。次回の記事 “「エイちゃんが最後に止めてくれた」メンバーを亡くした人気YouTuber、故人の両親の言葉に”に続く>
【アバンティーズ】クリエイター、YouTuber
そら・エイジ・ツリメ・リクヲの4人からなる「暴走最先端クリエイター」。全員が埼玉県出身。それぞれ保育園、小学校、中学校でエイジさんと出会った。そして、中学生の頃からYouTubeで動画投稿を始めた。チャンネル登録者数は3月1日現在、149万人を超える。