「写真を見て、目を疑った」大阪メトロの改装案に批判殺到、反対署名は1万3000人超

    「何十年も使っている市民にとって、愛着は半端なものではない」

    大阪の地下鉄を運営する「大阪メトロ」が12月20日、複数の駅を大規模に改装する計画を発表した。街を活性化させるため「新しい地下空間をつくる」としているが、改装案には不安の声が相次いでいる。

    相次ぐ不評「悪趣味」「派手」

    大阪メトロ

    心斎橋駅の改装イメージ。

    大阪メトロによると、対象は御堂筋線の9駅と中央線の6駅。300億円を投じて、2024年度までに順次改装する計画だ。

    新たなデザインでは、それぞれの駅を個性的に彩るとしている。例えば、大阪城に近い「谷町四丁目駅」は金の茶室に見立てて内装を金色にしたり、心斎橋駅は、ホームに大画面の電子広告を設置するイメージ案が出ている。

    ただ、12月22日に朝日新聞が大阪メトロの改装計画を報じると、「悪趣味」「派手」など不評の声が相次いだ。

    昭和レトロな空間、親しまれる御堂筋線

    岸政彦さん提供

    御堂筋線心斎橋駅。

    大阪メトロの駅は、昭和期のレトロな香りを残している。

    地下鉄御堂筋線は1933年、日本初の公営地下鉄として梅田〜心斎橋間が開通した。当時の様子について、「地下鉄50年のあゆみ」(大阪市交通事業振興公社)はこう記している。

    アーチ式ホームにはシャンデリアが輝き(中略)エスカレーターもあって、市民はその豪華さに感嘆した

    朝日新聞(2013年12月18日夕刊・大阪本社版)によると「心斎橋駅は恐らく60年以上前、梅田は四十数年前の改装時に、現在のシャンデリアが設置された」という。

    長年親しまれたこうした景色がなくなる寂しさを募らせる声もでている。

    「写真を見て、目を疑った」

    署名サイトchange.orgでは「歴史ある大阪の地下鉄を未来に残してください!」という活動も始まった。12月24日午前10時現在、賛同者は13000人を超えた。

    署名の呼びかけ文では、新たなデザイン案への不安が率直に記されていた。

    写真を見て、目を疑いました。

    私たちが慣れ親しんだ、あのレトロな、かわいらしい、落ち着きのある大阪の地下鉄の駅とは懸け離れた、安っぽい、派手な、悪趣味な、そして駅のある場所とはむしろつながりの薄いデザインの案が載っていたのです。

    「貴重な建築、愛着は半端じゃない」

    署名の呼びかけ人の一人である岸政彦・立命館大学教授は、BuzzFeed Newsの取材にこう語る。

    「ここ10年ぐらい、大阪では急速に再開発が進み、阪急梅田駅のコンコースや大阪中央郵便局の旧局舎など昔から残っていた歴史的建造物が取り壊されてしまいました。大丸心斎橋店も、外壁は残しつつも建て替えとなりました。こうした動きを悲しく、切ない思いで見ていた中、あの大阪メトロの案が飛び込んできたわけです」

    「(改装候補になった)御堂筋線の心斎橋駅は、とても象徴的な空間です。蛍光灯を用いたシャンデリアなど、大大阪のモダニズムをいまに残す非常に貴重な建築です。何十年も使っている市民にとっても、愛着は半端なものではありません」

    こうした思いから、作家の柴崎友香さんらとともに署名を呼びかけることにした。

    時事通信

    阪急百貨店梅田本店のコンコース(2005年)

    大阪メトロの改装案を厳しく批判する岸さんだが、「再開発自体に絶対反対というわけではありません」と強調する。

    「財政悪化の影響もあり、収益をあげるために再開発をする必要があるのは理解できますし、個人としても賛成です」

    「ただ、もう少しやり方があるでしょう。愛着を持って、慣れ親しんでいる大阪の姿を残しつつ、おしゃれに、きれいに、人が集まって、お金も儲かる施設にすることは十分可能だと思うのです」

    これこそが、声を上げる必要性を感じた理由だった。

    「大阪は、古くて良いものがたくさんある街」

    時事通信

    大丸心斎橋店・本館(2015年)

    岸さんは「大阪には、戦前の“大大阪”と呼ばれていた頃から蓄積された文化的な遺産があります」と魅力を語る。

    change.orgに載せた呼びかけ文にも、こう記している。

    大阪市民にとっては、地下鉄は日常の足です。どこへ行くにも、何をするにも地下鉄です。そして、ただそれだけではなく、何十年にもわたり愛され、親しまれてきた文化遺産であり、貴重な歴史遺産でもあります。

    たしかに古びて、色あせてはきていますが、それはこの駅たちが大阪市民とともに重ねてきた年月の色であり、たくさんの──ほんとうにたくさんの大阪市民の、夢や希望、そして人生そのものを運んできた地下鉄だけがもつ、温かいぬくもりなのです。

    モダンで、美しく、レトロでかわいらしい大阪の姿を残したい――。

    岸さんは取材の最後、署名の呼びかけを通して伝えたいことをこう語った。

    「大阪は、古くて良いものがたくさんある街なんです。近年の再開発で、その魅力が失われる例が増えつつあることを知ってもらうきっかけになればと思っています」

    Contact Kei Yoshikawa at kei.yoshikawa@buzzfeed.com.

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