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「ユニ・チャームの初任給が男女で違う」と読み取れるツイートが拡散→ミスリード、同社も否定

日用品大手のユニ・チャームの初任給に関して、「男性と女性で金額が違う」と読み取れるツイートが拡散しています。ツイートはミスリードで、拡散には注意が必要です。

日用品大手「ユニ・チャーム」(本社事務所・東京都港区)の初任給に関して、「男性と女性で金額が違う」と読み取れるツイートが拡散している。

「なんで性別で賃金に格差つけるんだろ」と引用リツイートしている人もいるが、BuzzFeed Newsの取材に同社は「そのような事実はない」と否定した。

投稿主は後に「社会の男女格差について言いたかった」という主旨のツイートを行い、弁明している。

日本社会には男女の賃金格差が実在する。ただし、それが特定企業の初任給にもあるように取れるツイートは、ミスリードといえる。

投稿があったのは7月18日。次のような内容だった。

生理に悩まされ続けている中学生娘が「ソフィで働きたい」と言い出した。
なんで?と聞いたら、
「シンクロフィット神だし、デリケートウェットシートが快適すぎるから、絶対生理に理解ある会社だと思うの」と。
で、初任給調べ始めたら、「なんで男性と女性で給料ちがうの…?」と困惑していた。

ツイートに出てくる「ソフィ」は、ユニ・チャームが販売する生理用品のブランド名だ。

どこの会社の初任給を調べたのかツイート内で明示されていないが、文脈からユニ・チャームと誤解される可能性がある。

このツイートは拡散しており、18日午後4時半現在で1万8000いいね、約3700リツイートとなっている。

ユニ・チャームのHPに、初任給について記載がある。

「新卒採用 募集要項」の欄に2021年4月の実績として、「修士了 月給 22万6000円」「大学卒 月給 21万円」とあった。

学歴による初任給の差はあるが、男女で異なる金額が提示されているわけではない。

BuzzFeed Newsが同社の広報担当者に電話取材したところ、「性別によって初任給が違うという事実はありません」と回答した。

また、同社での入社後の男女での給与格差の有無について、広報担当者は以下のように語った。

「入社後はそれぞれ役職が上がるなどして昇給していきますが、『男性だから』『女性だから』ということで給料が差別されることはありません」

社会全体では男女の不平等が

投稿主は最初のツイートから8時間後、「『初任給』を調べた後、その後の『給与』に着目し、男女間の『給料』の差に『困惑』していたものです。ユニ・チャームさんを批判する意図はありません」と再投稿。

「批判しているのは、明確に、『社会』です」としており、ユニ・チャームではなく、一般論だと弁明した。

では、社会全体ではどうだろうか。

日本では一般的に男性が女性より高い賃金を得ていることが、厚生労働省などの調査で示されている。

厚労省が2021年に行った「賃金構造基本統計調査の概況」によると、男女別の平均月給は男性が33万7200円、女性が25万3600円。男性を100とすると、女性は75.2だった。

年齢とともに変化する賃金の状況をグラフで示した「賃金カーブ」も同様で、男性は55〜59歳がピークで41万3600円だったが、女性は50〜54歳がピークで27万7900円だった。カーブの伸びも男性より女性が緩やかになっている。

男女の賃金差の情報開示を義務化

格差の理由として、出産時などでの離職や、女性の方が平均勤続年数が短いこと、管理職の女性比率が低いこと、パートなど賃金が低い非正規労働で働く割合が高いことなど、さまざまな要因が指摘されている。

内閣府男女共同参画局によると、スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が7月13日に公表した「ジェンダー・ギャップ指数」は、146か国中116位だった。

「教育」と「健康」の値はトップクラスだったが、「政治」のほか、男女の賃金格差や管理職の男女比を示す「経済」の値が低かったという。

こうした状況に、厚生労働省は7月8日に女性活躍推進法の省令などを改正。301人以上従業員がいる企業を対象に、直近の男女の賃金差の実績を公表することを義務づけた。その狙いは、情報開示による格差の縮小だ。




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