終わってみれば圧勝だった。
労働党は惨敗、コービン党首「次の選挙は党を率いない」
最大野党の労働党は歴史的な惨敗。現有議席から71議席を失い、191議席の見通し。コービン党首は敗北を認め、「次の総選挙では党を率いない」と表明した。
労働党はブレグジットへの姿勢が玉虫色で、国民投票のやり直しを公約に掲げたこと、ジェレミー・コービン党首の社会主義的な政策などが、党内不一致を招き、有権者の支持も集められなかった一因とみられている。
地盤であるイングランド北部などで、保守党に議席を奪われたことは、今回の選挙を象徴する出来事だった。
野党内では選挙協力が進まず、これも保守党の躍進を招いた。自由民主党はジョー・スウィンソン党首が議席を失った。
スコットランドは独立への動きに拍車か
一方で、ブレグジットに反対していたスコットランド国民党(スコットランド民族党、SNP)の躍進にも注目が集まる。出口調査では55議席を得る勢いだ。
今後、スコットランドでは、独立を問う3度目の国民投票と独立後のEU加盟を目指す動きに拍車がかかりそうだ。
動向次第では、イギリスの「連合王国」という国のかたち自体に変化をもたらすかもしれない。
なぜ、保守党は大勝したのか。
なぜ、保守党は大勝したのか。一言で言えば、国民はブレグジット(EU離脱)の行き詰まりに心底うんざりしていたからだ。
すでにEU離脱を決めた国民投票から3年半が経過。政権と議会で離脱条件の調整が一向に進まず、袋小路にはまっていた。
「ブレグジットを実現するために投票しよう」――。保守党は、ブレグジットをめぐる国民感情を匠に利用し、労働党の票田の切り崩しに成功したと言える。
エコノミスト誌は、EU離脱強硬派のナイジェル・ファラージ氏が率いるブレグジット党と保守党が選挙区を調整したことも、保守党勝利の背景だと分析している。
今回の選挙で大勝したことで、ジョンソン政権、そしてイギリスは1月31日に期限を迎えるEU離脱に突き進むことになる。
だが、選挙ですべてが解決したわけではない。
国民投票以来、ブレグジットに対する国民世論はいまだ二分され、イギリス領北アイルランドとEUに加盟するアイルランドの国境の扱いなど、離脱までの課題はなおも残る。
EUにとっても大きな試練
イギリスのEU離脱が現実味を帯びることは、第二次世界大戦の反省から生まれ、国際協調を目指すEUにとっても大きな試練となる。
そもそもイギリスという国は、戦後のヨーロッパ統合の動きには反発的だった。
EUの前身であるESSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、EEC(欧州経済共同体)、EURATOM(欧州原子力共同体)に反発したイギリスは、北欧諸国とともに1960年に欧州自由貿易連合を結成。フランス、ドイツ中心の西ヨーロッパ統合に対抗した。
ところが輸入超過などで独自路線の経済が行き詰まると、イギリスはECへの参加を求め、1973年に加盟したという経緯がある。
EU発足後、統一通貨の「ユーロ」が導入されてもイギリスは自国の通貨ポンドを維持し続けてきた。
「ポイント・オブ・ノーリターン」という言葉がある。船や飛行機が「ここを超えれば、引き返すことができない地点」のことだ。
今回の総選挙は、イギリスとEUにとって「ポイント・オブ・ノーリターン」となるのだろうか。