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プーチン大統領が日本に「反撃を開始する」「ハッタリではない」と発言→誤り。ウクライナへの軍事侵攻めぐり

発信元の匿名アカウントはTwitterで現日本政府を批判し、コロナワクチンやマスクに懐疑的なツイートを拡散しています。

ロシアのプーチン大統領がテレビ演説で、「日本政府がウクライナに軍事支援をしたので反撃を開始する」などと発言したとするツイートが拡散している。

プーチン大統領は9月21日、実際に国民向けのテレビ演説を行っているが、その時に話した内容はウクライナに派遣する兵士についてが主だった。

一方、日本に関しては触れておらず、このツイートは「誤り」だ。

拡散しているツイート

フォロワー約3700人の匿名アカウントが9月23日、次のようにツイートした。

日本へ軍事侵攻を準備しているロシアのプーチン大統領は2022年9月21日、国民向けのテレビ演説を行いました。 「日本政府がウクライナに軍事支援をしたので反撃を開始する。これはハッタリではない。坪に念仏でも唱えてろ」

26日午前7時現在、1100リツイート、3200いいねと拡散している。

このツイートには、プーチン大統領の演説内容を紹介したNHKの記事画像(9月22日付)を添付。あたかもNHKが報道したかのような印象付けも行っている。

発信元のアカウントは昨年12月にツイッターに登録。日本政府やメディアへの批判、コロナワクチンやマスクに懐疑的なツイートなどを拡散している。

プーチン大統領は何を話したのか

では、プーチン大統領はテレビ演説で何を話したのだろうか。

NHKは9月22日、演説内容の全文をネット上で公開している。要点は次の通り。

  • 先制的な軍事作戦を行う決定は不可欠。ドンバス全域(ウクライナ東部)解放という作戦の目標は変わっていない。
  • 部分的な動員を支持することが必要。対象は、予備役になっている国民で、とりわけ軍勤務経験者や、一定程度の軍事専門の知識を有する人。
  • 部分的な動員に関する大統領令に署名した。動員措置は9月21日から開始。
  • 領土と一体性が脅かされる場合、ロシアと国民を守るため、保有するあらゆる手段を行使する。これは脅しではない。
  • 核兵器で我々を脅迫しようとする者は、風向きが逆になる可能性があることを知るべきだ。


主な演説内容は「部分的な動員」

このように、主な演説内容は軍事侵攻を続けるウクライナへの「部分的な動員」についてだ。

つまり正規の軍人だけでなく、有事の際に招集する「予備役」も動員するとしており、この演説はNHKのほか国内外のメディアで一斉に報道された。

しかし前述の通り、日本政府がウクライナに軍事支援をしたので反撃を開始するといった発言を報じたメディアはなく、ネット上や記事データベース「G-Search」でも確認できなかった。

演説内容全文を見ても当該ツイートは誤りで、拡散には注意が必要だ。

ウクライナ側は「部分的な動員」に対して……

ロシア側は、動員は軍勤務経験者など一部に限定するとしているが、NHKは「ウクライナ軍の反転攻勢でプーチン政権が危機感を強めている」と伝えている。

時事通信によると、ウクライナのゼレンスキー大統領はこの部分的な動員について「墓場への動員」と指摘。

そのうえで「外国の地で戦争犯罪者として死ぬよりは、召集令状を受け取らないほうがいい」と、動員拒否を訴えているという。


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