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「不審者がいる。見にきて…」過去最多の119番、20万件は“不要不急”。消防が頭を抱える「通報内容」と、その影響

119番のうち2割が「不要不急」の通報です。緊急性のない通報が増えれば、本当に医療が必要な人に影響が出ます。東京消防庁や関係者に取材しました。

2022年に東京消防庁が受けた119番のうち、「不要不急」の通報が2割に上ったことが同庁への取材でわかった。

昨年は119番通報が初めて100万件を超え、現在の集計方法になった15年以降で過去最多となった。

一方、現場の救急隊は過酷な業務を強いられており、昨年末には過労が原因とみられる救急車の横転事故も発生。

現場を苦しめる不要不急の通報とは。そして、119番が増加したことによる影響はーー。

【関連記事:救急隊員が明かした“極限”の日々。「15時間ぶっ続けで搬送」「救えるはずの命が…」 第8波の現場で起きていること

119番が2分以上も繋がらない

東京消防庁によると、2022年の119番通報は103万6645件で、前年(89万8319件)と比べて約14万件増加した。

現在の集計方法になった15年以降、100万件を超えた年はなく、次に多かったのは19年の99万2615件だった。

同庁は、新型コロナウイルスの流行などが原因とみている。特に、夏は熱中症、冬は寒暖差による心疾患の患者も増える傾向にある。

コロナ第8波の影響を受ける今は、119番が繋がりにくい状態が続いており、職員が応答するまで2分以上かかるケースも確認されている。

関係者は「家族が倒れたが、119番が繋がらなくて110番した事例もあった。わらにもすがる思いだったのだろう。本当に医療が必要な人に影響が出ている」と話す。

「不審な人がいる」「交通手段がなかった」

また、昨年の119番通報(約100万件)のうち、2割の20万件ほどが「119番通報にそぐわない内容」だった。

次の5つは、これまで実際にあった不要不急の119番通報だ。

  1. 「コロナの検査で陽性になった。どうしたらいい?」
  2. 「どこの病院が開いているのか教えてほしい」
  3. 「不審な人がいる。見に来てもらえるか」
  4. 「救急車で行くと優先的に診察してもらえると思った」
  5. 「交通手段がなかった」


5つとも救急車に乗るような緊急性を伴うものではなく、適切な通報内容ではない。

荷物を持って立っている人も

このほか、軽症とわかっていながら119番しているケースもある。

ある救急隊員によると、救急車で駆けつけた際、荷物を持って玄関先に立っていた人がいたという。

「コロナに感染して不安だから」「微熱が下がらない」といった理由で救急車を呼んだ人もいた。

実際、東京消防庁管内で21年に救急搬送された人は、51.4%が入院を必要としない軽症者だったという。

“119”は緊急の通報ダイヤルだ。

この救急隊員は「緊急ではない通報は肌感覚で4、5割ほど。救急隊員も現場で踏ん張っているが、救える命を確実に救うため、適切に119番を利用してほしい」と訴えた。

「17時間連続で出動」救急隊の疲労もピーク

119番通報の増加に伴い、救急隊員の疲労もピークに達している。

都内では昨年12月29日未明、昭島市の国道で東京消防庁秋川消防署の救急車が中央分離帯に衝突し、横転する事故があった。

同庁によると、詳しい原因は調査中だが、救急車に乗っていた救急隊員らが「眠気に襲われ、中央分離帯に衝突した」という。

救急隊員らは28日午前8時半に出勤後、翌29日午前1時50分頃までの約17時間、7件連続で出動しており、疲れがピークに達していたとみられる。

BuzzFeed Newsが取材した関東地方の救急隊員は「コロナ禍では朝から深夜までぶっ続けで稼働し、15時間以上休みがないなんてざらにある」と指摘。

「昼食も夕食も感染リスクのある救急車の中で済ませている。休憩も十分とれず、トイレにも行けない。隊員の気力に頼る“綱渡り”の状態が続いている」と話していた。

7分20秒は救急車が来ない

東京消防庁によると、救急車が出動して現場に到着するまでの時間は、2021年で平均7分20秒だった。

しかし、コロナの第8波で、119番通報や「救急搬送困難」が増えており、「今は救急車が土地勘のない遠方まで行くことも頻繁にあり、到着まで時間がかかっている」(関係者)という。

救急搬送困難とは、「救急車が現場到着後、医療機関に照会を4回以上行っても、搬送先が30分以上見つからない場合」をいう。

総務省消防庁によると、東京消防庁管内の救急搬送困難は今年1月9〜15日、3403件(2019年度同期比443%増)で、前週比5%だった。

もし、私たちの周りで誰かが倒れたとき、少なくとも7分20秒は救急車が来ない“空白の時間”が生まれる。

それまでの間、私たちは何をしなければならないのか。同庁はホームページの中で、「バイスタンダー」の重要性を訴えている。

バイスタンダーとは?

バイスタンダーとは、その場に居合わせた人ことを指す。

バイスタンダーが応急手当てを速やかに行えば、「救命」「悪化防止」「苦痛の軽減」に良い影響を与えるという。

具体的な応急手当ての方法は次の通りだ。

  1. 倒れた人を見つけたら大声で助けを求め、119番通報やAEDの搬送を依頼する
  2. 胸と腹部を見て呼吸がないことを確認した場合、胸骨圧迫を開始する
  3. 胸骨圧迫は胸の真ん中を強く、早く、絶え間なく押す
  4. AEDが到着したら、案内に従って操作する


都内では2021年、心停止した搬送者4824人のうち、46.3%の2234人がバイスタンダーによる応急手当てを受けていた

その場合、病院搬送までの心肺再開率は19.8%に上ったが、応急手当てが「なし」の場合は11.5%と、8.3ポイントも低かった。

1か月後の生存率も「あり」が12.7%で、「なし」(4.6%)の2.8倍に上った。

東京消防庁は取材に

東京消防庁はBuzzFeed Newsの取材に、「119番をして繋がらなくても順次受け付けているので、切らずに待ってほしい。消防署や消防出張所でも緊急通報を受け付けている」と回答した。

そして、救急車を呼ぶか迷った場合は、医師や看護師らが緊急性を判断する救急安心センター事業「♯7119」に電話したり、症状の見極めを手助けする「東京版救急受診ガイド」を活用したりすることを求めた。

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