あれっ? Twitterが生まれたのは2006年。とっくに平成時代です。昭和の時代にTwitterなんかありません。そう、これは全て「昭和時代にTwitterがあったら?」と想像してできた架空のニュース映像なのです。
この動画は、1980年代のテレビのニュース番組のような作りになっていて、サラリーマンの男性が公衆電話に駆け込むシーンから始まります。
「もしもし、大至急、ツイートしたいんですけどネ」と電話に向かって男性が話すと、電話先の女性から「すみません、もうツイートではなくて名前が変わりまして今後は“ポスト”と呼ぶようにしてください」と釘を刺されます。
「あー、ポストね。ポストね。ハイハイ、じゃあポストお願いしますね」と男性は気を取り直して「あと2分で電車が来る。これに遅れたら嫁 激怒 不可避」との文言の投稿を依頼します。その後もナイターの巨人戦の試合結果をリツイートしようとしますが、「申し訳ありませんがね、そちらもリツイートではなくてですね、今後は“リポスト”と呼ぶようにお願いします」と注意されます。
Twitterが改名されたことで思わぬ手間がかかったようです。さらに、駅に向かって走る男性にTVレポーターが密着して話を聞いてると、背後で電車が走り去っていきました。あらら……。
「本物の昭和映像と見分けがつかない」と話題に
主演者の話し方からファッション、ちょっと不鮮明な映像など、1980年代ごろのニュース映像の雰囲気を完全に再現したこの動画。SNSで大反響を呼びました。
💬「本物の昭和映像と見分けがつかない」
💬「メガネなどの小物、画質、テロップ、イイ感じで昭和感」
💬「ヤバい(笑)電話してる間に2分経過してる(笑)」
今回の動画を作成したのは、数々の「架空の昭和時代」を描いた映像作品で知られる映像チーム「フィルムエストTV」です。監督がBuzzFeed Japanの取材に応じました。
監督によると、もともと生まれる前に放送されていたテレビ番組が「逆に新鮮」で面白く感じていたそうです。2020年の新型コロナの感染拡大期に、テレワークを推奨する昭和風の映像を発表したところ、大きな反響があったそうです。
それをきっかけに「今の世界線と昭和の世界線が交わると見たことない映像になるのではないか」と思って、昭和風の映像の制作を続けるようになったと振り返っていました。
「興ざめ要素をできるだけ減らすようにして制作しています」フィルムエストTVの監督との一問一答
——「公衆電話からツイートする」という発想が斬新ですが、どんなところから思いついたのでしたか?
名称を改めたTwitter(X)の混乱ぶりを描きたいというのが大前提にあり、そこから「昭和時代だったらどんな感じだったのか」を考えた結果、このような形になりました。
——「電話で吹き込む」というシーンから、電報を電話を通して申し込むサービスを連想したのですが、そうしたイメージで制作しましたか?
電報はむしろ全く考えになかったですね、馴染みがないので。「昔だったらインターネットはない→郵便だと時間がかかりすぎる→となると電話かな?」というイメージです。
——昭和時代風の映像を作る際に気をつけていることは何でしょう?
昭和っぽい場所で撮影したり、編集や演出方法をはじめ、セリフの口調やナレーションの言い回しも当時っぽくしたりするなど、興ざめ要素をできるだけ減らすようにして制作しています。なので、当時の研究が欠かせません。
——ナレーションや登場人物のしゃべり方もそれっぽいですが、往年のテレビ番組を参考にされているのでしょうか?
かなり昔に録画された当時の番組などを参考にしています。話し方だけではなく、映像演出や編集方法、テロップの書体、撮影方法なども当時のものを研究して反映しています。
——登場人物の男性がテレビ局の取材に応じてるうちに電車が通過しているのが見えますが、まさか乗り過ごしてしまった?
予想外にツイート……いや、ポストに手間取ってしまったので、たぶん乗り遅れてしまったのだと思います。ご家族はきっと激怒していることでしょう
——「すごい昭和感が出てる」と話題になり、2万回以上もリポストされていますが、こうした反響をどう感じていますか?
多くの方に面白がっていただけて嬉しいです。YouTubeでの視聴層は35歳以下(昭和を知らない世代)の方がほとんどなのですが、Xの場合はどうなのか気になるところです。
————「フィルムエストTV」では、昭和時代のテレビを模した映像を数多く発表されていますが、なぜ昭和時代の再現をしようと思ったのでしょう?
生まれる前に放送されていたテレビ番組が「逆に新鮮」で面白く感じ、よく見ていたことと、新型コロナが流行りだした頃に「テレワーク」の昭和風ロゴを作ったところ、Twitterでバズったことがきっかけです。今の世界線と昭和の世界線が交わると見たことない映像になるのではないかと思い、それ以来、様々な作品を制作しています。
——監督が今回の映像で担当した部分は?
企画から構成、撮影、ロケ場所選定、衣裳小道具調達・作成、編集など全てです。
——映像に登場する役者の方もフィルムエストTVのメンバーでしょうか?
そうです。普通の動画やドラマなどとは勝手が違うので、コンセプトをご理解いただける方だけにご出演いただいております。
——フィルムエストTVは何人で構成されていますか?
映像業界のプロを中心とした10人前後で構成されています。