新元号は4月1日発表、現役SEは怒り「現場の負担、なぜ考慮しない」

    公表から改元まではおよそ1か月。現役のシステムエンジニアは、このスケジュール感をどう受け止めたのか。

    安倍晋三首相は1月4日の年頭会見で、新元号を4月1日に公表すると述べた。公表から改元までは1カ月。官公庁や自治体、企業などの情報システムの改修を担う現役のシステムエンジニア(SE)は、このスケジュール感をどう受け止めたのか。

    現役SE「現場に負担」「事前公表で一安心」

    現場のSEたちは複雑な心境のようだ。

    コンサルティング会社で社内システムを担当するエンジニア(31歳女性)はこう憤る。

    「(退位が決定しているのに)新元号を事前に公表しないことで、現場には負担がかかり、ユーザーにも影響が出る可能性がある。それをなぜ考慮出来ないのか。ただただ疑問です」

    改元への対応は官公庁や自治体、企業だけでなく、元号表示機能を持つコンピュータを使う全ての人に影響があるという。

    「改元対応による影響を調査する必要はもちろん、オンラインのサービスは改修のためにサービスを一時停止したり、サーバーを再起動する必要に迫られる。想定外のバグが発生する可能性があるのでかなり大変だと思います」

    一方で、独立系システムインテグレーターのシステムエンジニア(30代男性)は「事前に公表されることで一安心したエンジニアも多い」と語る。

    その上で、こう指摘する。

    「天皇陛下の退位が決まって以降、各システム会社は影響範囲の確認を進めてきているはずです。消費税と同様、元号は変わるものだという意識はある。よほどのことがなければ、適切に変更できるようになっていると思います」

    「システムの規模によって作業工数に幅もある。実際に運用を開始するまでに(バグの有無を)検証することも可能だと思います。これを機に、和暦から西暦に切り替えている企業もあります」

    ただ、憂慮される課題もあるという。

    「(コンピュータシステムが利用されるようになってから)これまでの4世代(明治・大正・昭和・平成)と新元号を併記する場合です」

    「自治体の手続き書類などには元号の略号(M/T/S/H)が併記されているものがあります。これが5つになったとき、その書類のレイアウトを変更することが必要となります。レイアウトの種類が多いほど、作業工数はかかりますし、検証工数もかかります」

    新元号の発表時期、保守系議連は「即位後」を主張

    天皇陛下は、2017年8月8日放送のビデオメッセージで退位の意向を示された。

    以降、200年ぶりの退位による代替わりに備えて準備が進められてきた。

    特に、新天皇の即位による改元をめぐっては、国民生活への影響も考慮し、政府は新元号の事前公表を模索してきた。

    政府内では2〜3月に公表する案もあったとされる。ところが、保守系議連の「日本会議国会議員懇談会」などは、新元号を皇位継承前の公表することに反対。新天皇の即位後に公表すべきだと主張している。

    この懇談会の特別顧問には安倍首相と麻生太郎副総理、幹事長には首相に近い衛藤晟一首相補佐官が名を連ねる。菅義偉官房長官も副会長を務めてきた。

    こうした声を受けて、安倍首相は自らの支持母体である保守系勢力の声に配慮。新元号公表をなるべく改元に近づけつつ、官公庁の情報システム改修作業の時間を確保するため「4月1日公表」というスケジュールを切ったかたちだ。

    菅官房長官は2018年11月1日の記者会見で「新元号の公表日を改元1カ月前と想定して準備を進める方針を決めている」と述べていた。

    新元号は5月1日午前0時に施行される。