「水曜どうでしょう」などを制作する北海道テレビ放送(HTB)の人気グルメバラエティ番組「おにぎりあたためますか」でMCを務める佐藤麻美さん(元アナウンサー、現編成部所属)が7月31日付で同社を退社する。30日放送の同番組内で発表した。
BuzzFeed Newsの取材に対し、佐藤さんは「HTBのことは大好きだし、大好きなスタッフも沢山いるのですが、やはり『表現者』として、新しいフィールドにも挑戦しながらこの先も長く仕事をし続けていきたいという強い思いがあり、このような決断をしました」と、胸中を明かした。
佐藤さんは1998年、HTBに入社し、アナウンス部に所属。2003年スタートの「おにぎりあたためますか」でMCに抜擢された。「マミ部長」の愛称で大泉洋、戸次重幸とともに軽妙なトークを繰り広げ、人気に。番組内の食べっぷりの良さにも定評がある。
2014年7月から編成部に異動したが、その後もHTBの看板社員の一人として活躍。「おにぎり」を16年続く長寿番組に育てた。退社後はフリーアナウンサーとして活動する。
一問一答は以下の通り。
この先も「表現者」として…
――1998年の入社からおよそ20年。今回、HTBという組織を離れる決断をされた理由についてお聞かせください。
今の私があるのはHTBのおかげですし、HTBには本当に感謝しかありません。
HTBのことは大好きだし、大好きなスタッフも沢山いるのですが、やはり「表現者」として、新しいフィールドにも挑戦しながらこの先も長く仕事をし続けていきたいという強い思いがあり、このような決断をしました。
「私は大泉さん、シゲさんに育ててもらった」
――20年に及ぶHTB人生において、印象に残っていることがありましたらお聞かせください。
入社前からロケをしていた「遊々夢ランド」というアウトドア番組ではチェンソーで森の木を切り倒したり、カヤックに挑戦したり、レンガで一からピザ釜を作ったり。
実は、初鳴き(新人アナウンサーが放送で初めてアナウンスすること)前から、番組に出演していたんです。振り返ると、若い頃は結構「体当たり系」の仕事が多かったなぁと思います。
いや、でもその後30代になってから担当した「スキップ」という情報番組でもオーストラリアでスカイダイビングをしながら番組名を叫んだり、札幌ドームで女子高校生とビール売り対決をしたりしていたので、「体当たり系」は一貫していたのかな(笑)
というのもあって、語りつくせないくらい印象に残っている仕事ばかりですが、やはり「おにぎりあたためますか」という番組に巡り合えたことは、私にとって最大で最高の出会いだったと思います。
先日、社内の先輩に退社の挨拶に行った時に、「麻美はおにぎりに就職したようなもんだな」と言われましたが、そのくらい私は大泉さん、シゲさんに育ててもらったと思います。
お二人が成せる絶妙なフリートークを生で学び、MCのなんたるかを勉強し、学んだらそれを番組で活かし、「豚一家」という家族のような関係が生まれ、常にポジティブに楽しく進行することができました。私にとって本当に大きな財産です。
更には、最後の4年間で編成部の仕事を経験できたこともかえがえのないものです。
テレビとは何か、番組とは何かを学び、視聴率やリリースを担当したり、「ハナタレナックス」全国放送の宣伝の仕事に携われたことは、アナウンサーという視点だけではないモノの見方を培うことができました。
――「おにぎりあたためますか」では、個性あふれるレギュラー陣「豚一家」の一員として番組を盛り立てました。印象に残っている場面などありましたら、ぜひお聞かせください。
これはもうありすぎて…どれからお伝えすべきかわからないくらいです(笑)
私がMCを担当する上で大事にしていたのは、とにかく「二人の好奇心を刺激し、喜怒哀楽を引き出す」ということでした。
だから、大泉さんはボヤキ、文句を言い、シゲさんはあらぬ方向に向かって突っ走っていく。それを仕掛けるのが本当に楽しくて(笑)
でも、やっぱりいまだに強烈に印象的なのは「シゲさんが集合場所に来ていなくて電話したら家にいた」という大遅刻のシーンですね。「こんなことってあるの?」って本当に信じられませんでした。
シゲさんは「俺もうダメだわ……」っ心底落ち込んでるのに、大泉さんが「大丈夫!シゲちゃん、今一番面白いよ!」と励ますという構図が最高ですよね。豚一家の絆が深まったひとつの大きな出来事だったと思います(笑)
「ひとつの番組を通して、誰かと思いを共有できる」
――佐藤さんが考える「テレビの魅力」とは。
とっても印象深い出来事がありまして。もう10年くらい前だと思いますが、HTBが全国各地で展開している北海道物産展でのHTBグッズショップで、私は初めて道外で「おにぎり」を見て下さっている沢山の方に出会いました。
その時はステージなどもなく、確か百貨店の階段の踊り場のようなところで写真撮影をしたんですが、撮影の後に番組への思いを皆さん、とても熱く語って下さいました。
60代のお母さんが30代の息子さんと一緒に来てくれたり、50代のお父さんが10代の娘さんと一緒に来てくれて、「娘との唯一の共通の話題なんですよ、『おにぎり』が」なんて、とっても嬉しそうに話して下さいました。
そんな思いのこもった話を沢山お聞きして、「こんな風に番組を見てくれているんだ」と、私は本当に嬉しくて仕方がなくて、裏でおいおいと声をあげながら嬉し泣きしたのを覚えています。
そして私は、「これまで以上に番組に真摯に向き合おう」と決意しました。
ひとつの番組を通して、誰かと思いを共有できるのがテレビの魅力だと思います。その思いがプラスのものだとしたらなお、大きな化学反応が起きる。だからテレビは楽しいんだと思っています。
――今後の活動についてお聞かせください。
フリーアナウンサーとしてテレビやラジオ、司会、執筆などのお仕事もそうですが、先日、「フードアスリートマイスター」という新しい食の資格を取得しましたので、今持っている野菜ソムリエプロなどの資格と合わせて、今後は「食」と「子育て」の分野にも軸足を置いて、札幌を拠点に全国で活動していく予定です。
――ファンの皆さんに伝えたい思いがありましたら。
「おにぎりあたためますか」のMCを16年間担当できた私は、本当に幸せです。本当にありがとうございました!何度お礼を言っても足りないくらい、本当に感謝しています。
今後はまた違った形で皆さんにお会いできることを楽しみにしています!
退社後初の出演は、YouTube「藤やんうれしーの水曜どうでそうTV」でした。
<佐藤 麻美(さとう・まみ)>
1975年2月23日生まれ、函館市出身。163cm、A型。HTBの深夜番組「おにぎりあたためますか」で16年間MCを担当。タレントの大泉洋、戸次重幸と共に全国を食べ歩き、その数は約900食に上る。2019年8月からフリーアナウンサーに転身。6歳と3歳男児の母親としては、“食と言葉のシャワー育児”を実施。幼児期から食に触れる様々な機会を作り、「やりたいことはさせる」という好奇心の芽をつまない子育てを大切にしている。
・経歴
1993年 函館白百合学園高校LB科卒業
1998年 南山大学経済学部経済学科卒業
1998年 HTB入社(アナウンス部)
2009年 結婚(34才)
2012年 第一子出産(37才)
2013年 職場復帰(38才・長男7ヶ月)
2014年 アナウンス部→編成部に異動
2016年 第二子出産(41才)
2019年 HTBを退職し、フリーランスへ
・資格
野菜ソムリエプロ取得
フードアスリートマイスター3級
べジフルビューティーセルフアドバイザー
ジュニア調味料ソムリエ
フードサロネーゼ
・書籍
「食いしん坊アナウンサー佐藤麻美の野菜で2週間ダイエットレシピ」