「ラーメン店主にだまされ北朝鮮へ」拉致被害者の田中実さん、平壌で妻子と生活

    特定失踪者の金田龍光さんにも妻子がいると伝達したという。

    北朝鮮による拉致被害者として認定されている田中実さんが、妻子とともに平壌で暮らしていると北朝鮮側が日本側に伝えた。政府関係者の話として、共同通信が2月15日に報じた。2014年以降の両国の接触で複数回、伝えてきたという。

    田中実さんとは

    田中さんは兵庫県神戸市の元ラーメン店員。1978年6月、成田空港からウィーンに出国後、消息不明になった。当時28歳だった。

    政府発表によると「北朝鮮からの指示を受けた店主にだまされて海外に連れ出された後、行方不明となり、北朝鮮に拉致された」という。

    産経新聞(2014年9月2日)によると、田中さんは幼少期に両親が離婚し、神戸市内の児童養護施設で育った。

    共同通信(2018年3月16日)によると田中さんの拉致は、元工作員とされる男性(故人)が「北朝鮮工作員のラーメン店主に、ウィーン経由で連れて行かれた」と告白して発覚した。

    これまでの捜査で、田中さんは周囲に「(元店主に)頼まれた手紙を北朝鮮に持っていけば大金が手に入る」「北朝鮮へ中華料理を作りに行く」などと語っていたことが判明している。

    政府は2005年、田中さんを拉致被害者と認定したが、北朝鮮側は「北朝鮮に入国していない」と主張。

    ところが共同通信(2018年3月16日)によると、北朝鮮は2014年に主張を一転させ、田中さんが「入国していた」と日本側に伝えた。

    北朝鮮が拉致被害者の入国を認めるのは、日朝首脳会談(2002年9月)で横田めぐみさんら13人の拉致を認めて以降初めてだった。北朝鮮側は「本人は平壌で家族と共に生活、現地に残る意向がある」と、日本政府に説明したという。

    政府認定の拉致被害者は17名

    政府はこれまでに17名を北朝鮮による拉致被害者として認定。これ以外にも、拉致の可能性があるとみられてきた「特定失踪者」として約470人がリストアップされている。

    共同通信によると北朝鮮は、田中さんと同じラーメン店に勤めていた特定失踪者の金田龍光さんにも妻子がいると伝達したという。

    北朝鮮は2014年5月の「ストックホルム合意」後の同年秋ごろ、田中さんと金田さんの入国情報を示している。

    金田さんは1979年11月、欧州訪問の打ち合わせのため「今から東京へ行く」と家族に電話をした後、行方不明となっている。