将棋・竜王戦で暖房トラブル、対局を一時中断 過去には室温バトルも…

    将棋の「竜王戦」七番勝負の第5局で、対局開始後に暖房設備のトラブルが発生。対局が一時中断した

    将棋のタイトル戦「竜王戦」七番勝負の第5局1日目が12月6日、島根県鹿足郡津和野町の「藩校 養老館」で始まったが、対局開始後に暖房設備のトラブルが発生。対局が一時中断した

    竜王戦を主催する読売新聞によると、対局室となっている剣術教場の暖房設備に不調が発生。午前9時44分から10時14分までの30分間にわたり対局を中断した。

    広瀬章人竜王に豊島将之名人が挑む第32期竜王戦七番勝負・第五局(島根・津和野対局) 対局場の剣術教場の暖房設備が一時不調となり、午前9時44分から午前10時14分まで30分間中断しました。 #竜王戦

    今期は、昨年の竜王戦で羽生善治九段に勝利した広瀬章人竜王に、豊島将之名人が挑んでいる。

    この日の対局は午前9時に開始。先手・豊島名人の▲2六歩から始まった。

    ところが、対局開始から40分ほど経ったところで、対局室に係員が入り、リモコンで空調の調整をはじめた。

    ニコニコ生放送の解説番組によると、「検分(対局室の事前確認)の際、エアコンが強力で効きすぎてしまい、温度の調整を(対局者が)気にしていた。暑すぎるか寒いかで温度の調整を希望があったようだ」という。

    ただ、中継映像によると立会人が対局室で「寒いですね」と話していた場面があった。

    気象庁によると、津和野町の6日午前10時の気温は1.9度。日本気象協会の予報によると、6日の天気は雪のち曇り。最高気温は6度。津和野町はかなり冷え込んでいるようだ。

    日本将棋連盟はBuzzFeedに対し、「現地からまだ詳細な情報は入っていないが、暖房設備が正常な状態ではなく、回復すべき状況になったようだ」と説明した。

    対局会場の「養老館」とは

    津和野町の公式サイトによると、対局場の「養老館」は、1786年に設立された津和野藩の藩校が由来。創建時の建物は消失したが、1855年に現在地に移転し再開。明治維新後の1872年まで存続した。

    過去には「近代日本哲学の祖」と言われる西周や、「舞姫」で知られる文豪・森鴎外などが学んだ。

    修復工事を経て、現在では武術教場などの建物が当時のまま残されており、県の史跡に指定されている。

    過去には室温めぐってバトルも…

    将棋では室内温度や環境音など、対局環境が非常に重要とされる。

    特にタイトル戦は和服で臨むことが多く、服装での温度調整が難しい。快適な対局のためには空調調整が大切になる。

    「ひふみん」の愛称で知られ、元名人の加藤一二三九段は、過去に好みの室温をめぐり対局相手とエアコンの温度設定の応酬をした過去がある。

    また加藤九段は、ストーブを用意したことがある。このときは対戦相手の神谷広志八段も寒いだろうとストーブを向けたが、「顔にストーブの風があたるのでやめてください」と、神谷八段から抗議されたという。

    「竜王vs名人」戦いの行方は

    両対局者の午前のおやつは、広瀬竜王が「源氏巻三種食べ比べ」(沙羅の木)とブレンドコーヒー。こしあんをカステラ生地で巻き上げた地元銘菓だ。

    挑戦者の豊島名人は、フルーツの盛り合わせ。地元スーパー「キヌヤ」の青果担当者が選んだものだという。

    【第32期 #竜王戦 七番勝負】 第5局 午前のおやつ 広瀬章人竜王 「源氏巻+ホットコーヒー」 豊島将之名人 「フルーツ盛り合わせ+まめ茶」 ▼視聴 https://t.co/iO9XYp7StF

    今期は、昨年の竜王戦で羽生善治九段に勝利した広瀬章人竜王に、豊島将之名人が挑んでいる。「竜王vs名人」の七番勝負は竜王戦では史上5度目となる。

    ここまで第1局から第3局までは豊島名人が3連勝したが、第4局は広瀬竜王が勝利。3-1で第5局を迎えた。

    本局で豊島名人が勝利すれば、2013年の森内俊之九段以来、6年ぶりに将棋界のトップタイトル「竜王」「名人」を独占する。迎え撃つ広瀬竜王にとっては正念場の大一番だ。