大阪都構想めぐり維新・公明の対立が最終局面 「ダブル出直しクロス選」発動も?

    都構想実現を目指す「大阪維新の会」と公明党の対立が深まっている。

    大阪府の松井一郎知事(大阪維新の会・代表)、大阪市の吉村洋文市長(同・政調会長)が2月20日、東京・千代田区の日本外国特派員協会で記者会見した。

    大阪では、府と市を廃して「大阪都」とする構想(大阪都構想)の住民投票の是非をめぐり、都構想実現を目指す「大阪維新の会」と公明党の対立が深まっている。このままでは「ダブル出直しクロス選」の可能性もあると見られている。

    維新と公明党は、なぜ対立することになったのか。そして「ダブル出直しクロス選」とは。これまでの経緯を振り返った。

    維新と公明、協調と対立の歴史

    維新と公明は、これまで協調と対立を繰り返してきた。

    そもそも住民投票を実施するには、大阪府・市の両議会で過半数を得なければならない。だが、維新単独では過半数には足りない。そこで不可欠となるのが、公明党の協力だ。

    橋下市長時代の2012年の衆院選で、維新と公明党は接近。公明党が都構想の住民投票で協力する代わりに、公明党が候補を立てる大阪・兵庫の6つの小選挙区で維新が選挙協力することで合意した。

    ただ、橋下氏は2014年2月、公明党の協力姿勢が見えないとして「宗教の前に人の道がある」と批判。当時の公明市議団の幹事長と非難の応酬となった。橋下氏は「出直し市長選」に踏み切り、当選した。

    同年11月の衆院選を契機に、両党は再び接近する。維新は公明党の選挙区に対立候補を立てなかったことで手打ちとなり、公明党は住民投票「容認」に転じた。

    2015年5月、大阪都構想を問う初めての住民投票が実施された。

    結果は「賛成」69万4844票、「反対」70万5585票と僅差で否決。旗振り役だった橋下市長は、任期満了をもって辞任。政界を引退した。

    同年11月、大阪府知事・市長ダブル選では「都構想再挑戦」を公約に掲げた松井知事と吉村市長が当選した。

    住民投票か、ダブル選か

    松井知事と吉村市長は今年秋に任期満了を迎える。その前に、再び住民投票を実施したい意向だ。

    ところが公明党は住民投票の実施時期について明言を避けている。

    2019年は統一地方選と参院選がある「選挙イヤー」だ。選挙に集中したい公明党は、住民投票に力を割きたくないのが本音。早期実施には消極的だ。

    昨年末には「亀裂は決定的」「年明けにダブル選判断」という報道もあった。

    業を煮やした松井知事と吉村市長は公明党に対して踏み絵を突きつける。都構想を問う住民投票を、知事・市長の任期満了に伴う秋のダブル選と合わせて実施するという確約に署名するように求めた

    もし、公明党が確約しなければ、2人は任期途中でともに辞職。4月の統一地方選に合わせて、出直し選挙に打って出るシナリオだ。

    松井知事は18日の会見で、「ごまかされたら、死んでも死にきれない」と語り、公明への不信感を表明。両党の駆け引きが最終局面を迎えているという認識を示した。

    22日には、都構想の制度案を協議する法定協議会が開かれる。公明党は、ひとまず政治家同志の「委員間協議」に入ることで同意。ここで制度案の詰めが行われる見通しだ。

    吉村市長は15日、「政治的な交渉は続いている認識だが、公明に法定協をまとめていくスタンスを感じ取れるかどうか。できないなら勝負は統一選しかない」と明言している

    「ダブル出直しクロス選挙」の可能性

    仮にダブル選となった場合、松井知事と吉村市長は、知事と市長を入れ替えて立候補する意向を示している。

    これは、首長が任期途中で辞職し「出直し選挙」で再選された場合も、辞職前の任期をそのまま引き継ぐことになるルール(公職選挙法259条の2)を避けて、新たに任期4年を確保するための策だ。

    つまり、松井知事が大阪市長選に、吉村市長が大阪府知事選に立候補する「ダブル出直しクロス選挙」となる。

    吉村市長は20日の会見で、大阪都構想の実現を目指す姿勢を改めて表明。「自分の身分を守ろうとする政治家が多すぎる」と反対勢力をけん制した。