政府が今月11日から始めた観光促進策「全国旅行支援」の予算に5兆円が注ぎ込まれたと読めるツイートが一時、拡散した。
しかし、BuzzFeed Newsが観光庁に取材したところ、全国旅行支援の事業費は約5600億円。よって、ツイートは「誤り」だ。
岸田首相は3日、所信表明演説で「訪日外国人（インバウンド）旅行消費額の年間5兆円超の達成を目指す」と発言しており、ツイートの発信元はその数字と取り違えたとみられる。
発信元はその後、「勘違いだった」と誤りを認め、ツイートを削除した。
経緯を振り返る
旅行支援に5兆円だとさ。国民一人当たり4万円くらい。旅行になんか行く余裕のない人には決して届かないお金。
このようなツイートが発信されたのは10月11日夜。12日午後5時時点で、3万いいね、9000リツイートと広く拡散した。
発信元は匿名アカウントで、翌12日に「旅行支援プロジェクトで業界に5兆円の収入増、ということでこれが庶民には届かない、と言うつもりだった」とツイート。
その後、「趣旨はともかく、数字を勘違いし申し訳ありません」と当該ツイートを削除した。
全国旅行支援の事業費は
政府の観光需要喚起策「全国旅行支援」は、国内旅行を促進させ、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光を回復させる目的で10月11日から始まった。
期間は12月下旬までで、旅行代金が最大40％割引になる。上限は、交通機関と宿泊がセットの場合が8000円で、宿泊だけなどは5000円。このほか、おみやげの購入などに利用できるクーポン券（平日3000円、休日1000円）がついている。
観光庁の担当者によると、事業費は約5600億円で、一時停止中の「GO TO トラベル」の予算をあてているという。
なお、全国旅行支援の経済効果については、大和総研が波及効果込みで計約8300億円と試算（産経新聞）。
発信元は誤りを認めたツイートで、「旅行支援プロジェクトで業界に5兆円の収入増」とも記載していたが、「旅行支援プロジェクト」が全国旅行支援のことを指しているとするならば、このツイートも誤りとなる。
5兆円という数字はどこから？
では、5兆円という数字はどこから出てきたのか。
岸田首相は3日の所信表明演説で次のように発言している。
今月11日から、ビザなし渡航、個人旅行再開など、インバウンド観光を復活させ、訪日外国人旅行消費額の年間5兆円超の達成を目指します。
全国旅行支援やイベント支援も再開し、コロナ禍からの需要回復、地域活性化を図ります。
ここでいう5兆円は、訪日外国人旅行消費額を指している。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、訪日外国人の訪日旅行消費額はコロナ禍前の2019年、約4兆8000億円だった。
その後、20年は約7400億円、21年は約1200億円（いずれも試算値）と落ち込んだ状態が続いた。
岸田首相は所信表明演説で、コロナ禍前の水準を目指すという意味で5兆円という数字を出したとみられる。
観光庁は旅行に行く際、「基本的な感染対策をしっかりと行ったうえでお出かけしてほしい」としている。
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