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旧統一教会トップの会見、一部に「誤り」。消費生活センター巡る発言で「ちょっとした言い間違い」

旧統一教会が8月10日に開いた会見で、田中富広会長の発言に一部「誤り」があることがわかりました。

宗教団体「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の田中富広会長が8月10日、日本外国特派員協会で開いた会見で、消費生活センターに関連した発言が一部、事実と異なることが分かった。

田中会長は会見で、消費生活センターに旧統一教会に関する相談があった場合にはセンターから「連絡をもらうようにしていた」と述べた。しかし、BuzzFeed Newsの取材に、消費者庁は「そのような事実はない」と否定した。

家庭連合の広報担当者も取材に「言い間違い」としており、この会見で出た消費生活センターに関する一部発言は、「誤り」だ。

2度目の会見で

安倍晋三元首相の事件をきっかけに、政治との関係などを巡って注目が集まる旧統一教会。

田中会長は8月10日、公の場では7月11日以降2度目となる会見を開いた。

冒頭、「過剰なメディア報道によって、信徒からさまざまな被害が報告されている」と述べ、見過ごすことのできない報道が多々あることから会見を開いたと説明した。

そのうえで、旧統一教会を巡る被害の救済活動などを行ってきた「全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)」が話す内容は「実に不正確であり、不公正」とし、メディアに検証するよう呼びかけるなどした。

「消費者センターから連絡をもらうようにしていた」

その後、いわゆる「霊感商法」について言及。

一部メディアで霊感商法が今も変わらず行われていると発信されているとし、「過去、現在も行ったことはなく、信徒らには2009年以降、社会的、法的に問題と指摘される行為をしないようコンプライアンスの徹底に努めている」と述べた。

そして、「コンプライアンスの徹底で、霊感商法と称される類のものは信徒によって行われておらず、被害報告もない」と語り、次のように発言した。

「2014年以降、当法人は消費者センターから、当法人に関する何らかの相談があった場合には連絡をもらうようにしていたが、記録にあるこの年以降、消費者センターから相談を受けたとの連絡は1件もない」

旧統一教会に関連した相談があれば、消費生活センターから連絡がくるようにしていたという主旨だ。

しかし、BuzzFeed Newsが消費者庁に取材したところ、「事実と違う」という答えが返ってきた。

消費生活センターは各都道府県と主要な市町村に設置され、消費者庁が所管する国民生活センターが連携して消費者保護行政を進めている。

個別団体の「苦情処理」をしているのではない

同庁消費者政策課の尾原知明課長によると、旧統一教会に関する相談があった場合に同教会に報告することは、「ファクト(事実)としてない」という。

トラブルに巻き込まれて相談してきた人に対し、アドバイスをしたり被害救済に向けた機関を紹介することはあるが、「特定の団体に『このような被害相談がありました』と逐一報告することはシステム的にもない」と語った。

尾原課長は「我々は個別団体の『苦情処理』をしているのではない。こちらからそのような連絡をすることはないので、『消費者センターから相談を受けたとの連絡は1件もない』というのは、当たり前なのでは」と語った。

一方で統一教会に限らず、個別の団体に関する相談内容や件数は公表していないという。

取材に旧統一教会側は

BuzzFeed Newsは世界平和統一家庭連合の広報担当者にも電話で取材した。

消費者庁の取材結果を伝えると、担当者は「ちょっとした言い間違い。消費生活センターが『クレームありましたよ』といったような対応をしてくれないことは知っている」と話した。

また、田中会長が会見で強調したかったこととしては、「記録のある2014年以降、消費生活センターに当法人に関するトラブルは報告されていないということだ」とした。

霊感商法に関する検討会

消費者問題担当も兼務している河野太郎・デジタル相は12日の記者会見で、消費者庁に霊感商法に関する検討会を立ち上げるよう指示したと明らかにした。

河野大臣は会見で、「霊感商法は消費者契約法の中でデート商法や就職商法と横並びになっている。最近は霊感商法というよりは、寄付が主流になっているようだ」と話した。

そのうえで、「消費者庁の中に霊感商法に関する検討会を速やかに立ち上げ、霊感商法の対応をきっちりやっていく」と述べた。


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  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
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