将棋の第31期「竜王戦」七番勝負の第6局2日目が12月13日、鹿児島県指宿市「指宿白水館」で指され、81手で挑戦者の広瀬章人八段が勝利した。昼食休憩前に終局する、異例の速さだった。
羽生善治竜王のタイトル100期は、最終局の第7局へと持ち越しとなった。
これまでの5対局では、羽生竜王が広瀬八段に対し、3勝2敗でリードしていたが、これで3勝3敗のタイとなった。決着は最終第7局(12月20日・21日)へ持ち越しとなった。
広瀬八段の猛攻が光った。
第6局は、2日制の竜王戦としては展開の早い将棋となった。
午前9時、広瀬八段の「封じ手」が開封され、対局がはじまった。封じ手は「▲8五飛」だった。
広瀬八段は55手目で「▲2一飛成」と指した。攻撃力の高い「竜」を用いて、敵陣の左右から相手の「玉」を狙った。
これに対し、羽生竜王は58手目で「△7五香」。32分の長考からの手だった。
広瀬八段はさらに59手目で「▲2四桂」攻めに出た。後がない広瀬八段、8年ぶりのタイトル獲得、そして念願の竜王位奪取に向けて猛攻を見せた。
午後12時7分、羽生竜王が投了。「負けました」の一声を告げ、頭を下げた。
竜王戦で2日目の昼食休憩前に対局が終わるのは初めてだという。
次回の第7局は12月20日・21日。決戦の舞台は下関・春帆楼。ふぐ料理で知られ、日清戦争の講和条約「下関条約」の締結地となった老舗旅館だ。
羽生竜王、タイトル100期に向けて正念場
次の第7局、羽生竜王が勝てばタイトル100期の偉業達成。負ければ1991年以来、無冠となる。
広瀬八段にとっては、勝てば悲願の竜王戦初制覇。どちらが勝っても、将棋界の歴史に残る大一番となる。
羽生竜王が初めて竜王位を獲得したのは19歳のとき、平成元年(1989年)のことだった。
デビューわずか4年での快挙で、かつ当時の最年少タイトル獲得記録だった。
羽生竜王は1991年から現在に至るまで、常に一つ以上のタイトルを保持し続けている。生涯に一度もタイトルを獲得できなかった棋士が多い中、類を見ない存在だ。
平成という時代を通じて、将棋界に君臨し続けてきたのが「羽生善治」という棋士だった。
平成を代表する偉大なる棋士が、平成最後の竜王戦を勝利で飾れるか。注目が集まる。